和を含む漸化式パターン8の第三弾です。$S_n$ だけで表されている場合もあります。数列 {$S_n$} の漸化式として解けるなら,そのまま解いてしまっても構いません。
また,一般項を求める方法として,今まで色々なパターンに対応した解法を紹介してきました。しかし,一般項はこうなるだろうなぁと推測できる場合には,一旦推測してしまってから,それが正しいことを証明しても構いません。
ここでは,そんな問題を扱います。それでは,最初の問題はこちらです。
S_{n+1}+S_n=\dfrac{1}{3}(S_{n+1}-S_n)^2
\end{align*}
(1) $S_2$ と $S_3$ を求めよ。
(2) 数列 $\{a_n\}$ のみたす漸化式を求めよ。
(3) 数列 $\{S_n\}$ の一般項を求めよ。
数列 $\{S_n\}$ の漸化式
最初の(1)は $S_1=a_1$ であることが分かっていれば,$n$ に1や2を代入すれば解けるはずだね。
S_{n+1}+S_n=\dfrac{1}{3}(S_{n+1}-S_n)^2~\cdots\cdots ①
\end{align*}
&S_2+S_1=\dfrac{1}{3}(S_2-S_1)^2 \\[4pt]
&3(S_2+3)=(S_2-3)^2 \\[4pt]
&{S_2}^2-9S_2=0 \\[4pt]
&S_2(S_2-9)=0 \\[4pt]
&S_2=0,~9
\end{align*}
①において $n=2$ とすると
&S_3+S_2=\dfrac{1}{3}(S_3-S_2)^2 \\[4pt]
&3(S_3+9)=(S_3-9)^2 \\[4pt]
&{S_3}^2-21S_3+54=0 \\[4pt]
&(S_3-3)(S_3-18)=0 \\[4pt]
&S_3=3,~18
\end{align*}
では(2)に進もう。
見た目に驚くかもしれないが,$S_n$ は数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和だから,$S_{n+1}-S_n=a_{n+1}$ が成り立つことを利用して,数列 $\{a_n\}$ のみたす漸化式を求めよう。
$S_{n+1}-S_n=a_{n+1}$ が成り立つから,①より
S_{n+1}+S_n=\dfrac{1}{3}{a_{n+1}}^2~\cdots\cdots ②
\end{align*}
S_{n+2}+S_{n+1}=\dfrac{1}{3}{a_{n+2}}^2~\cdots\cdots ③
\end{align*}
&(S_{n+2}-S_{n+1})+(S_{n+1}-S_n)=\dfrac{1}{3}({a_{n+2}}^2-{a_{n+1}}^2) \\[4pt]
&a_{n+2}+a_{n+1}=\dfrac{1}{3}(a_{n+2}+a_{n+1})(a_{n+2}-a_{n+1})
\end{align*}
&1=\dfrac{1}{3}(a_{n+2}-a_{n+1}) \\[4pt]
&a_{n+2}-a_{n+1}=3
\end{align*}
a_{n+1}-a_n=3~\cdots\cdots ④
\end{align*}
よって,$\{a_n\}$ のみたす漸化式は,$a_{n+1}-a_n=3$
最後の(3)を解説していくよ。$a_n$ を求めてから,$S_n$ を求めれば良いね。
(2)の結果より,数列 $\{a_n\}$ は初項3,公差3の等差数列であるから,$a_n=3n$
よって,数列 $\{S_n\}$ の一般項は
S_n=\Sum{k=1}{n}3k=\dfrac{3}{2}n(n+1)
\end{align*}
$S_n$ の分数式で表された漸化式
次は一般項 $a_n$ ではなく,$S_n$ を求める問題。
(1) $a_2$ を求めよ。
(2) $S_n$ を $S_{n-1}$ を用いて表せ。
(3) $S_n$ を求めよ。
まずは漸化式に $n=2$ を代入して $a_2$ を求めよう。
$a_n=\dfrac{2{S_n}^2}{2S_n+1}~\cdots\cdots ①$ に $n=2$ を代入すると
&a_2=\dfrac{2{S_2}^2}{2S_2+1} \\[4pt]
&a_2\{2(a_1+a_2)+1\}=2(a_1+a_2)^2 \\[4pt]
&a_2(2a_2+3)=2(a_2+1)^2 \\[4pt]
&3a_2=4a_2+2 \\[4pt]
&a_2=-2
\end{align*}
(2)は今までとは違って $a_n$ を消去することを考えよう。$S_{n-1}$ を使って良いんだから,まずは $a_n$ を $S_n$ と $S_{n-1}$ で表してみよう。
$n\geqq2$ のとき,$a_n=S_n-S_{n-1}$ が成り立つから①より
&S_n-S_{n-1}=\dfrac{2{S_n}^2}{2S_n+1}~\cdots\cdots ② \\[4pt]
&(2S_n+1)(S_n-S_{n-1})=2{S_n}^2 \\[4pt]
&-2S_nS_{n-1}+S_n-S_{n-1}=0 \\[4pt]
&(1-2S_{n-1})S_n=S_{n-1}
\end{align*}
よって,
S_n=\dfrac{S_{n-1}}{1-2S_{n-1}}~\cdots\cdots ③
\end{align*}
最後の(3)は(2)の漸化式を解けば良いね。パターン4の解法を思い出そう。
②において $S_n=0$ とすると,
&-S_{n-1}=0\quad \therefore S_{n-1}=0
