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チェビシェフ多項式の定義・性質に関する入試問題【信州大・埼玉大】

チェビシェフ多項式 大学入試問題 数学IAIIB
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チェビシェフ多項式に関する入試問題 【2008年 埼玉大】

ヒロ
ヒロ

2008年の埼玉大では,チェビシェフ多項式の性質に関する問題が出題されている。

2008年 埼玉大多項式 $f_1(x),~f_2(x),~\cdots$ および $g_1(x),~g_2(x),~\cdots$ を次の手順(a),(b)により定める。
(a) $f_1(x)=x,~~g_1(x)=1$
(b) $f_n(x),~g_n(x)$
が定まったとき,
\begin{align*}
\begin{cases}
f_{n+1}(x)=xf_n(x)+(x^2-1)g_n(x) \\[4pt]
g_{n+1}(x)=f_n(x)+xg_n(x)
\end{cases}
\end{align*}
によって $f_{n+1}(x),~g_{n+1}(x)$ を定める。
このとき,以下の問いに答えよ。
(1) $f_2(x),~g_2(x)$ および $f_3(x),~g_3(x)$ を求めよ。
(2) 自然数 $n$ に対して,等式
\begin{align*}
\left\{f_n(x)\right\}^2-(x^2-1)\left\{g_n(x)\right\}^2=1
\end{align*}
が成立することを証明せよ。
(2) 自然数$n$に対して,次の等式を証明せよ。
\begin{align*}
\begin{cases}
f_n(\cos\theta)=\cos n\theta \\[4pt]
g_n(\cos\theta)\sin\theta=\sin n\theta
\end{cases}
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

(3)を見た時点でチェビシェフ多項式の問題だなと分かるね。

ヒロ
ヒロ

(1)から解いていこう。

ヒロ
ヒロ

関数の漸化式になっているので,$n$ に自然数を代入して求めよう。

【(1)の解答】
\begin{align*}
f_2(x)&=x\Cdota x+(x^2-1)\Cdota1 \\[4pt]
&=2x^2-1 \\[4pt]
g_2(x)&=x+x\Cdota1=2x \\[4pt]
f_3(x)&=x(2x^2-1)+(x^2-1)\Cdota2x \\[4pt]
&=4x^3-3x \\[4pt]
g_3(x)&=2x^2-1+x\Cdota2x \\[4pt]
&=4x^2-1
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

(2)は漸化式から等式を導く問題だと捉えよう。

ヒロ
ヒロ

漸化式が関係する場合は,単なる等式の証明だと思って,左辺から右辺になることを証明しようとしても,大抵はうまくいかない。

漸化式が絡む等式の証明数列 $\{a_n\}$ に関する漸化式が与えられていて,$a_n=0$ が成り立つことを示す問題では,数列 $\{a_n\}$ が定数列で,$a_1=0$ であることを示せば良い。つまり,
\begin{align*}
a_{n+1}=a_n~~かつ~~a_1=0
\end{align*}
の2つを証明する方法を考えると良い。

なるほど。問題集の解答では,こういう考え方が書かれていないことが多いから,解答を読んだときに「何故いきなり $n$ を $n+1$ にして考えてるんだろう」ってなるんですね。

ヒロ
ヒロ

そうだね。考え方を知らないと,解答の意味は分かっても,再現性がないから,どれだけ勉強しても解ける問題が増えないということになるね。

じゃあ,(2)を解いてみます。

【(2)の解答】
\begin{align*}
&\left\{f_{n+1}(x)\right\}^2-(x^2-1)\left\{g_{n+1}(x)\right\}^2 \\[4pt]
&=\left\{xf_n(x)+(x^2-1)g_n(x)\right\}^2
-(x^2-1)\left\{f_n(x)+xg_n(x)\right\}^2 \\[4pt]
&=x^2\{f_n(x)\}^2+2x(x^2-1)f_n(x)g_n(x)+(x^2-1)^2\{g_n(x)\}^2 \\[4pt]
&\quad\quad-(x^2-1)\left(\{f_n(x)\}^2+2xf_n(x)g_n(x)+x^2\{g_n(x)\}^2\right) \\[4pt]
&=\{f_n(x)\}^2-(x^2-1)\{g_n(x)\}^2
\end{align*}
よって,
\begin{align*}
\left\{f_n(x)\right\}^2-(x^2-1)\left\{g_n(x)\right\}^2
\end{align*}
は $n$ の値によらない定数である。ここで
\begin{align*}
&\left\{f_1(x)\right\}^2-(x^2-1)\left\{g_1(x)\right\}^2 \\[4pt]
&=x^2-(x^2-1) \\[4pt]
&=1
\end{align*}
であるから,すべての自然数 $n$ に対して,
\begin{align*}
\left\{f_n(x)\right\}^2-(x^2-1)\left\{g_n(x)\right\}^2=1
\end{align*}
が成立する。

