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漸化式パターン8:数列 $\{a_n\}$ の項に関する和を含む漸化式の解法 part1

漸化式パターン8 part1 数学IAIIB

漸化式の基本形からパターン7までは隣り合う二項間または三項間の漸化式でした。このパターン8の漸化式は複数の項の間に成り立つ関係式になります。その中で最も多いのは初項から第 $n$ 項までの和と第 $n$ 項などの間に成り立つ漸化式です。ただ,いつも第 $n$ 項までの和とは限りません。第 $n-1$ 項までの和を扱う場合もありますし,各項を2乗した和を扱うこともあり,一言でパターン8と言っても,非常に多くのタイプが存在します。

大学入試当日にこの漸化式パターン8が出題された場合に備えて解けるようにしておきましょう。

それでは,最初の問題はこちらです。

2018年 長崎大数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和を $S_n$ とする。
\begin{align*}
S_n=6n-2a_n~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
が成り立つとき,初項 $a_1$ および一般項 $a_n$ を求めよ。
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和を含む漸化式の基本的な考え方

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パターン8の漸化式を解くときの基本となる次の関係式をしっかり理解しよう。

$S_n$ と $a_n$ の関係式

$S_n=\Sum{k=1}{n}a_k$ とすると
$n=1$ のとき,$S_1=a_1$
$n\geqq2$ のとき,$a_n=S_n-S_{n-1}$

ヒロ
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簡単に説明しておくよ。まずは項を並べる方法で表すと次のようになる。

\begin{align*}
S_n&=a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}+a_n \\[4pt]S_{n-1}&=a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}
\end{align*}
ヒロ
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下の等式は,$n\geqq2$ のときに成り立つことに注意しよう。
$n=1$ のときは成り立たない。$S_0=a_1+a_2+\cdots+a_0$ となって訳が分からないからね。

ヒロ
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そして,この辺々を引くと,右辺は $a_1$ から $a_{n-1}$ までの和が消えて $a_n$ だけが残ることを利用しよう。計算すると,$S_n-S_{n-1}=a_n$ となる。

ヒロ
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$S_n$ から $a_n$ を求めるときには,この等式を利用すれば良いけど,漸化式を解く際には,$n$ を $n+1$ にした式を利用しよう。

\begin{align*}
S_{n+1}&=a_1+a_2+\cdots+a_{n}+a_{n+1} \\[4pt]S_{n}&=a_1+a_2+\cdots+a_{n}
\end{align*}
辺々を引くと,
\begin{align*}
S_{n+1}-S_n=a_{n+1}
\end{align*}
ヒロ
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よく「$n\geqq2$ のときに $a_n=S_n-S_{n-1}$ が成り立つことを利用しよう」と言われるが,「$n\geqq1$ のときに $a_{n+1}=S_{n+1}-S_n$ が成り立つ」ことを利用する場合もある。

問題の解説

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それでは問題の解説をしていこう。

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まずは $n=1$ を代入して初項を求めよう。

$S_n=6n-2a_n~\cdots\cdots ①$ に $n=1$ を代入すると
\begin{align*}
&S_1=6-2a_1 \\[4pt]
&a_1=6-2a_1 \\[4pt]
&a_1=2
\end{align*}
ヒロ
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次は一般項だね。$n$ をずらして差をとって求めよう。

①より
\begin{align*}
S_{n+1}=6(n+1)-2a_{n+1}~\cdots\cdots ②
\end{align*}
が成り立つから,$②-①$ より
\begin{align*}
&S_{n+1}-S_n=6-2(a_{n+1}-a_n) \\[4pt]
&a_{n+1}=6-2(a_{n+1}-a_n) \\[4pt]
&3a_{n+1}=2a_n+6 \\[4pt]
&a_{n+1}=\dfrac{2}{3}a_n+2
\end{align*}
ヒロ
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これでパターン2の隣接二項間漸化式になったね。

特性方程式は $3x=2x+6$ となるから,これを解いて $x=6$
$a_{n+1}=\dfrac{2}{3}a_n+2$ より
\begin{align*}
&a_{n+1}-6=\dfrac{2}{3}(a_n-6)
\end{align*}
数列 $\{a_n-6\}$ は公比 $\dfrac{2}{3}$ の等比数列であるから
\begin{align*}
&a_n-6=(a_1-6)\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1} \\[4pt]
&a_n=-4\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}+6
\end{align*}

