ここでは与えられた自然数が,ある自然数の倍数であるかを判定する方法について説明します。
自然数を見たときに,その自然数が2の倍数かどうかや5の倍数かどうかは瞬時に判定できるでしょう。
3の倍数や4の倍数などについても,できるだけ短い時間で判定できるようにしましょう。
また,有名な数について知っておくことで,短時間で約数を見つけることができるため,入試においても時間的に有利になるでしょう。
Contents
2の倍数と5の倍数の判定法
ヒロ
まずは2の倍数と5の倍数の判定法を考える。
【2の倍数と5の倍数の判定法】
自然数 $N$ の一の位の数字を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
したがって,$N$ が2の倍数となるのは,$a$ が2の倍数のときであり,$N$ が5の倍数となるのは,$a$ が5の倍数のときである。
よって,$N$ が2の倍数となるのは,一の位が0, 2, 4, 6, 8のいずれかであるときである。また,$N$ が5の倍数となるのは,一の位が0, 5のいずれかのときである。
自然数 $N$ の一の位の数字を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
\begin{align*}
N=10k+a
\end{align*}
と表すことができる。$10=2\times5$ より,$10k$ は2の倍数でも5の倍数でもある。N=10k+a
\end{align*}
したがって,$N$ が2の倍数となるのは,$a$ が2の倍数のときであり,$N$ が5の倍数となるのは,$a$ が5の倍数のときである。
よって,$N$ が2の倍数となるのは,一の位が0, 2, 4, 6, 8のいずれかであるときである。また,$N$ が5の倍数となるのは,一の位が0, 5のいずれかのときである。
4の倍数と8の倍数の判定法
ヒロ
次に4の倍数の判定法を考える。
【4の倍数判定法】
自然数 $N$ の下二桁の数を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
したがって,$N$ が4の倍数となるのは,下二桁が4の倍数のときである。
自然数 $N$ の下二桁の数を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
\begin{align*}
N=100k+a
\end{align*}
と表すことができる。$100=4\times25$ より,$100k$ は4の倍数である。N=100k+a
\end{align*}
したがって,$N$ が4の倍数となるのは,下二桁が4の倍数のときである。
ヒロ
同じようにして8の倍数も判定できる。
【8の倍数判定法】
自然数 $N$ の下三桁の数を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
したがって,$N$ が8の倍数となるのは,下三桁が8の倍数のときである。
自然数 $N$ の下三桁の数を $a$ とすると,0以上の整数 $k$ を用いて
\begin{align*}
N=1000k+a
\end{align*}
と表すことができる。$1000=8\times125$ より,$1000k$ は8の倍数である。N=1000k+a
\end{align*}
したがって,$N$ が8の倍数となるのは,下三桁が8の倍数のときである。
3の倍数と9の倍数の判定法
ヒロ
次に3の倍数と9の倍数の判定法を考える。
【3の倍数と9の倍数の判定法】
例えば4桁の自然数 $N$ の千の位を $a$,百の位を $b$,十の位を $c$,一の位を $d$ とすると
桁数を増やしても,同様のことがいえる。
例えば4桁の自然数 $N$ の千の位を $a$,百の位を $b$,十の位を $c$,一の位を $d$ とすると
\begin{align*}
N=1000a+100b+10c+d
\end{align*}
と表すことができる。ここでN=1000a+100b+10c+d
\end{align*}
\begin{align*}
N&=999a+99b+9c+(a+b+c+d) \\[4pt]
&=3(333a+33b+3c)+(a+b+c+d)
\end{align*}
と変形すると,$3(333a+33b+3c)$ は3の倍数であるから,$N$ が3の倍数となるのは,$a+b+c+d$ が3の倍数のときである。N&=999a+99b+9c+(a+b+c+d) \\[4pt]
&=3(333a+33b+3c)+(a+b+c+d)
\end{align*}
\begin{align*}
N&=9(111a+11b+c)+(a+b+c+d)
\end{align*}
と変形すると,$9(111a+11b+c)$ が9の倍数であるから,$N$ が9の倍数となるのは,$a+b+c+d$ が9の倍数のときである。N&=9(111a+11b+c)+(a+b+c+d)
\end{align*}
桁数を増やしても,同様のことがいえる。
11の倍数判定法
ヒロ
11の倍数の判定法について考える。
【11の倍数判定法】
3の倍数のときと同様に,4桁の自然数 $N=1000a+100b+10c+d$ を考える。ここで
5桁の場合を考える。一万の位を $a$,千の位を $b$,百の位を $c$,十の位を $d$,一の位を $e$ とすると
結論としては,$N$ が11の倍数となるのは,$(奇数番目の数の和)-(偶数番目の数の和)$ が11の倍数のときである。
3の倍数のときと同様に,4桁の自然数 $N=1000a+100b+10c+d$ を考える。ここで
\begin{align*}
N&=11(91a+9b+c)+(-a+b-c+d)
\end{align*}
と変形すると,$11(91a+9b+c)$ が11の倍数であるから,$N$ が11の倍数となるのは,$-a+b-c+d$ が11の倍数のときである。N&=11(91a+9b+c)+(-a+b-c+d)
\end{align*}
5桁の場合を考える。一万の位を $a$,千の位を $b$,百の位を $c$,十の位を $d$,一の位を $e$ とすると
\begin{align*}
N=10000a+1000b+100c+10d+e
\end{align*}
と表すことができる。ここでN=10000a+1000b+100c+10d+e
\end{align*}
\begin{align*}
N&=11(909a+91b+9c+d)+(a-b+c-d+e)
\end{align*}
