ここでは重複を許して取る組合せについて説明します。
「同じものを繰り返し取っても良い」という条件によって,用意されている種類より多くの個数を取ることもできるようになります。
また,ここでは取り出した順番を考えずに,取り出した組合せだけを考えます。
このような問題に対して,公式をただ丸暗記するという方法で乗り切る人もいますが,意味が分からないものをずっと覚え続けるなんてことはできません。
考え方を理解して必要なときに必要な知識を出せるようにするのが賢明です。
重複組合せの総数を求める問題
次の問題を考えてみよう。
まずは間違った考えによる誤答を紹介しておこう。
5個取るのだから,1つずつ考えていけば良い。
1つ目はa, b, cの3通り。2つ目は重複して取って良いからa, b, cの3通り。同じようにして,3つ目,4つ目,5つ目もすべて3通りずつあるから,
3^5=81~通り
\end{align*}
残念ながら間違っている。今回は1列に並べるわけではなく,組合せの総数を求めないといけない。
この考え方だと,順番が異なるだけで実は同じ組み合わせだったというものが存在することになる。
5文字の並べ方が $5!$ 通りあるから「$5!$ で割れば良いんだ!」と考えると $\dfrac{81}{5!}$ となるが,これは1より小さい数であり話にならない。
次によく言うのは「元々3文字だから $3!$ で割るんじゃないですか?」だ。
この場合,$\dfrac{81}{3!}=\dfrac{27}{2}$ となり整数にならない。
意味も考えず適当な計算をするのは辞めよう。
それではいつまで経っても問題を解けるようにはならない。
正しい考え方を身に付けよう。
例えばaを3個,bを1個,cを1個取ったときの組合せをaaabcと書くことにする。ここで5個の○と2本の仕切り棒|を並べて
○○○|○|○
がaaabcを表すとみなす。つまり,5個の○を2本の仕切り棒で区切って左から順にa, b, cに置き換えることになる。○と|の並べ方が変わると,a, b, cの組合せも変わる。もっとちゃんと言うと,○と|の1つの並べ方と,a, b, cの組合せが1対1対応する。
よって,求める組み合わせの総数は
\dfrac{7!}{5!2!}=\dfrac{7\Cdot6}{2\Cdot1}=21~通り
\end{align*}
この総数は,7個の場所から仕切り棒|を置く2個の場所を選ぶ方法の総数に等しいから
\nCk{7}{2}=21
\end{align*}
重複組合せの総数を求める問題2
実際に定期テストで出題された次の問題を考えてみよう。
オレンジジュースを○として,7個の○を仕切り棒|2本で区切って左から順にA, B, Cがもらうと考える。例えば
○○○○|○|○○
はAが4本,Bが1本,Cが2本もらうことを表す。また
○○○○○||○○
はAが5本,Cが2本もらうことを表す。つまり,7個の○と2本の|の1つの並べ方に対して,オレンジジュースの1つの分け方が対応する。
よって,7個の○と2本の|の1つの並べ方を考えると,求める分け方は
\dfrac{9!}{7!2!}=\dfrac{9\Cdot8}{2\Cdot1}=36~通り
\end{align*}
重複組合せの総数を求める問題3
次の問題を考えてみよう。実際に定期テストで出題された問題だ。
11個の○を用意して,2本の仕切り棒で区切って左から順に $x,~y,~z$ とする。例えば
○○○○|○|○○○○○○
は $x=4,~y=1,~z=6$ を表す。また
○○○○○○○||○○○○
は $x=7,~y=0,~z=4$ を表す。11個の○と2本の|の並べ方と $x,~y,~z$ の値の組が1対1対応する。
よって,求める組数は
\dfrac{13!}{11!2!}=\dfrac{13\Cdot12}{2\Cdot1}=78~通り
\end{align*}
重複組合せの総数を求める問題4
次の問題を考えてみよう。これも定期テストで出題された問題。
次の手順で $a,~b,~c$ を決めることができる。
① 1~9の9個の数の中から重複を許して3つ取る。
② ①で取った3つの数字を大きい順に $a,~b,~c$ とする。ただし,等しいものは連続させて良い。
①の方法は3個の○と8本の仕切り棒|の並べ方を考えて $\nCk{11}{3}$ 通りあり,②の方法は1通りだから,求める整数 $n$ の個数は
\nCk{11}{3}\times1&=\dfrac{11\Cdot10\Cdot9}{3\Cdot2\Cdot1} \\[4pt]
&=165~個
\end{align*}
取る個数が少なくて仕切り棒が多いと「これで合ってるのだろうか?」と思ってしまう人もいるだろう。
今回の問題では次のように考えるのもアリ。
$a\geqq b\geqq c>0$ より $1\leqq c\leqq b\leqq a\leqq9$
このように1を加えることで等号を外すことができる。$b\leqq a$ より $b<a+1$ であるから,$b+1<a+2$ となる。よって,