今日は入試に出題される二項係数に関する様々な和について説明します。
二項係数そのものについての知識がない場合は,次の記事を読んで知識を補充して下さい。
二項係数の和を求める2通りの方法とは?
二項係数の和について説明します。結局は「係数の和」ですから,何らかの多項式を考えることになります。
二項係数の有名な3つの公式
前回説明した「二項係数の和」も有名な公式の1つであり,入試でよく出題される問題です。今回の記事では,二項係数の有名な3つの公式について説明します。いずれも重要な公式であり,より複雑な問題の基礎ともなります。したがって,いつでも扱えるようにし...
次の問題を解けるようになることが目標です。
問題次の式を $n$ の簡単な式で表せ。
(1) $\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}$
(2) $\Sum{k=2}{n}k(k-1)\nCk{n}{k}$
(3) $\Sum{k=1}{n}k^2\nCk{n}{k}$
(4) $\Sum{k=0}{n}k(k+1)\nCk{n}{k}$
(5) $\Sum{k=0}{n}(-1)^k\Cdot\dfrac{\nCk{n}{k}}{k+1}$
(1) $\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}$
(2) $\Sum{k=2}{n}k(k-1)\nCk{n}{k}$
(3) $\Sum{k=1}{n}k^2\nCk{n}{k}$
(4) $\Sum{k=0}{n}k(k+1)\nCk{n}{k}$
(5) $\Sum{k=0}{n}(-1)^k\Cdot\dfrac{\nCk{n}{k}}{k+1}$
ヒロ
以前,二項係数の和について学習したのは覚えてるよね。
はい。$\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}=2^n$ はもうカンペキです。
(1)の解説
プリントを次のリンクからダウンロードできます。
ヒロ
(1)は $\nCk{n}{k}$ に $k$ が掛けられていて,係数が変化するのが嫌だね。逆に言えば,定数になって変化しなければ和を求められるっていうこと。
ヒロ
ということで $k\,\nCk{n}{k}=n\,\nCk{n-1}{k-1}$ を利用して係数を定数にしよう。
\begin{align*}
\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}&=\Sum{k=1}{n}n\,\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n\Sum{k=1}{n}\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n(\nCk{n-1}{0}+\nCk{n-1}{1}+\cdots+\nCk{n-1}{n-1}) \\[4pt]
&=n\Cdota2^{n-1}~\cdots\cdots ①
\end{align*}
\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}&=\Sum{k=1}{n}n\,\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n\Sum{k=1}{n}\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n(\nCk{n-1}{0}+\nCk{n-1}{1}+\cdots+\nCk{n-1}{n-1}) \\[4pt]
&=n\Cdota2^{n-1}~\cdots\cdots ①
\end{align*}
ヒロ
もし,問題の式が,2011年の慶應義塾大で出題されたように $\Sum{k={\color{red}0}}{n}k\nCk{n}{k}$ となっている場合は少し注意が必要だよ。
注意せずに変形すると
\begin{align*}
\Sum{k=0}{n}k\,\nCk{n}{k}&=\Sum{k=0}{n}n\,\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n({\color{red}\nCk{n-1}{-1}}+\nCk{n-1}{0}+\nCk{n-1}{1}+\cdots+\nCk{n-1}{n-1})
\end{align*}
となって,右辺に $\nCk{n-1}{-1}$ という意味不明な項が現れる。\Sum{k=0}{n}k\,\nCk{n}{k}&=\Sum{k=0}{n}n\,\nCk{n-1}{k-1} \\[4pt]
&=n({\color{red}\nCk{n-1}{-1}}+\nCk{n-1}{0}+\nCk{n-1}{1}+\cdots+\nCk{n-1}{n-1})
\end{align*}
ヒロ
これは,元々の式で $k=0$ のときに0になっていることを考えないとダメだね。次のように変形すると良いよ。
\begin{align*}
\Sum{k=0}{n}k\,\nCk{n}{k}&={\color{red}0\Cdota\nCk{n}{0}}+1\Cdota\nCk{n}{1}+2\nCk{n}{2}+\cdots+n\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=1\Cdota\nCk{n}{1}+2\nCk{n}{2}+\cdots+n\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}
\end{align*}
\Sum{k=0}{n}k\,\nCk{n}{k}&={\color{red}0\Cdota\nCk{n}{0}}+1\Cdota\nCk{n}{1}+2\nCk{n}{2}+\cdots+n\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=1\Cdota\nCk{n}{1}+2\nCk{n}{2}+\cdots+n\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}k\,\nCk{n}{k}
\end{align*}
分かりました!
ヒロ
もう一つの考え方を説明しておくよ。
【よくある工夫】
都合上,$k=0$ のときも考えて加える。求める和を $S$ とすると
都合上,$k=0$ のときも考えて加える。求める和を $S$ とすると
\begin{align*}
S=0\Cdota\nCk{n}{0}+1\Cdota\nCk{n}{1}\cdots+k\nCk{n}{k}+\cdots+n\nCk{n}{n}~\cdots\cdots①
\end{align*}
となる。加える順番を逆にしたものを考えるとS=0\Cdota\nCk{n}{0}+1\Cdota\nCk{n}{1}\cdots+k\nCk{n}{k}+\cdots+n\nCk{n}{n}~\cdots\cdots①
\end{align*}
\begin{align*}
S=n\nCk{n}{n}+(n-1)\nCk{n}{n-1}+\cdots+(n-k)\nCk{n}{n-k}+\cdots+0\Cdota\nCk{n}{0}~\cdots\cdots②
\end{align*}
となる。①と②の辺々を加えて $\nCk{n}{k}=\nCk{n}{n-k}$ であることを利用するとS=n\nCk{n}{n}+(n-1)\nCk{n}{n-1}+\cdots+(n-k)\nCk{n}{n-k}+\cdots+0\Cdota\nCk{n}{0}~\cdots\cdots②
\end{align*}
\begin{align*}
2S&=(0+n)\nCk{n}{0}+(1+n-1)\nCk{n}{1}+\cdots+(k+n-k)\nCk{n}{k}+\cdots+(n+0)\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=n(\nCk{n}{0}+\nCk{n}{1}+\cdots+\nCk{n}{n}) \\[4pt]
&=n\Cdota2^n \\[4pt]
S&=n\Cdota2^{n-1}
\end{align*}
2S&=(0+n)\nCk{n}{0}+(1+n-1)\nCk{n}{1}+\cdots+(k+n-k)\nCk{n}{k}+\cdots+(n+0)\nCk{n}{n} \\[4pt]
&=n(\nCk{n}{0}+\nCk{n}{1}+\cdots+\nCk{n}{n}) \\[4pt]
&=n\Cdota2^n \\[4pt]
S&=n\Cdota2^{n-1}
\end{align*}