大学入試で「○○を因数分解せよ」という問題が出題されたときには,必ず解けることが合格への必須の条件だと言えるくらい因数分解は重要です。
高校1年生で学習する因数分解は,中学校で学習する因数分解より難しいです。
その複雑さから挫折すると,その後の様々な単元で躓いてしまうことになります。
そんな数学の基礎力とも言える因数分解をしっかりできるようにしましょう。
Contents
定期テストで実際に出題された因数分解の問題
高校1年の1学期中間テストに実際に出題された因数分解の問題を解いていこう。
因数分解の問題1
(1) $x^2+6y-3xy-4$
(2) $6a^2-5ab-4b^2$
(3) $a^6-7a^3-8$
(4) $x^4+3x^2+4$
因数分解の基本を知っておこう。
どんな文字に着目するのが良いんですか?
次のポイントを参考にして着目する文字を決めよう。
- 次数が最も低い文字
- 次数が等しいときは係数が1の文字
- 上記以外ならどれでも良い(好みの問題)
次数が最も低い文字 $y$ に着目しよう。
&x^2+6y-3xy-4 \\[4pt]
&=(6-3x)y+x^2-4 \\[4pt]
&=-3(x-2)y+(x+2)(x-2) \\[4pt]
&=(x-2)(x-3y+2)
\end{align*}
(2) $6a^2-5ab-4b^2$
(2)はたすきがけで処理しよう。
$a$ の2次式と見てたすきがけで考える場合,$a^2$ の係数6は2と3に分けることが多い。
次に定数項の $-4b^2$ の分け方については,6を2と3に分けた時点で,符号を後で考えることにすると $b$ と $4b$ に分ける以外あり得ない。
たすきがけで数字を並べるときは,横に並ぶ2数を互いに素であるようにしなければならないから。ということで,次のように因数分解できる。
&6a^2-5ab-4b^2 \\[4pt]
&=(3a-4b)(2a+b)
\end{align*}
たすきがけによる因数分解のコツについては,次の記事を参考にして欲しい。
(3) $a^6-7a^3-8$
(3)は $a^3$ を1つの文字,例えば $t$ とおくと,$t$ の2次式で表せることを利用しよう。
&a^6-7a^3-8 \\[4pt]
&=(a^3)^2-7a^3-8 \\[4pt]
&=(a^3-8)(a^3+1) \\[4pt]
&=(a-2)(a^2+2a+4)(a+1)(a^2-a+1)
\end{align*}
3乗の和や3乗の差の因数分解の公式を使えるようにしておこう。
&x^3+y^3=(x+y)(x^2-xy+y^2) \\[4pt]
&x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)
\end{align*}
(4) $x^4+3x^2+4$
(4)は複二次式と呼ばれる式だね。
- $x^2=t$ とおいて因数分解する。
- 2乗の差を作って因数分解する。
まずは $x^2=t$ とおいて因数分解してみて出来なかったら,2乗の差を作る方法に切り替えよう。
$x^2=t$ とおくと
x^4+3x^2+4=t^2+3t+4
\end{align*}
つまり,この問題は2乗の差を作る問題だと分かる。
$(x^2+a)^2-\bigcirc^2$ の形を作る際に,$a$ を正の数にするか負の数にするかを考えないといけない。
$x^2$ の係数が0以上のときは $a$ を正にすればうまくいく。$x^2$ の係数が負のときは $a$ の符号は正と負の両方の可能性があるため,$a$ を正の数として因数分解できるかどうかを確かめて,できなければ $a$ を負の数として因数分解しよう。
x^4+3x^2+4&=(x^2+2)^2-x^2 \\[4pt]
&=\{(x^2+2)+x\}\{(x^2+2)-x\} \\[4pt]
&=(x^2+x+2)(x^2-x+2)
\end{align*}
因数分解の問題2
(1) $x^2-2xy-3y^2-x+11y-6$
(2) $4x^2-y^2+4y-4$
(3) $x^4-14x^2+1$
(4) $abc+a^2b-ab^2-a+b-c$
(1) は $x$ に着目して因数分解しよう。
&x^2-2xy-3y^2-x+11y-6 \\[4pt]
&=x^2+(-2y-1)x-(3y^2-11y+6) \\[4pt]
&=x^2+(-2y-1)x-(y-3)(3y-2) \\[4pt]
&=\{x-(3y-2)\}\{x+(y-3)\} \\[4pt]
&=(x-3y+2)(x+y-3)
\end{align*}
(2) $4x^2-y^2+4y-4$
(2)は初めて解くとワナに引っかかる人もいるだろう。
&4x^2-y^2+4y-4 \\[4pt]
&=(2x+y)(2x-y)+4y-4
\end{align*}
これは1つの文字に着目するという原則を忘れているからおかしなことになる。
$x$ に着目すると,後ろ3つの項が定数項であるように式を見ることができる。
この時点で,前1つと後ろ3つで2乗の差になるはずだと分かる。
&4x^2-y^2+4y-4 \\[4pt]
&=4x^2-(y^2-4y+4) \\[4pt]
&=4x^2-(y-2)^2 \\[4pt]
&=\{2x+(y-2)\}\{2x-(y-2)\} \\[4pt]
&=(2x+y-2)(2x-y+2)
\end{align*}
(3) $x^4-14x^2+1$
(3)は複二次式の因数分解の手順にしたがって因数分解しよう。
$x^2=t$ とおいて $t$ の2次式と見ても因数分解できないことは,すぐに分かるだろう。
ということで2乗の差の形に変形する。
$x^2$ の係数が $-14$ で負だから,とりあえず正の方から試すと次のようになる。
x^4-14x^2+1&=(x^2+1)^2-16x^2 \\[4pt]
&=(x^2+1+4x)(x^2+1-4x) \\[4pt]
&=(x^2+4x+1)(x^2-4x+1)
\end{align*}
正の方から試してうまくいっただけで,計算する前から上手くいくと分かっているわけではない。
正にしようか負にしようか悩んでる時間をなくして,正の方から試して因数分解してみれば良い。
悩むだけ時間の無駄ってことですね!