$n$ の2次式を含む漸化式

ヒロ
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次の問題をやってみよう。

2009年 信州大数列 $\{a_n\}$ において $S_n=a_1+a_2+a_3+\cdots+a_n$ とおく。$S_n=2a_n-n(n+1)$$~(n=1,2,3,\cdots)$ のとき,一般項 $a_n$ を求めよ。
ヒロ
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これは後ろに $n$ の2次式があるけど,基本的な考え方にしたがって $n$ をずらして差をとろう。

$n\geqq1$ のとき
\begin{align*}
S_n=2a_n-n(n+1)~\cdots\cdots ①
\end{align*}
が成り立つから,
\begin{align*}
S_{n+1}=2a_{n+1}-(n+1)(n+2)~\cdots\cdots ②
\end{align*}
も成り立つ。$②-①$ より
\begin{align*}
&S_{n+1}-S_n=2(a_{n+1}-a_n)-(n+1)\{(n+2)-n\} \\[4pt]
&a_{n+1}=2a_{n+1}-2a_n-2(n+1) \\[4pt]
&a_{n+1}=2a_n+2(n+1)
\end{align*}
ヒロ
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これでパターン3の漸化式になったね。

元の漸化式には $n$ の2次式があったけど,$n$ をずらして差をとると1つ次数が下がるから1次式になるんですね。

ヒロ
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そうだね。では一般項を求めていこう。

$a_{n+1}=2a_n+2(n+1)$ が
\begin{align*}
a_{n+1}+\alpha(n+1)+\beta=2(a_n+\alpha n+\beta)
\end{align*}
と変形できたとすると,
\begin{align*}
a_{n+1}=2a_n+\alpha n-\alpha+\beta
\end{align*}
元の漸化式と比較して
\begin{align*}
&\alpha=2,~-\alpha+\beta=2 \\[4pt]
&\alpha=2,~\beta=4
\end{align*}
よって,
\begin{align*}
a_{n+1}+2(n+1)+4=2(a_n+2n+4)
\end{align*}
となり,数列 $\{a_n+2n+4\}$ は公比2の等比数列となる。
ここで,①において $n=1$ とすると
\begin{align*}
&S_1=2a_1-2 \\[4pt]
&a_1=2a_1-2 \\[4pt]
&a_1=2
\end{align*}
したがって
\begin{align*}
&a_n+2n+4=(a_1+2+4)\Cdota2^{n-1} \\[4pt]
&a_n+2n+4=8\Cdota2^{n-1} \\[4pt]
&a_n=2^{n+2}-2n-4
\end{align*}

$S_1=a_1$ も理解していないと初項を求められなくなりますね。

三項間漸化式に帰着できるタイプ

ヒロ
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段々慣れてきたかな。次も同じようにして解いてみよう。

2015年 徳島大数列 $\{a_n\}$ の初項 $a_1$ から第 $n$ 項 $a_n$ までの和 $S_n$ が次を満たす。
\begin{align*}
S_n=\dfrac{1}{3}(2a_n+8a_{n-1})~(n=2,3,4,\cdots)
\end{align*}
(1) $n\geqq3$ のとき,$a_n$ を $a_{n-1}$ と $a_{n-2}$ の式で表せ。
(2) $n\geqq3$ のとき,$a_n-2a_{n-1}$ を $a_1$ と $a_2$ の式で表せ。
(3) $a_1=1$ とする。一般項 $a_n$ を求めよ。
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基本的な考えは最初の問題と同じなので,$n$ を1つずらして差をとろう。ただし,それぞれの漸化式を満たす $n$ の値の範囲に注意しよう。

【(1)の解答】
$S_n=\dfrac{1}{3}(2a_n+8a_{n-1})~\cdots\cdots ①$ より,$n\geqq3$ のとき
\begin{align*}
S_{n-1}=\dfrac{1}{3}(2a_{n-1}+8a_{n-2})~\cdots\cdots ②
\end{align*}
が成り立つ,$①-②$ より,$n\geqq3$ のとき
\begin{align*}
&S_n-S_{n-1}=\dfrac{2}{3}(a_n-a_{n-1})+\dfrac{8}{3}(a_{n-1}-a_{n-2}) \\[4pt]&a_n=\dfrac{2}{3}a_n+2a_{n-1}-\dfrac{8}{3}a_{n-2} \\[4pt]&a_n=6a_{n-1}-8a_{n-2}
\end{align*}
ヒロ
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さっきより少し複雑かもしれないけど,基本的な考え方は同じということは分かると思う。

ヒロ
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これでパターン6になったね。次は(2)だけど,誘導から特性方程式の解の1つが2ということも分かるね。一応確認しておこう。

