(4)の解説
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(4) $\Sum{k=0}{n}k(k+1)\nCk{n}{k}$
(4)に進もう!これは(1)の続きとして,2011年の慶應義塾大で出題された問題だよ。
主に(1)と(2)を利用するか,(1)と(3)を利用するかの二択だね。ただ,(2)や(3)を利用するにしても,(4)の前にその問題がなかったら,結局しんどいので,楽にする方法を覚えておこう。
2011年の慶應大の入試では(2)も(3)も利用できないですからね。
次の等式を見て,$\nCk{n}{k}$ の係数に $k$ をもってくる方法を考えよう。
(1+x)^n=\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}x^k~\cdots\cdots(\ast)
\end{align*}
微分ですか?
おぉ!いいね!
n(1+x)^{n-1}=\Sum{k={\color{red}1}}{n}k\nCk{n}{k}x^{k-1}~\cdots\cdots(\ast\ast)
\end{align*}
ここで,シグマの最初の $k$ が1から始まっていることに注意しよう。分かりやすくするために $(\ast)$ の右辺を書き並べてみよう。
((\ast)の右辺)={\color{red}\nCk{n}{0}}+\nCk{n}{1}x+\nCk{n}{2}x^2+\cdots+\nCk{n}{n}x^n
\end{align*}
第1項が定数だから微分すると0になるね。
なるほど。細かいところにも注意が必要ですね。
\Sum{k=1}{n}k\nCk{n}{k}=n\Cdota2^{n-1}
\end{align*}
(1)の式になるんですね。
そうだね。では $(\ast\ast)$ をさらに微分しよう。
n(n-1)(1+x)^{n-2}=\Sum{k={\color{red}2}}{n}k(k-1)\nCk{n}{k}x^{k-2}
\end{align*}
\Sum{k=2}{n}k(k-1)\nCk{n}{k}=n(n-1)\Cdota2^{n-2}
\end{align*}
これで(2)も楽に解けたね。この方法なら(4)が突然出題されても,(1)と(2)を求めてからそれを利用することで楽に(4)も解けるね。
&2\Sum{k=1}{n}k\nCk{n}{k}+\Sum{k=1}{n}k(k-1)\nCk{n}{k} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\{2k+k(k-1)\}\nCk{n}{k} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}k(k+1)\nCk{n}{k}
\end{align*}
\Sum{k=0}{n}k(k+1)\nCk{n}{k}&=2n\Cdota2^{n-1}+n(n-1)\Cdota2^{n-2} \\[4pt]
&=n(n+3)\Cdota2^{n-2}
\end{align*}
微分を使うとかなり楽になりますね!
(5)の解説
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(5) $\Sum{k=0}{n}(-1)^k\Cdot\dfrac{\nCk{n}{k}}{k+1}$
これは2007年に実施された数学検定1級で出題された問題だから,大学入試では出ないかなぁと思いつつ授業で扱ってきた問題なんだけど・・・
2010年の早稲田大学(人間科学)で出題されたんだよ。しかもノーヒントで。
じゃあ,やっとかないとダメですね。
ということで,どうすれば $\nCk{n}{k}$ の係数に $\dfrac{1}{k+1}$ をもってこれるだろうか?
さっきは微分して $k$ を下ろしてもってきたので,積分すればできそうですよね?
その発想ができるのはいいね!
&\dint{}{}(1+x)^n\;dx=\dint{}{}\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}x^k\;dx \\[4pt]
&\dfrac{1}{n+1}(1+x)^{n+1}=\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}\Cdota\dfrac{x^{k+1}}{k+1}+C
\end{align*}
さらっと積分したけど,ちょっとだけ補足しておくよ。多項式を積分するときは,当然だけど各項を積分して足し合わせるだけなので,シグマの中にある $x^k$ を積分すれば良いってことだね。
\dint{}{}\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}x^k\;dx&=\dint{}{}(\nCk{n}{0}+\nCk{n}{1}x+\nCk{n}{2}x^2+\cdots+\nCk{n}{n}x^n)\;dx \\[4pt]
&=\nCk{n}{0}x+\nCk{n}{1}\Cdota\dfrac{x^2}{2}+\nCk{n}{2}\Cdota\dfrac{x^3}{3}+\cdots+\nCk{n}{n}\Cdota\dfrac{x^{n+1}}{n+1}+C \\[4pt]
&=\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}\Cdota\dfrac{x^{k+1}}{k+1}+C
\end{align*}
なるほど。納得です。
積分すると積分定数の $C$ が出てくるので,定積分にしたいよね。積分定数をどうすれば出てきて欲しい式になるかを考えよう。
とりあえず,片方は $-1$ にするのは絶対ですね。もう一方は消えてくれる0が良いんじゃないですか?
カンペキだね!
&\dint{-1}{0}(1+x)^n\;dx=\dint{-1}{0}\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}x^k\;dx \\[4pt]
&\Tint{\dfrac{1}{n+1}(1+x)^{n+1}}{-1}{0}=\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}\Cdota\Tint{\dfrac{x^{k+1}}{k+1}}{-1}{0} \\[4pt]
&\dfrac{1}{n+1}=-\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}\Cdota\dfrac{(-1)^{k+1}}{k+1} \\[4pt]
&\Sum{k=0}{n}\nCk{n}{k}\Cdota\dfrac{(-1)^k}{k+1}=\dfrac{1}{n+1}
\end{align*}
まとめ
二項係数の和を求める基本的な公式を知っておくのは当然として,微分・積分など,その扱い方についても,しっかり理解して使いこなせるようにしよう。