大学入試問題に出題される極限に関する証明問題では「はさみうちの原理」を利用するものが多いことが知られています。
しかし「はさみうちの原理」を利用することが分かっていても,どのように利用するかが難しい問題もあります。
そういう問題こそ,合否に直結する問題で,解けなかった場合に不合格に近づいてしまうことになります。
有名問題については,解法を丸ごと覚えてしまうという方法もありますが,重要なポイントだけを覚えて細かい部分を覚えないことも大切です。
2005年 千葉大
それでは次の問題を解いてみよう。
(1) $a>\dfrac1e$ のとき,$x>0$ に対し $x^a>\log x$ であることを示せ。
(2) $a>\dfrac1e$ のとき,$\dlim{x\to+0}x^a\log x=0$ が成り立つことを示せ。
(3) $0<t<\dfrac1e$ として,曲線 $y=x\log x~(t\leqq x\leqq1)$ およ び $x$ 軸と直線 $x=t$ で囲まれた部分を,$y$ 軸の まわりに回転して得られる図形の体積を $V(t)$ とする。このとき,$\dlim{t\to+0}V(t)$ を求めよ。
(1)の考え方と解答
(1)はグラフを利用すれば証明できるね。
今回の場合は $f(x)=x^a-\log x$ とおいて $x>0$ における $f(x)$ の最小値が正であることを示すんですね。
そうだね。解いていこう。
$f(x)=x^a-\log x$ とおくと,
f'(x)&=ax^{a-1}-\dfrac1x \\[4pt]
&=\dfrac ax\left(x^a-\dfrac1a\right)
\end{align*}
&x^a=\dfrac1a \\[4pt]
&x=\left(\dfrac1a\right)^{\frac1a}
\end{align*}
\begin{array}{|c||c|c|c|c|}\hline
x & 0 & \cdots & \alpha & \cdots \\[4pt]\hline
f'(x) & & – & 0 & + \\[4pt]\hline
f(x) & & \searrow & & \nearrow \\[4pt]\hline
\end{array}
\end{align*}
f(\alpha)&=\alpha^a-\log\alpha \\[4pt]
&=\dfrac1a+\dfrac1a\log a=\dfrac1a(1+\log a)
\end{align*}
したがって,$a>\dfrac1e$ のとき,$x^a>\log x$ が成り立つ。
(2)の考え方と解答
(2) $a>\dfrac1e$ のとき,$\dlim{x\to+0}x^a\log x=0$ が成り立つことを示せ。
これは(1)で不等式の証明をしているので「はさみうちの原理」を利用すれば良いはずです。
以前に $\dlim{x\to+0}x\log x=0$ を証明したので,似たような感じですね。
$0<\log x<\sqrt{x}$ の証明は省略しますね。
$x>0$ において,$0<\log x<\sqrt{x}$ が成り立つから,辺々を $x^a~(>0)$ で割ると
ちょっと適当にやってない?
$\dlim{x\to\infty}x^{\frac{1}{2}-a}=0$ としているけど,仮に $a=\dfrac{1}{2}~\left(>\dfrac{1}{e}\right)$ のときは
\dlim{x\to\infty}x^{\frac{1}{2}-a}=1
\end{align*}
問題文の $a$ の条件として $a>\dfrac{1}{2}$ と与えられているなら,今の解法でも大丈夫だけど,今回はもう少し厳しい条件が与えられているから,その部分に注意しないといけないね。
確かに証明できた気でいました。これだと全然ダメですね。
でも,そのまま(1)の不等式を利用しようとしても,うまくいきませんよね?
$a>\dfrac{1}{e}$ のとき $x^a>\log x$ が成り立つから
0<\dfrac{\log x}{x^a}<1
\end{align*}
これだと,はさみうちの原理が使えないんですよね・・・
そうだね。少し工夫をしてから(1)の不等式を利用しよう。
いま(1)の不等式は $a>\dfrac{1}{e}$ を満たす $a$ に対して $x^a>\log x$ が成り立つというもの。
そこで $a$ を $\dfrac{1}{e}$ より大きい別のものに変えてしまおう。
その値を仮に $b$ と書くことにすると
言っていることは分かりますけど,その $b$ をどうやって決めるんですか?
不等式の片方の式を変えずに,もう片方の式を変える方法を身に付ければ大丈夫だね。
そんなことできるんですか?
今回の場合は $a>\dfrac{1}{e}$ の両辺に $\dfrac{1}{e}$ を加えて2で割れば良いってことですね。
そうだね。実際にやってみよう。
$a>\dfrac{1}{e}$ より $\dfrac{1}{2}\left(a+\dfrac{1}{e}\right)>\dfrac{1}{e}$ となるから,(1)の結果より $t>1$ に対して
(3)の考え方と解答
(3) $0<t<\dfrac1e$ として,曲線 $y=x\log x~(t\leqq x\leqq1)$ およ び $x$ 軸と直線 $x=t$ で囲まれた部分を,$y$ 軸の まわりに回転して得られる図形の体積を $V(t)$ とする。このとき,$\dlim{t\to+0}V(t)$ を求めよ。
次は回転体の体積の極限を求める問題だね。
積分するだけですね。
$y=x\log x$ より,$y’=\log x+1$
$y’=0$ とすると,
&\log x=-1 \\[4pt]
&x=\dfrac{1}{e}
\end{align*}
\begin{array}{|c||c|c|c|c|}\hline
x & 0 & \cdots & \dfrac1e & \cdots \\\hline
y’ & & – & 0 & + \\\hline
y & & \searrow & -\dfrac1e & \nearrow \\\hline
\end{array}
\end{align*}
$y=x\log x$ の $0<x\leqq\dfrac1e$ の部分を $y=x_1\log x_1$, $\dfrac1e\leqq x$ の部分を $y=x_2\log x_2$ とおくと,