と変形すると,$11(909a+91b+9c+d)$ が11の倍数であるから,$N$ が11の倍数となるのは,$a-b+c-d+e$ が11の倍数のときである。N&=11(909a+91b+9c+d)+(a-b+c-d+e)
\end{align*}
結論としては,$N$ が11の倍数となるのは,$(奇数番目の数の和)-(偶数番目の数の和)$ が11の倍数のときである。
倍数判定法のまとめ
ヒロ
上で扱わなかったものについてもまとめて書くと次のようになる。
倍数判定法
- 2の倍数
一の位が0, 2, 4, 6, 8のいずれか。 - 3の倍数
各位の数の和が3の倍数 - 4の倍数
下二桁が4の倍数 - 5の倍数
一の位が0, 5のいずれかのときである。 - 6の倍数
2の倍数かつ3の倍数 - 7の倍数
判定法はあるが,実際に7で割ってみた方が速い - 8の倍数
下三桁が8の倍数 - 9の倍数
各位の数の和が3の倍数 - 10の倍数
一の位が0 - 11の倍数
奇数番目の数の和と偶数番目の数の和との差が11の倍数
大きい数を素因数分解するとき
ヒロ
倍数判定法を使っても,大きい数を素因数分解するときは苦労するため,有名な数については色々知っておくても良いだろう。
【有名な数】
$1001=7\times11\times13$ であるから,1001で割ることができた時点で,その数は7, 11, 13の倍数であることが分かる。また,1001で割れるかどうかは,3つの数字が繰り返されているかどうかで判定することもできる。
例えば,5桁の数98098の場合は
また,6桁の数123123の場合は123が繰り返し並んでいるから
他には,1が続く数の2乗については色々覚えている人もいるだろう。
$1001=7\times11\times13$ であるから,1001で割ることができた時点で,その数は7, 11, 13の倍数であることが分かる。また,1001で割れるかどうかは,3つの数字が繰り返されているかどうかで判定することもできる。
例えば,5桁の数98098の場合は
\begin{align*}
98098&=98000+98 \\[4pt]
&=98\times1001
\end{align*}
となり1001の倍数であることが分かる。98098&=98000+98 \\[4pt]
&=98\times1001
\end{align*}
また,6桁の数123123の場合は123が繰り返し並んでいるから
\begin{align*}
123123=123\times1001
\end{align*}
であることがすぐに分かる。4571567の場合は123123=123\times1001
\end{align*}
\begin{align*}
4571567&=4567000+4567 \\[4pt]
&=4567\times1001
\end{align*}
となり1001の倍数であることが分かるが,繰り上がりがあるため,「もしかして・・・」と疑ってみないと難しいだろう。4571567&=4567000+4567 \\[4pt]
&=4567\times1001
\end{align*}
他には,1が続く数の2乗については色々覚えている人もいるだろう。
\begin{align*}
&11^2=121 \\[4pt]
&111^2=12321 \\[4pt]
&1111^2=1234321 \\[4pt]
&11111^2=123454321 \\[4pt]
&111111^2=12345654321 \\[4pt]
&1111111^2=1234567654321 \\[4pt]
&11111111^2=123456787654321 \\[4pt]
&111111111^2=12345678987654321
\end{align*}
1が並ぶ個数が9以下であれば,1から1が並ぶ個数まで順に整数を並べてから1まで下がってくれば良いことが分かる。&11^2=121 \\[4pt]
&111^2=12321 \\[4pt]
&1111^2=1234321 \\[4pt]
&11111^2=123454321 \\[4pt]
&111111^2=12345654321 \\[4pt]
&1111111^2=1234567654321 \\[4pt]
&11111111^2=123456787654321 \\[4pt]
&111111111^2=12345678987654321
\end{align*}
素因数分解に関する問題
ヒロ
次の問題を解いてみよう。
2019年 福岡大・医11桁の自然数12345654321に含まれる素因数で一番大きい数は $\myhako$ である。
ヒロ
倍数判定法を活用して素因数分解をしよう。
【考え方と解答】
12345654321と1から6まで上がって1に戻ってきているから
各位の数の和が6で3の倍数であるから,111111は3の倍数である。
12345654321と1から6まで上がって1に戻ってきているから
\begin{align*}
12345654321=111111^2
\end{align*}
であることが分かる。したがって,111111を素因数分解する。12345654321=111111^2
\end{align*}
各位の数の和が6で3の倍数であるから,111111は3の倍数である。
\begin{align*}
111111=3\times37037
\end{align*}
37037は $37000+37$ と考えることで1001の倍数であることが分かる。111111=3\times37037
\end{align*}
\begin{align*}
37037&=37\times1001 \\[4pt]
&=37\times7\times11\times13
\end{align*}
したがって37037&=37\times1001 \\[4pt]
&=37\times7\times11\times13
\end{align*}
\begin{align*}
12345654321&=(3\times7\times11\times13\times37)^2 \\[4pt]
&=3^2\Cdota7^2\Cdota11^2\Cdota13^2\Cdota37^2
\end{align*}
となるから,12345654321に含まれる素因数で一番大きい数は37である。12345654321&=(3\times7\times11\times13\times37)^2 \\[4pt]
&=3^2\Cdota7^2\Cdota11^2\Cdota13^2\Cdota37^2
\end{align*}