積や累乗の形の関数の微分について説明します。
数学Ⅱの導関数の計算では,展開して微分した方が速いような問題が多いと思いますが,積や累乗の形の関数の微分公式を知っておいても損はないでしょう。
しかし,数学Ⅲが入試科目に入っている人は絶対に知っておかないといけない公式なので,使えるようにしておきましょう。
積や累乗の形の関数の微分公式
ヒロ
導関数の公式を知っていたとしても,積の形の関数を微分するときは展開するのが面倒に感じる問題もあるだろう。
ヒロ
そんなときは次の「積や累乗の形の導関数の公式」を知っていると楽に微分することができる。
積や累乗の形の導関数の公式
$n$を自然数とする。
- $\{f(x)g(x)\}’=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)$
- $\{(ax+b)^n\}’=n(ax+b)^{n-1}(ax+b)’$
- $(\{f(x)\}^n)’=n\{f(x)\}^{n-1}f'(x)$
ヒロ
ほとんどの人にとっては,公式が成り立つ理由を知るより,正しく使えるようにすることのほうが重要だろう。
導関数の計算
ヒロ
積や累乗の形の導関数の公式を用いて,導関数を求める練習をしよう。
問題次の関数を微分せよ。
(1) $y=(2x+1)^3$
(2) $y=(x-3)^2(x+2)$
(3) $y=(3x-2)(2x^2+1)$
(1) $y=(2x+1)^3$
(2) $y=(x-3)^2(x+2)$
(3) $y=(3x-2)(2x^2+1)$
【(1)の解答と考え方】
$y=(2x+1)^3$のとき
$y=(2x+1)^3$のとき
\begin{align*}
y’&=3(2x+1)^2\Cdota(2x+1)’ \\[4pt]
&=3(2x+1)^2\Cdota2 \\[4pt]
&=6(2x+1)^2
\end{align*}
y’&=3(2x+1)^2\Cdota(2x+1)’ \\[4pt]
&=3(2x+1)^2\Cdota2 \\[4pt]
&=6(2x+1)^2
\end{align*}
ヒロ
丁寧に$(2x+1)’$と書いたけど,暗算して2行目から書けるようにしよう。最終的には一発で答えを書けるようにすると良いだろう。
【(2)の解答と考え方】
$y=(x-3)^2(x+2)$のとき
$y=(x-3)^2(x+2)$のとき
\begin{align*}
y’&=2(x-3)\Cdota(x+2)+(x-3)^2\Cdota1 \\[4pt]
&=(x-3)\{2(x+2)+(x-3)\} \\[4pt]
&=(x-3)(3x+1)
\end{align*}
y’&=2(x-3)\Cdota(x+2)+(x-3)^2\Cdota1 \\[4pt]
&=(x-3)\{2(x+2)+(x-3)\} \\[4pt]
&=(x-3)(3x+1)
\end{align*}
ヒロ
同じようにして(3)も解こう。
【(3)の解答と考え方】
$y=(3x-2)(2x^2+1)$のとき
$y=(3x-2)(2x^2+1)$のとき
\begin{align*}
y’&=3(2x^2+1)+(3x-2)\Cdota4x \\[4pt]
&=18x^2-8x+3
\end{align*}
y’&=3(2x^2+1)+(3x-2)\Cdota4x \\[4pt]
&=18x^2-8x+3
\end{align*}
積の微分公式が役に立つ問題
2018年 宮城教育大等式
が$x$についての恒等式となるような定数$a,~b,~c,~d$の値を求めよ。
\begin{align*}
\dfrac{x^2}{(x^2-1)^2}=\dfrac{a}{(x-1)^2}+\dfrac{b}{x-1}+\dfrac{c}{x+1}+\dfrac{d}{(x+1)^2}
\end{align*}
\dfrac{x^2}{(x^2-1)^2}=\dfrac{a}{(x-1)^2}+\dfrac{b}{x-1}+\dfrac{c}{x+1}+\dfrac{d}{(x+1)^2}
\end{align*}
が$x$についての恒等式となるような定数$a,~b,~c,~d$の値を求めよ。
ヒロ
部分分数分解を利用する方法もあるが,ここでは分母を払う方法を解説する。
【解答と考え方】
両辺に $(x^2-1)^2$ をかけると
両辺に $(x^2-1)^2$ をかけると
\begin{align*}
x^2=a(x+1)^2+b(x+1)^2(x-1)+c(x+1)(x-1)^2+d(x-1)^2~\cdots\cdots①
\end{align*}
①の第2項,第3項,第4項に $x-1$ があることに着目する。①に $x=1$ を代入すると,第2項以降が消えるから $a$ の値を求めることができる。具体的には次のようになる。x^2=a(x+1)^2+b(x+1)^2(x-1)+c(x+1)(x-1)^2+d(x-1)^2~\cdots\cdots①
\end{align*}
\begin{align*}
&1=a\Cdota(1+1)^2 \\[4pt]
&1=4a \\[4pt]
&a=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
同じように考えると,第4項以外に $x+1$ があることに気付くだろう。つまり①に $x=-1$ を代入することで $d$ の値を求めることができる。&1=a\Cdota(1+1)^2 \\[4pt]
&1=4a \\[4pt]
&a=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
\begin{align*}
&(-1)^2=d(-1-1)^2 \\[4pt]
&1=4d \\[4pt]
&d=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
残った $b,~c$ の値を求めたいが,①の $x$ にある値を代入して $b,~c$ を求めることができないことに気付くだろう。そこで微分の出番である。①の両辺を $x$ で微分してみよう。その際には積の微分公式を知らないと微分することが大変な作業になるだろう。実際に微分すると次のようになる。&(-1)^2=d(-1-1)^2 \\[4pt]
&1=4d \\[4pt]
&d=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
\begin{align*}
&2x=2a(x+1)+b\{2(x+1)(x-1)+(x+1)^2\}+c\{(x-1)^2+(x+1)\Cdota2(x-1)\}+2d(x-1) \\[4pt]
&2x=2a(x+1)+b(x+1)(3x-1)+c(x-1)(3x+1)+2d(x-1)~\cdots\cdots②
\end{align*}
②の $x$ に1を代入すると,$c,~d$ の項を消すことができるから,$b$ の値を求めることができる。&2x=2a(x+1)+b\{2(x+1)(x-1)+(x+1)^2\}+c\{(x-1)^2+(x+1)\Cdota2(x-1)\}+2d(x-1) \\[4pt]
&2x=2a(x+1)+b(x+1)(3x-1)+c(x-1)(3x+1)+2d(x-1)~\cdots\cdots②
\end{align*}
\begin{align*}
&2=4a+4b \\[4pt]
&2=1+4b \\[4pt]
&b=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
また,②の $x$ に $-1$ を代入すると,$a,~b$ の項を消すことができるから,$c$ の値を求めることができる。&2=4a+4b \\[4pt]
&2=1+4b \\[4pt]
&b=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
\begin{align*}
&-2=4c-4d \\[4pt]
&-2=4c-1 \\[4pt]
&c=-\dfrac{1}{4}
\end{align*}
&-2=4c-4d \\[4pt]
&-2=4c-1 \\[4pt]
&c=-\dfrac{1}{4}
\end{align*}
ヒロ
部分分数分解を速くする方法に興味がある人は,次の記事が参考になるだろう。