特性方程式は $x^2=6x-8$ であるから
\begin{align*}
&x^2-6x+8=0 \\[4pt]&(x-2)(x-4)=0 \\[4pt]&x=2,~4
\end{align*}
ヒロ
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この結果から,数列 $\{a_n-2a_{n-1}\}$ は公比4の等比数列になることも分かるね。(2)を解いていこう。

【(2)の解答】
\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}&=(6a_{n-1}-8a_{n-2})-2a_{n-1} \\[4pt]&=4a_{n-1}-8a_{n-2} \\[4pt]&=4(a_{n-1}-2a_{n-2})~\cdots\cdots(\ast)
\end{align*}
数列 $\{a_n-2a_{n-1}\}$ は公比4の等比数列であるから
\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}=(a_2-2a_1)\Cdota4^{n-2}~\cdots\cdots ③
\end{align*}
ヒロ
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ここで最後の部分について補足しておこう。

$a_n-2a_{n-1}=4(a_{n-1}-2a_{n-2}) \cdots\cdots(\ast)$ を繰り返す使うことを考えよう。
\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}&=4(a_{n-1}-2a_{n-2}) \\[4pt]&=4^2(a_{n-2}-2a_{n-3}) \\[4pt]&=4^3(a_{n-3}-2a_{n-4}) \\[4pt]\end{align*}
こんな風になっていく。ここで (*) は $n\geqq3$ で成り立ち,$n=3$ とすると
\begin{align*}
a_3-2a_2=4(a_2-2a_1)
\end{align*}
となるから,最後は
\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}=4^{\Box}(a_2-2a_1)
\end{align*}
の形になることが分かる。
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ここで,4の指数と数列 $\{a_n\}$ の項の添字に着目しよう。

\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}&=4^{\color{red}1}(a_{\color{blue}n-1}-2a_{n-2}) \\[4pt]&=4^{\color{red}2}(a_{\color{blue}n-2}-2a_{n-3}) \\[4pt]&=4^{\color{red}3}(a_{\color{blue}n-3}-2a_{n-4}) \\[4pt]\end{align*}
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指数添字の和は常に $n$ になっているのが分かる。ここから $a_n-2a_{n-1}=4^{\color{red}n-2}(a_{\color{blue}2}-2a_1)$ となることも分かるだろう。

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単なる公式の暗記で,$n-1$ 乗としてしまうと,失点につながるので,しっかり考えるようにしよう。

ヒロ
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最後の(3)へ進もう。まずは与えられた初項から $a_2$ を求めよう。(2)が終わった時点でパターン3になったけど,特性方程式が異なる2解をもつから,2解を入れ替えた式を利用しよう。

【(3)の解答】
$a_1=1$ とするとき
\begin{align*}
&S_2=\dfrac{1}{3}(2a_2+8a_1) \\[4pt]&1+a_2=\dfrac{1}{3}(2a_2+8) \\[4pt]&3+3a_2=2a_2+8 \\[4pt]&a_2=5
\end{align*}
③より
\begin{align*}
a_n-2a_{n-1}=3\Cdota4^{n-2}~\cdots\cdots ③’
\end{align*}

(2)と同様にして,$n\geqq3$ のとき
\begin{align*}
a_n-4a_{n-1}&=(6a_{n-1}-8a_{n-2})-4a_{n-1} \\[4pt]&=2(a_{n-1}-4a_{n-2})
\end{align*}
が成り立つ。数列 $\{a_n-4a_{n-1}\}$ は公比2の等比数列であるから
\begin{align*}
a_n-4a_{n-1}&=(a_2-4a_1)\Cdota2^{n-2} \\[4pt]&=2^{n-2}~\cdots\cdots ④
\end{align*}
$③’\times2-④$ より
\begin{align*}
a_n=6\Cdota4^{n-2}-2^{n-2}
\end{align*}

数列 $\{a_n\}$ の項に関する和を含む漸化式の解法

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それでは解法をまとめておこう。パターン8の漸化式は次の手順で解こう。

漸化式パターン8の解法
  1. $\Sum{k=1}{n}a_k=S_n$ のとき,$S_{n+1}-S_n=a_{n+1}$ が成り立つことを利用して,$\{S_n\}$ か $\{a_n\}$ のどちらかの漸化式に変形する。
  2. 他のパターンの漸化式になるから,対応する解法を思い出して一般項 $a_n$ を求める。

まとめ

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数列 $\{a_n\}$ の項に関する和を含む漸化式パターン8には,様々なタイプが存在する。しかし,見た目に惑わされず基本の考え方にしたがって,落ち着いて変形することで,他のパターンに帰着できる。

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ここで,より簡単なパターンの漸化式に帰着したはずなのに,それが解けないなんてことにならないように,他のパターンについても勉強しておこう。

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