漸化式パターン3の第三弾となります。パターン3は $f(n)$ の形に応じて,次の4つのタイプに分けることができます。
- 1次式
- 2次式
- $n+k$ 乗 ($k$ は整数) ← この記事ではこのタイプを解説
- 分数式
ここでは,$f(n)$ が $qr^{n+k}$ で表される漸化式の解法を説明します。
パターン3は,前回の2次式のタイプはほとんど出題されず,この $n$ 乗系のタイプと1次式のタイプでほぼ二分されます。どのような形で出題されたとしても解けるようにしましょう。
それでは,次の問題を考えましょう。
$b_n=\dfrac{a_n}{3^n}$ とおくと,数列 $\{b_n\}$ は
b_1=\dfrac{\myhako}{\myhako},~b_{n+1}=\myhako~b_n+\myhako ~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
したがって数列 $\{a_n\}$ の一般項は $\myhako$ と表される。
Contents
基本形に変形する
誘導通りにやっていこう。
初項は $n=1$ を代入するだけですね。
次は数列 $\{b_n\}$ の漸化式を求めよう。
&3^{n+1}b_{n+1}=3\Cdota3^nb_n+2\Cdota3^{n+1} \\[4pt]
&3^{n+1}b_{n+1}=3^{n+1}b_n+2\Cdota3^{n+1} \\[4pt]
&b_{n+1}=b_n+2
\end{align*}
これで,数列 $b_n$ が公差2の等差数列だと分かったね。
センター試験と違って,1が入るのはちょっと戸惑いますね。
私大入試にはよくあることなので,これくらいで動揺しないようにしよう。あと,もし $b_n$ の係数が1でなければ,パターン2になるのでもう少し難しくなるよ。さぁ,一般項を求めよう。
&b_n=\dfrac{1}{3}+2(n-1) \\[4pt]
&b_n=2n-\dfrac{5}{3}
\end{align*}
&a_n=3^n\left(2n-\dfrac{5}{3}\right) \\[4pt]
&a_n=3^{n-1}(6n-5)
\end{align*}
誘導がない場合
$a_{n+1}=pa_n+qr^{n+k}$($k$ は整数) の形の漸化式は,両辺を $p^{n+1}$ か $r^{n+1}$ で割るとうまく処理できることを覚えておこう。今回の問題では,$p=r$ なのでどちらの考えでも $3^{n+1}$ で割ることになる。
&\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{3^{n+1}}+\dfrac{2\Cdot3^{n+1}}{3^{n+1}} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{3\Cdot3^n}+\dfrac{2\Cdot3^{n+1}}{3^{n+1}} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{a_n}{3^n}+2
\end{align*}
$3^{n+1}=3\Cdot3^n$ と考えて,$\dfrac{a_n}{3^n}$ と $\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}$ をうまく作ろう。
分母と分子の両方の $n$ が1つずれているからこそ,$\dfrac{a_n}{3^n}=b_n$ とおいたときに,$\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=b_{n+1}$ となって,うまくいくんだ。
誘導がない場合 その2
もう1つの方法として,等比数列となるような置き換えをする方法がある。
a_{n+1}+\alpha(n+1)\Cdota3^{n+1}=3(a_n+\alpha n\Cdota3^n)
\end{align*}
a_{n+1}&=3a_n+\{\alpha n-\alpha(n+1)\}\Cdota3^{n+1} \\[4pt]
&=3a_n-\alpha\Cdota3^{n+1}
\end{align*}
よって,数列 $\{a_n-2n\Cdot3^n\}$ は公比3の等比数列である。$a_1-2\Cdot3=-5$ より
&a_n-2n\Cdota3^n=-5\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&a_n=2n\Cdota3^n-5\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&a_n=(6n-5)\Cdota3^{n-1}
\end{align*}
$a_{n+1}=pa_n+qr^{n+k}$$~(p\neq1,k は整数)$ 型の漸化式の解法
それでは解法をまとめておこう。
一般的に,漸化式パターン3の $f(n)$ が $n$ 乗系の漸化式の解法は次の手順に従おう。
- 両辺を $r^{n+1}$ で割る。
- $\dfrac{a_n}{r^n}=b_n$ とおいて,$b_{n+1}$ を $b_n$ で表す。
- 基本形かパターン2になるから,そのパターンを特定して解法を思い出す。
- $b_n$ を求めて,一般項 $a_n=r^nb_n$ を求める。
- 両辺を $p^{n+1}$ で割る。
- $\dfrac{a_n}{p^n}=b_n$ とおいて,$b_{n+1}$ を $b_n$ で表す。
- 等差型か階差型になるから,その解法を思い出す。
- $b_n$ を求めて,一般項 $a_n=p^nb_n$ を求める。
- 数列 $\{a_n+\alpha nr^n\}$ が等比数列となる $\alpha$ を求める。
- 等比型になることを利用して,一般項 $a_n$ を求める。
- 数列 $\{a_n+\alpha r^n\}$ が等比数列となる $\alpha$ を求める。