\end{align*}
S_2&=a_1+a_2 \\[4pt]
&=1+(-2)=-1\neq0
\end{align*}
&\dfrac{1}{S_n}=\dfrac{1-2S_{n-1}}{S_{n-1}} \\[4pt]
&\dfrac{1}{S_n}=\dfrac{1}{S_{n-1}}-2
\end{align*}
&\dfrac{1}{S_n}=1-2(n-1) \\[4pt]
&\dfrac{1}{S_n}=-2n+3 \\[4pt]
&S_n=\dfrac{1}{-2n+3}
\end{align*}
解法が複数ある漸化式
a_1=1,~S_{n-1}-a_n=-4~(n=2,3,4,\cdots)
\end{align*}
(1) $a_2,~a_3,~a_4,~a_5$ の値をそれぞれ求めよ。
(2) 一般項 $a_n$ を求めよ。
(1)は漸化式の $n$ に2から順に代入して求めよう。
$S_{n-1}-a_n=-4~\cdots\cdots ①$
①に $n=2$ を代入すると
&S_1-a_2=-4 \\[4pt]
&a_1-a_2=-4 \\[4pt]
&1-a_2=-4 \\[4pt]
&a_2=5
\end{align*}
&S_2-a_3=-4 \\[4pt]
&(a_1+a_2)-a_3=-4 \\[4pt]
&1+5-a_3=-4 \\[4pt]
&a_3=10
\end{align*}
&S_3-a_4=-4 \\[4pt]
&(a_1+a_2+a_3)-a_4=-4 \\[4pt]
&1+5+10-a_4=-4 \\[4pt]
&a_4=20
\end{align*}
&S_4-a_5=-4 \\[4pt]
&(a_1+a_2+a_3+a_4)-a_5=-4 \\[4pt]
&1+5+10+20-a_5=-4 \\[4pt]
&a_5=40
\end{align*}
次の一般項を求める方法は色々考えられる。(1)の結果を見てどう思う?
2倍ずつになってます。
そうだね。ということは $n\geqq2$ のときは $a_n=5\Cdot2^{n-2}$ だろうと推測ができてしまう。
(1)で第5項まで求めさせてるのは,そういう意図があるんですか?
ただ単に漸化式について理解出来ているかどうかを調べたいなら,第3項までで十分でしょ。推測させる意図がなくて,第5項まで求めさせるのは,ただの嫌がらせだと思う。
そうなると,やっぱり「推測せよ」と言われてるようにしか思えないですね。
ってことで,推測した一般項が正しいことを数学的帰納法で証明しよう。
(1)の結果より,$n\geqq2$ のとき $a_n=5\Cdot2^{n-2}$ と推測できる。これを数学的帰納法で証明する。
$n=2$ のとき,$a_2=5$ となり,成り立つ。
$n=2,3,\cdots,k$ のとき $a_k=5\Cdot2^{k-2}$ が成り立つと仮定すると
a_{k+1}&=S_k+4 \\[4pt]
&=a_1+\Sum{m=2}{k}a_m+4 \\[4pt]
&=a_1+\Sum{m=2}{k}5\Cdot2^{k-2}+4 \\[4pt]
&=1+\dfrac{5(2^{k-1}-1)}{2-1}+4 \\[4pt]
&=5\Cdota2^{k-1}
\end{align*}
以上より,
a_1=1,~a_n=5\Cdota2^{n-2}~(n\geqq2)
\end{align*}
通常の数学的帰納法とは違って,前を全部仮定して次を導く証明方法になることに注意しよう。
このタイプは珍しいですね。
一般項を求める方法には,推測してそれを証明する方法もあることを覚えておこう。
通常通り $\{a_n\}$ の漸化式に変形して解く場合は次のようになる。
$S_{n-1}-a_n=-4~\cdots\cdots ①$ より,$n\geqq3$ のとき
S_n-a_{n+1}=-4~\cdots\cdots ②
\end{align*}
&S_n-S_{n-1}-(a_{n+1}-a_n)=0 \\[4pt]
&a_n-a_{n+1}+a_n=0 \\[4pt]
&a_{n+1}=2a_n
\end{align*}
&a_n=a_2\Cdota2^{n-2} \\[4pt]
&a_n=5\Cdota2^{n-2}
\end{align*}
a_1=1,~a_n=5\Cdota2^{n-2}~(n\geqq2)
\end{align*}
もう1つの解法として,数列 $\{S_n\}$ の漸化式に変形する方法がある。
$n\geqq2$ のとき $a_n=S_n-S_{n-1}$ が成り立つから,①より
&S_{n-1}-(S_n-S_{n-1})=-4 \\[4pt]
&S_n=2S_{n-1}+4 \\[4pt]
&S_n+4=2(S_{n-1}+4)
\end{align*}
&S_n+4=(S_1+4)\Cdota2^{n-1} \\[4pt]
&S_n=5\Cdota2^{n-1}-4
\end{align*}
a_n&=S_n-S_{n-1} \\[4pt]
&=5(2^{n-1}-2^{n-2}) \\[4pt]
&=5\Cdota2^{n-2}
\end{align*}
まとめ
数列 $\{a_n\}$ の項に関する和を含む漸化式パターン8には,様々なタイプが存在する。しかし,見た目に惑わされず基本の考え方にしたがって,落ち着いて変形することで,他のパターンに帰着できる。
より簡単なパターンの漸化式に帰着したはずなのに,それが解けないなんてことにならないように,他のパターンについても勉強しておこう。