できました。始めに何をすれば良いかが分かっているから簡単でした。

ヒロ
ヒロ

じゃあ最後の(3)を解いていこう。

ヒロ
ヒロ

(3)のように,2つの式が同時に成り立つことを証明する場合や,定数列になることを示す考え方では証明するのが難しい場合は,数学的帰納法で証明しよう。

【(3)の解答】
すべての自然数 $n$ に対して
\begin{align*}
\begin{cases}
f_n(\cos\theta)=\cos n\theta \\[4pt]
g_n(\cos\theta)\sin\theta=\sin n\theta
\end{cases}~\cdots\cdots(\ast)
\end{align*}
が成り立つことを,数学的帰納法で証明する。
(i) $n=1$ のとき
\begin{align*}
f_1(\cos\theta)=\cos\theta,~g_1(\cos\theta)\sin\theta=\sin\theta
\end{align*}
となり,$(\ast)$は成り立つ。
(ii) $n=k$ のときに $(\ast)$ が成り立つと仮定すると
\begin{align*}
f_{k+1}(\cos\theta)
&=\cos\theta f_k(\cos\theta)+(\cos^2\theta-1)g_k(\cos\theta) \\[4pt]
&=\cos\theta\cos k\theta-\sin^2\theta g_k(\cos\theta) \\[4pt]
&=\cos\theta\cos k\theta-\sin\theta\sin k\theta \\[4pt]
&=\cos(k+1)\theta
\end{align*}
\begin{align*}
g_{k+1}(\cos\theta)\sin\theta
&=\left\{f_k(\cos\theta)+\cos\theta g_k(\cos\theta)\right\}\sin\theta \\[4pt]
&=\cos k\theta\sin\theta+\cos\theta g_k(\cos\theta)\sin\theta \\[4pt]
&=\cos k\theta\sin\theta+\cos\theta\sin k\theta \\[4pt]
&=\sin(k+1)\theta
\end{align*}
よって,$n=k+1$ のとき $(\ast)$ が成り立つ。
(i),(ii)より,任意の自然数 $n$ に対して $(\ast)$ が成り立つ。
ヒロ
ヒロ

ここで,与えられた漸化式をもう少し考えてみよう。

【チェビシェフ多項式の性質】
$f_n(\cos\theta)=\cos n\theta$ の両辺を $\theta$ で微分すると
\begin{align*}
&{f_n}'(\cos\theta)\Cdota(-\sin\theta)=-n\sin n\theta
\end{align*}
$\sin\theta\neq0$ のとき
\begin{align*}
&{f_n}'(\cos\theta)=n\Cdota\dfrac{\sin n\theta}{\sin\theta} \\[4pt]
&{T_n}'(\cos\theta)=nU_n(\cos\theta)
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

$T_n(x)$ と $U_n(x)$ に関する漸化式を導いておこう。

\begin{align*}
\begin{cases}
f_{n+1}(x)=xf_n(x)+(x^2-1)g_n(x) \\[4pt]
g_{n+1}(x)=f_n(x)+xg_n(x)
\end{cases}
\end{align*}
を用いて,$f_n(x)$ の漸化式を作ると次のようになる。
\begin{align*}
f_{n+2}(x)&=xf_{n+1}(x)+(x^2-1)g_{n+1}(x) \\[4pt]
&=xf_{n+1}(x)+(x^2-1)(f_n(x)+xg_n(x)) \\[4pt]
&=xf_{n+1}(x)+(x^2-1)f_n(x)+x(x^2-1)g_n(x) \\[4pt]
&=xf_{n+1}(x)+(x^2-1)f_n(x)+x(f_{n+1}(x)-xf_n(x)) \\[4pt]
&=2xf_{n+1}(x)-f_n(x)
\end{align*}
同様にして,$g_n(x)$ の漸化式を作ると次のようになる。
\begin{align*}
g_{n+2}(x)&=f_{n+1}(x)+xg_{n+1}(x) \\[4pt]
&=xf_n(x)+(x^2-1)g_n(x)+xg_{n+1}(x) \\[4pt]
&=x(f_n(x)+xg_n(x))-g_n(x)+xg_{n+1}(x) \\[4pt]
&=xg_{n+1}(x)-g_n(x)+xg_{n+1}(x) \\[4pt]
&=2xg_{n+1}(x)-g_n(x) \\[4pt]
\end{align*}

チェビシェフ多項式のまとめ

ヒロ
ヒロ

チェビシェフ多項式の問題だと分かっても解けないと意味がないので,ちゃんと解けるような数学力を身に付けよう。

ヒロ
ヒロ

よく知られているチェビシェフ多項式の定義とよく知られている性質をまとめると,次のようになる。

チェビシェフ多項式の定義と性質
  1. $T_n(\cos\theta)=\cos n\theta$
  2. $U_n(\cos\theta)=\dfrac{\sin n\theta}{\sin\theta}$
  3. ${T_n}'(\cos\theta)=nU_n(\cos\theta)$
  4. $T_{n+2}(x)=2xT_{n+1}(x)-T_n(x)$
  5. $U_{n+2}(x)=2xU_{n+1}(x)-U_n(x)$

  6. $\displaystyle
    \{T_n(x)\}^2-(x^2-1)\{U_n(x)\}^2=1
    $
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