- 等比型になることを利用して,一般項 $a_n$ を求める。
漸化式パターン3の練習
練習しておこう。
$a_2=\myhako$ ,$a_3=\myhako$ である。また,漸化式を変形すると,$a_{n+1}+2^{n+1}=3\left(a_n+\myhako\right)$ となることから,数列 $\{a_n\}$ の一般項は,$a_n=\myhako$ である。
解説していくよ。
$a_2,a_3$ は漸化式の $n$ に $n=1,2$ を代入して順番に求めていくだけだね。
$a_3=3a_2+2^2=24+4=28$
次は,漸化式を等比型に変形しているけど,空欄を埋めるだけなら,すぐに答えが分かるね。
左辺が $a_{n+1}+2^{n+1}$ となっていて,等比型に変形しているなら,右辺は $3(a_n+2^n)$ になるはず。これが正しいかどうかは展開・整理して元の漸化式に戻ることを確認すれば良いね。
a_{n+1}&=3a_n+3\Cdota2^n-2^{n+1} \\[4pt]
&=3a_n+3\Cdota2^n-2\Cdota2^n \\[4pt]
&=3a_n+2^n
\end{align*}
確かに元の漸化式に戻るので,空欄は $2^n$ で正しいことが分かりますね。
一般項 $a_n$ を求めてしまおう。
&a_n+2^n=(a_1+2)\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&a_n=4\Cdota3^{n-1}-2^n
\end{align*}
これは空欄を埋める問題で,左辺が既に書かれていたから,かなり簡単に解けてしまう。
穴埋め形式でなく,この解法を選択した場合は,次のように,数列 $\{a_n+\alpha\Cdot2^n\}$ が等比数列となるように $\alpha$ を求めることになる。
&a_{n+1}+\alpha\Cdota2^{n+1}=3(a_n+\alpha\Cdota2^n)
\end{align*}
&a_{n+1}=3a_n+3\alpha\Cdota2^n-2\alpha\Cdota2^n \\[4pt]
&a_{n+1}=3a_n+\alpha\Cdota2^n
\end{align*}
このようにして,数列 $\{a_n+2^n\}$ が等比数列になることを導くことができる。
練習問題の別解
この問題が誘導なしで出題された場合,多くの人が選択する解法で解いておくよ。
&\dfrac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{2^{n+1}}+\dfrac{2^n}{2^{n+1}} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\dfrac{3}{2}\Cdota\dfrac{a_n}{2^n}+\dfrac{1}{2}
\end{align*}
&b_{n+1}=\dfrac{3}{2}b_n+\dfrac{1}{2}
\end{align*}
&{\color{blue}2x=3x+1} \\[4pt]
&{\color{blue}x=-1}
\end{align*}
b_{n+1}+1=\dfrac{3}{2}(b_n+1)
\end{align*}
&b_n+1=(b_1+1)\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1} \\[4pt]
&b_n=2\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1}-1
\end{align*}
&a_n=2^n\left\{2\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1}-1\right\} \\[4pt]
&a_n=4\Cdota3^{n-1}-2^n
\end{align*}
練習問題の別解
最後に階差型に変形する方法でも解いておくよ。
&\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{3^{n+1}}+\dfrac{2^n}{3^{n+1}} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{a_n}{3^n}+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^n
\end{align*}
&b_{n+1}=b_n+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^n
\end{align*}
b_n&=b_1+\Sum{k=1}{n-1}\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^k \\[4pt]
&=\dfrac{a_1}{3}+\dfrac{1}{3}\Cdota\dfrac{\dfrac{2}{3}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}\right\}}{1-\dfrac{2}{3}} \\[4pt]
&=\dfrac{2}{3}+\dfrac{2}{3}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{4}{3}-\left(\dfrac{2}{3}\right)^n
\end{align*}
$a_n=3^nb_n$ より
&a_n=3^n\left\{\dfrac{4}{3}-\left(\dfrac{2}{3}\right)^n\right\} \\[4pt]
&a_n=4\Cdota3^{n-1}-2^n
\end{align*}
まとめ
漸化式パターン3の $f(n)$ が定数の $n$ 乗などで表される漸化式は,誘導があるものと誘導がないものが出題されるため,どのような形で出題されても大丈夫なように,しっかり練習しておこう。