ここでは不等式の証明問題について説明します。
等式の証明と異なり,ほとんどの場合,不等式の証明はそれより難しいことが多いです。
不等式が成り立つことを証明する方法には,いくつかの考え方がありますが,ここでは,両辺の差をとる考え方について説明します。
Contents
- ページ1
- 1 不等式の証明問題
- ページ2
- 1 不等式の証明問題2
不等式の証明問題
2013年 秋田大$a,~b,~c,~x,~y,~z$ はすべて正の実数である。次の問いに答えよ。
(1) 不等式 $(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2$ が成り立つことを証明せよ。
(2) (1)において等号が成り立つのはどのようなときかを示せ。
(3) $a^2+b^2+c^2=25$, $x^2+y^2+z^2=36$, $ax+by+cz=30$ のとき,$\dfrac{a+b+c}{x+y+z}$ の値を求めよ。
(1) 不等式 $(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2$ が成り立つことを証明せよ。
(2) (1)において等号が成り立つのはどのようなときかを示せ。
(3) $a^2+b^2+c^2=25$, $x^2+y^2+z^2=36$, $ax+by+cz=30$ のとき,$\dfrac{a+b+c}{x+y+z}$ の値を求めよ。
【(1)の考え方と解答】
左辺から右辺を引いたものが0以上になることを示そう。
左辺から右辺を引いたものが0以上になることを示そう。
\begin{align*}
&(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)-(ax+by+cz)^2 \\[4pt]
&=a^2(y^2+z^2)+b^2(x^2+z^2)+c^2(x^2+y^2)-(2abxy+2bcyz+2cazx) \\[4pt]
&=(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(cx-az)^2
\end{align*}
$a,~b,~c,~x,~y,~z$ はすべて正の実数であるから,&(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)-(ax+by+cz)^2 \\[4pt]
&=a^2(y^2+z^2)+b^2(x^2+z^2)+c^2(x^2+y^2)-(2abxy+2bcyz+2cazx) \\[4pt]
&=(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(cx-az)^2
\end{align*}
\begin{align*}
(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(cx-az)^2\geqq0
\end{align*}
である。したがって(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(cx-az)^2\geqq0
\end{align*}
\begin{align*}
(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2
\end{align*}
が成り立つ。(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2
\end{align*}
(2) (1)において等号が成り立つのはどのようなときかを示せ。
【(2)の考え方と解答】
(1)の等号が成り立つのは
(1)の等号が成り立つのは
\begin{align*}
ay-bx=0~かつ~bz-cy=0~かつ~cx-az=0
\end{align*}
が成り立つときである。このときay-bx=0~かつ~bz-cy=0~かつ~cx-az=0
\end{align*}
\begin{align*}
&\dfrac{a}{b}=\dfrac{x}{y}~かつ~\dfrac{b}{c}=\dfrac{y}{z}~かつ~\dfrac{c}{a}=\dfrac{z}{x} \\[4pt]
&a:b=x:y~かつ~b:c=y:z~かつ~c:a=z:x
\end{align*}
すなわち $a:b:c=x:y:z$ が成り立つときである。&\dfrac{a}{b}=\dfrac{x}{y}~かつ~\dfrac{b}{c}=\dfrac{y}{z}~かつ~\dfrac{c}{a}=\dfrac{z}{x} \\[4pt]
&a:b=x:y~かつ~b:c=y:z~かつ~c:a=z:x
\end{align*}
(3) $a^2+b^2+c^2=25$, $x^2+y^2+z^2=36$, $ax+by+cz=30$ のとき,$\dfrac{a+b+c}{x+y+z}$ の値を求めよ。
【(3)の考え方と解答】
与えられている式が(1)に現れる式だから,(1),(2)の結果を利用することを考えよう。
したがって
与えられている式が(1)に現れる式だから,(1),(2)の結果を利用することを考えよう。
\begin{align*}
&(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)=25\Cdota36=900 \\[4pt]
&(ax+by+cz)^2=30^2=900
\end{align*}
であるから,与えられている式が成り立つときは(1)の等号が成り立つときである。したがって,(2)の結果から,$a:b:c=x:y:z$ が成り立つから,正の実数 $k$ を用いて&(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)=25\Cdota36=900 \\[4pt]
&(ax+by+cz)^2=30^2=900
\end{align*}
\begin{align*}
a=kx,~b=ky,~c=kz
\end{align*}
と表せる。与えられている式に代入するとa=kx,~b=ky,~c=kz
\end{align*}
\begin{align*}
&k^2(x^2+y^2+z^2)=25 \\[4pt]
&x^2+y^2+z^2=36 \\[4pt]
&k(x^2+y^2+z^2)=30
\end{align*}
$k$ は正であるから,$k=\dfrac{5}{6}$&k^2(x^2+y^2+z^2)=25 \\[4pt]
&x^2+y^2+z^2=36 \\[4pt]
&k(x^2+y^2+z^2)=30
\end{align*}
したがって
\begin{align*}
\dfrac{a+b+c}{x+y+z}=\dfrac{k(x+y+z)}{x+y+z}=k=\dfrac{5}{6}
\end{align*}
\dfrac{a+b+c}{x+y+z}=\dfrac{k(x+y+z)}{x+y+z}=k=\dfrac{5}{6}
\end{align*}