極限値を微分係数で表す有名問題とその考え方や解法について説明します。
この記事を読むことで,今まで解けなかった人が解けるようになることを願います。
この記事で扱う問題は次の通りです。
(1) $\dlim{x\to0}\dfrac{f(a+3x)-f(a+x)}{x}$
(2) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^2f(a)-a^2f(x)}{x-a}$
(3) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^nf(a)-a^nf(x)}{x-a}$
微分可能な関数とは
まず,条件で与えられている「$f(x)$ が微分可能な関数である」を理解しよう。
\dlim{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}
\end{align*}
\dlim{x\to a}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}
\end{align*}
(1)の考え方と解答
(1) $\dlim{x\to0}\dfrac{f(a+3x)-f(a+x)}{x}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
(1)の式の表し方は苦手な人が多いかもしれない。
今回の問題では,$f'(a)$ が存在するから
f'(a)=\dlim{h\to0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}~\cdots\cdots①
\end{align*}
f'(a)=\dlim{x\to a}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}~\cdots\cdots②
\end{align*}
今回は①の $h$ を $x$ にした式,つまり
f'(a)=\dlim{x\to0}\dfrac{f(a+x)-f(a)}{x}
\end{align*}
f'(a)=\dlim{x\to\bigcirc}\dfrac{f(a+\bigcirc)-f(a)}{\bigcirc}
\end{align*}
あとはこの形を作るように変形していこう。
(与式)&=\dlim{x\to0}\dfrac{f(a+3x)-f(a+x)}{x} \\[4pt]
&=\dlim{x\to0}\left\{\dfrac{f(a+3x)-f(a)}{3x}\Cdota3-\dfrac{f(a+x)-f(a)}{x}\right\}
\end{align*}
解答の続きは次のようになる。
(与式)=3f'(a)-f'(a)=2f'(a)
\end{align*}
(2)の考え方と解答
(2) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^2f(a)-a^2f(x)}{x-a}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
(1)と同じようにして変形しよう。
(2)では
f'(a)=\dlim{x\to a}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}
\end{align*}
ということで,無理やり $x^2$ を $x^2-a^2$ に書き換える。
(与式)&=\dlim{x\to a}\left\{\dfrac{(x^2-a^2)f(a)}{x-a}+\dfrac{a^2f(a)-a^2f(x)}{x-a}\right\}
\end{align*}
(与式)&=\dlim{x\to a}\left\{(x+a)f(a)-a^2\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\right\} \\[4pt]
&=2af(a)-a^2f'(a)
\end{align*}
(3)の考え方と解答
(3) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^nf(a)-a^nf(x)}{x-a}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
(2)の変形ができるようになれば,(3)でも同じようにできるようになるはず。
(与式)&=\dlim{x\to a}\dfrac{x^nf(a)-a^nf(x)}{x-a} \\[4pt]
&=\dlim{x\to a}\left\{\dfrac{x^n-a^n}{x-a}f(a)-a^n\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\right\} \\[4pt]
&=\dlim{x\to a}\left\{(x^{n-1}+ax^{n-2}+a^2x^{n-3}+\cdots+a^{n-1})f(a)-a^n\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}\right\} \\[4pt]
&=na^{n-1}f(a)-a^nf'(a)
\end{align*}
この解答では,$(x^n-a^n)\div(x-a)$ を暗算でできるかどうかがポイントとなるね。
割り算を暗算でできない人は,次の記事を読んで暗算でできるようにするのをオススメする。
(1)の別解
(1) $\dlim{x\to0}\dfrac{f(a+3x)-f(a+x)}{x}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
「変形できるようにしなさい」と厳しく言うのも良いが,変形できるまでに時間がかかる人もいるだろう。
それにみんながみんな同じ解き方ではつまらない。
ということで,別解を紹介しておく。
$F(x)=f(a+3x)-f(a+x)$ とおくと,$F(0)=0$ だから
(与式)=\dlim{x\to0}\dfrac{F(x)-F(0)}{x-0}=F'(0)
\end{align*}
(与式)=3f'(a)-f'(a)=2f'(a)
\end{align*}
この方法なら誰でもすぐ身に付けられるだろう。
(2)の別解
(2) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^2f(a)-a^2f(x)}{x-a}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
(1)と同じように分子を $F(x)$ とおいてサクッと解こう。
$F(x)=x^2f(a)-a^2f(x)$ とおくと,$F(a)=0$ だから
(与式)=\dlim{x\to a}\dfrac{F(x)-F(a)}{x-a}=F'(a)
\end{align*}
(与式)=2af(a)-a^2f'(a)
\end{align*}
(3)の別解
(3) $\dlim{x\to a}\dfrac{x^nf(a)-a^nf(x)}{x-a}$ を $a$, $f(a)$, $f'(a)$ を用いて表せ。
最後の(3)も同じように解くと,次のようになる。
$F(x)=x^nf(a)-a^nf(x)$ とおくと,$F(a)=0$ だから
(与式)=\dlim{x\to a}\dfrac{F(x)-F(a)}{x-a}=F'(a)
\end{align*}
(与式)=na^{n-1}f(a)-a^nf'(a)
\end{align*}