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チェビシェフ多項式に関する入試問題【2019年 信州大】
ヒロ
2019年の信州大でチェビシェフ多項式に関する入試問題が出題されている。
2019年 信州大$n$ を自然数,$\theta$ を実数とするとき,次の問いに答えよ。
(1) 次の等式を示せ。
(3) $\cos^2\dfrac{\pi}{10}$ の値を求めよ。
(1) 次の等式を示せ。
\begin{align*}
\cos(n+2)\theta-2\cos\theta\cos(n+1)\theta+\cos n\theta=0
\end{align*}
(2) $\cos\theta=x$ とおくとき,$\cos5\theta$ を $x$ の式で表せ。\cos(n+2)\theta-2\cos\theta\cos(n+1)\theta+\cos n\theta=0
\end{align*}
(3) $\cos^2\dfrac{\pi}{10}$ の値を求めよ。
(1)は積和公式か和積公式を使えば,証明できそうですね。
【(1)の解答】
\begin{align*}
\cos(n+2)\theta+\cos n\theta&=2\cos\dfrac{(n+2)\theta+n\theta}{2}\cos\dfrac{(n+2)\theta-n\theta}{2} \\[4pt]
&=2\cos(n+1)\theta\cos\theta
\end{align*}
であるから\cos(n+2)\theta+\cos n\theta&=2\cos\dfrac{(n+2)\theta+n\theta}{2}\cos\dfrac{(n+2)\theta-n\theta}{2} \\[4pt]
&=2\cos(n+1)\theta\cos\theta
\end{align*}
\begin{align*}
\cos(n+2)\theta-2\cos\theta\cos(n+1)\theta+\cos n\theta=0
\end{align*}
が成り立つ。\cos(n+2)\theta-2\cos\theta\cos(n+1)\theta+\cos n\theta=0
\end{align*}
ヒロ
実は,(1)はチェビシェフ多項式がもつ性質の1つを示したことになる。
ヒロ
次の(2)はチェビシェフ多項式の $T_5(x)$ を求める問題だね。
(2)は $5\theta=3\theta+2\theta$ として,加法定理を使って変形していけばできそうです。
【(2)の解答】
\begin{align*}
\cos5\theta&=\cos(3\theta+2\theta) \\[4pt]
&=\cos3\theta\cos2\theta-\sin3\theta\sin2\theta
\end{align*}
ここで\cos5\theta&=\cos(3\theta+2\theta) \\[4pt]
&=\cos3\theta\cos2\theta-\sin3\theta\sin2\theta
\end{align*}
\begin{align*}
\cos3\theta\cos2\theta&=(4\cos^3\theta-3\cos\theta)(2\cos^2\theta-1) \\[4pt]
&=(4x^3-3x)(2x^2-1) \\[4pt]
&=8x^5-10x^3+3x \\[4pt]
\sin3\theta\sin2\theta&=(3\sin\theta-4\sin^3\theta)\Cdota2\sin\theta\cos\theta \\[4pt]
&=2\sin^2\theta\cos\theta(3-4\sin^2\theta) \\[4pt]
&=2(1-\cos^2\theta)\cos\theta\{3-4(1-\cos^2\theta)\} \\[4pt]
&=2(1-x^2)x(4x^2-1) \\[4pt]
&=-8x^5+10x^3-2x
\end{align*}
であるから\cos3\theta\cos2\theta&=(4\cos^3\theta-3\cos\theta)(2\cos^2\theta-1) \\[4pt]
&=(4x^3-3x)(2x^2-1) \\[4pt]
&=8x^5-10x^3+3x \\[4pt]
\sin3\theta\sin2\theta&=(3\sin\theta-4\sin^3\theta)\Cdota2\sin\theta\cos\theta \\[4pt]
&=2\sin^2\theta\cos\theta(3-4\sin^2\theta) \\[4pt]
&=2(1-\cos^2\theta)\cos\theta\{3-4(1-\cos^2\theta)\} \\[4pt]
&=2(1-x^2)x(4x^2-1) \\[4pt]
&=-8x^5+10x^3-2x
\end{align*}
\begin{align*}
&\cos5\theta=(8x^5-10x^3+3x)-(-8x^5+10x^3-2x) \\[4pt]
&\cos5\theta=16x^5-20x^3+5x
\end{align*}
&\cos5\theta=(8x^5-10x^3+3x)-(-8x^5+10x^3-2x) \\[4pt]
&\cos5\theta=16x^5-20x^3+5x
\end{align*}
$\theta=\dfrac{\pi}{10}$ とおくと,$5\theta=\dfrac{\pi}{2}$ となって,$\cos5\theta=0$ となるから,(2)の結果が利用できそうです。
【(3)の解答】
$x=\cos\dfrac{\pi}{10}$ とおくと,(2)の結果より
$x=\cos\dfrac{\pi}{10}$ とおくと,(2)の結果より
\begin{align*}
16x^5-20x^3+5x=0
\end{align*}
が成り立つ。$x\neq0$ であるから16x^5-20x^3+5x=0
\end{align*}
\begin{align*}
&16x^4-20x^2+5=0 \\[4pt]
&x^2=\dfrac{10\pm\sqrt{20}}{16} \\[4pt]
&x^2=\dfrac{5\pm\sqrt{5}}{8}
\end{align*}
&16x^4-20x^2+5=0 \\[4pt]
&x^2=\dfrac{10\pm\sqrt{20}}{16} \\[4pt]
&x^2=\dfrac{5\pm\sqrt{5}}{8}
\end{align*}
ヒロ
いま求めたいのは,$\cos^2\dfrac{\pi}{10}$,つまり $x^2$ だから,複二次式と見たのは良いね。
ヒロ
あとは $\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}$ と $\dfrac{5-\sqrt{5}}{8}$ のどちらになるかを判断しないといけないね。両方正だから,既に分かっている値と比べるのが良いだろうね。
$\dfrac{\pi}{10}$ に近くて値が分かっている $\dfrac{\pi}{6}$ を考えてみます。
【(2)の解答の続き】
$\cos^2\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{3}{4}$ であり,$2<\sqrt{5}<3$ であることから
$\cos^2\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{3}{4}$ であり,$2<\sqrt{5}<3$ であることから
\begin{align*}
\dfrac{5-\sqrt{5}}{8}<\dfrac{3}{4}<\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}
\end{align*}
$\dfrac{\pi}{10}<\dfrac{\pi}{6}$ より,$0<\cos\dfrac{\pi}{6}<\cos\dfrac{\pi}{10}$ であるから\dfrac{5-\sqrt{5}}{8}<\dfrac{3}{4}<\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}
\end{align*}
\begin{align*}
&\cos^2\dfrac{\pi}{10}=\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}
\end{align*}
&\cos^2\dfrac{\pi}{10}=\dfrac{5+\sqrt{5}}{8}
\end{align*}