(4) $abc+a^2b-ab^2-a+b-c$
(4)は $c$ の最高次数が最も低い1だから,$c$ に着目して因数分解しよう。
&abc+a^2b-ab^2-a+b-c \\[4pt]
&=(ab-1)c+a^2b-ab^2-a+b
\end{align*}
共通因数が出てこなければ因数分解できないから,後ろ4つの項を因数分解すると $ab-1$ が現れることは確定している。
これを考えれば比較的楽に因数分解できるだろう。
(与式)&=(ab-1)c+a^2b-ab^2-a+b \\[4pt]
&=(ab-1)c+(ab-1)(a-b) \\[4pt]
&=(ab-1)\{c+(a-b)\} \\[4pt]
&=(ab-1)(a-b+c)
\end{align*}
最近出題された因数分解の入試問題
展開と同様で「○○を因数分解せよ」という問題は少ないが,展開よりは多く出題される。
ただし,単独の問題というわけではなく,(1)が因数分解,(2)以降がその結果を利用して解く問題になっている場合が多い。
言うまでもなく(1)の因数分解の問題を解けなければ,次の(2)も解けないわけなので,因数分解ができることは重要ってこと。
ということで最近出題された因数分解の入試問題をいくつか見ておこう。
今回の記事では,大問丸ごとを扱うのではなく,因数分解の部分のみを扱うことにする。
2019年 富山大
P(x,~y,~z)=xyz-3xy-2xz-yz+6x+3y+2z-6
\end{align*}
今回は3つの文字 $x,~y,~z$ の次数はすべて1で等しくて,$xyz$ があるから着目する文字はどれでも良いね。
ということで $x$ に着目して進めていこう。
P(x,~y,~z)&=(yz-3y-2z+6)x-yz+3y+2z-6 \\[4pt]
&=(x-1)(yz-3y-2z+6) \\[4pt]
&=(x-1)\{(z-3)y-2z+6\} \\[4pt]
&=(x-1)\{(z-3)y-2(z-3)\} \\[4pt]
&=(x-1)(y-2)(z-3)
\end{align*}
どの文字についても次数が1の場合は,1つの文字に着目して整理すると,同じ式のカタマリが現れるので,そのカタマリでくくることで因数分解が進むことを理解しよう。
2019年 京都府立大
各項の次数が4になっている式の因数分解をする問題。
次数については $a,~b,~c$ のどれであっても最高次は4次で係数も1だから,$a$ に着目して考えよう。
&a^4-2a^2b^2-2a^2c^2+b^4-2b^2c^2+c^4 \\[4pt]
&=a^4-(2b^2+2c^2)a^2+b^4-2b^2c^2+c^4 \\[4pt]
&=a^4-2(b^2+c^2)a^2+(b^2-c^2)^2 \\[4pt]
&=a^4-2(b^2+c^2)a^2+(b+c)^2(b-c)^2
\end{align*}
ここで次の等式を公式として身に付いていると楽かもしれない。
ちなみに,この等式は次の記事でも紹介している。
今回の場合は $b$ と $c$ になっているだけだね。
(与式)&=a^4-2(b^2+c^2)a^2+(b+c)^2(b-c)^2 \\[4pt]
&=\{a^2-(b+c)^2\}\{a^2-(b-c)^2\} \\[4pt]
&=(a+b+c)(a-b-c)(a+b-c)(a-b+c)
\end{align*}
2乗の差の因数分解の公式を使うことはよくあるから,しっかり使えるようにしておこう。
2019年 昭和大
$x^2=t$ とおくと
(与式)&=t^2-13t+36 \\[4pt]
&=(t-4)(t-9) \\[4pt]
&=(x^2-4)(x^2-9) \\[4pt]
&=(x+2)(x-2)(x+3)(x-3)
\end{align*}
複二次式で2乗の差を作る形かと思ったら,意外とそうでない場合もある。
ただ,この問題に関しては2乗の差を作る方法で解いても因数分解できてしまうけど・・・
&x^4-13x^2+36 \\[4pt]
&=(x^2+6)^2-25x^2 \\[4pt]
&=(x^2+5x+6)(x^2-5x+6) \\[4pt]
&=(x+2)(x+3)(x-2)(x-3)
\end{align*}
しかも負の方でも次のように因数分解できる。
&x^4-13x^2+36 \\[4pt]
&=(x^2-6)^2-x^2 \\[4pt]
&=(x^2+x-6)(x^2+x-6) \\[4pt]
&=(x+3)(x-2)(x+3)(x-2)
\end{align*}
どんな解き方でも解けてしまう受験生にとってはありがたい問題ですね。
2018年 京都府立大
$x$ と $y$ の次数はどちらも2次で,係数も1とは異なるから $x$ に着目して因数分解しよう。
&2x^2-xy-y^2+7x-y+6 \\[4pt]
&=2x^2+(-y+7)x-(y^2+y-6) \\[4pt]
&=2x^2+(-y+7)x-(y+3)(y-2) \\[4pt]
&=\{2x+(y+3)\}\{x-(y-2)\} \\[4pt]
&=(2x+y+3)(x-y+2)
\end{align*}