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漸化式パターン4:分数型の解法

漸化式パターン4 数学IAIIB

漸化式パターン4は分数の形で表された漸化式です。
数学IAIIBで出題された場合は,誘導がある場合もあります。しかし,数学IIIで出題された場合は,ほとんど誘導がありませんし,極限の問題へとつながることも多いです。個人的な考え方ですが,誘導される問題であっても,誘導なしで解ける実力を付けることが,成績上位層に入るための1つの条件のような気がします。

それでは,問題を解いてみましょう。

2018年 東京薬科大$a_1=\dfrac{1}{2} , $$~a_{n+1}=\dfrac{a_n}{2-3a_n}$$~(n=1,2,3,\cdots)$ で定められた数列 $\{a_n\}$ がある。
(1) $b_n=\dfrac{1}{a_n}$ とおくと,$b_{n+1}=\myhako~b_n-\myhako$ が成り立つ。
(2) さらに $c_n=b_n-\myhako$ とおくと,数列 $\{c_n\}$ は初項 $-\myhako, $ 公比 $\myhako$ の等比数列である。
(3) 以上より数列 $\{b_n\}$ の一般項は $b_n=-\myhako^{\,n-1}+\myhako$ と表される。したがって,$a_n=\dfrac{1}{-\myhako^{\,n-1}+\myhako}$ である。
(4) 前問の数列 $\{b_n\}$ において,$\Sum{k=1}{n}b_k=-\myhako^{\,n}+\myhako~n+\myhako$ が成り立つ。
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逆数をとる

ヒロ
ヒロ

誘導通り,$\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおいて解こう。つまり逆数をとることがパターン4の解法となる。

与えられた漸化式の逆数をとると
\begin{align*}
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{2-3a_n}{a_n} \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=2\Cdota\dfrac{1}{a_n}-3 \\[4pt]
&b_{n+1}=2b_n-3
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

(1)の答えが出て,これでパターン2になったね。

(2)と(3)はこれを解けってことで,復習なのでササッと解きますよ。

特性方程式 ${\color{blue}x=2x-3}$ を解いて,${\color{blue}x=3}$
\begin{align*}
&b_{n+1}-3=2(b_n-3)
\end{align*}
と変形できるから,$b_n-3=c_n$ とおくと,数列 $\{c_n\}$ は公比2の等比数列となる。
$a_1=\dfrac{1}{2}$ より,$b_1=\dfrac{1}{a_1}=2$ だから,初項は
\begin{align*}
c_1=b_1-3=2-3=-1
\end{align*}
青字の部分は解答には書かなくてよい。

ここまでが(2)です。

$c_n=-2^{n-1}$ となるから,
\begin{align*}
&b_n-3=-2^{n-1} \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_n}=-2^{n-1}+3 \\[4pt]
&a_n=\dfrac{1}{-2^{n-1}+3}
\end{align*}

これで(3)も終わりました。最後の(4)はシグマ計算ですね。

\begin{align*}
\Sum{k=1}{n}b_k&=\Sum{k=1}{n}(-2^{k-1}+3) \\[4pt]
&=-\dfrac{2^n-1}{2-1}+3n \\[4pt]
&=-2^n+3n+1
\end{align*}

数学IIIで出題されたときの注意点

ヒロ
ヒロ

数学IIIで出題された場合は,もう少し細かい部分に拘ろう。自分で $a_n$ を分母にもってくるときは,$a_n=0$ となる可能性があるかどうかを考えよう。

ヒロ
ヒロ

もし,$a_n=0$ となるような自然数 $n$ が存在した場合,その時点で $b_n$ は計算不能となってしまうね。だから,$a_n=0$ となるような自然数 $n$ が存在しないことを示しておこう。

ヒロ
ヒロ

これは数学的帰納法で証明すれば良いんだけど,そこまでガッツリ書かなくても良いよ。

漸化式より,$a_n\neq0$ のとき,$a_{n+1}\neq0$ が成り立つ。
$a_1=\dfrac{1}{2}\neq0$ であるから,すべての自然数 $n$ に対して,$a_n\neq0$ が成り立つ。
ヒロ
ヒロ

これくらい書いておけば十分だね。

【もう少し詳しく説明】
漸化式から,第 $n$ 項 $a_n$ が0でなければ,その次の第 $n+1$ 項も0でないことが言える。これより,初項が0でないから,その次の第2項が0でない。第2項が0でないことから,第3項も0でない。
このように次々と,その次の項が0でないことが言える。つまり,数列 $\{a_n\}$ のすべての項が0でないことが言えるということ。
ヒロ
ヒロ

実際の試験で,これを書かないと減点されるかどうかは採点基準によるから分からないけど,ちゃんと調べてますよってアピールすることは重要だと思うよ。

$a_{n+1}=\dfrac{pa_n}{f(n)a_n+q}$$~(pq\neq0)$ 型の漸化式の解法

ヒロ
ヒロ

それでは解法をまとめておこう。パターン4の漸化式は次の手順で解こう。

漸化式パターン4の解法
  1. $a_n\neq0$ を簡単に証明する。(逆数をとるように誘導されていれば不要)
  2. 両辺の逆数をとる。
  3. $\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおくと,$b_{n+1}=\dfrac{q}{p}b_n+\dfrac{f(n)}{p}$ となる。
  4. $p=q$ なら階差型,$p\neq q$ ならパターン3になるから,対応する解法を思い出す。
  5. $b_n$ を求めて,一般項 $a_n=\dfrac{1}{b_n}$ を求める。

漸化式パターン4の練習

ヒロ
ヒロ

以上の解法を踏まえて練習しておこう。

2017年 昭和薬科大$a_1=\dfrac{1}{4},~$$a_{n+1}=\dfrac{a_n}{6a_n+4}$$~(n=1,2,3,\cdots)$ により数列 $\{a_n\}$ を定める。
(1) $b_n=\dfrac{1}{a_n}$ とおくとき,$b_{n+1}$ と $b_n$ の関係式を求めよ。
(2) 数列 $\{a_n\}$ の第 $n$ 項 $a_n$ を求めよ。
(3) 数列 $\{b_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めよ。
ヒロ
ヒロ

(1)は誘導から逆数をとれば良いことが分かるね。

【(1)の解答】
与えられた漸化式の両辺の逆数をとると
\begin{align*}
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{6a_n+4}{a_n} \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=4\Cdota\dfrac{1}{a_n}+6 \\[4pt]
&b_{n+1}=4b_n+6
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

これでパターン2になった。特性方程式を解いて一般項を求めよう。

特性方程式 $x=4x+6$ より$x=-2$
【(2)の解答】
(1)の結果より,
\begin{align*}
&b_{n+1}+2=4(b_n+2)
\end{align*}
となるから,数列 $\{b_n+2\}$ は公比4の等比数列である。
$a_1=\dfrac{1}{4}$ より,$b_1=\dfrac{1}{a_1}=4$ だから
\begin{align*}
&b_n+2=(b_1+2)\Cdota4^{n-1} \\[4pt]
&b_n=6\Cdota4^{n-1}-2 \\[4pt]
&a_n=\dfrac{1}{6\Cdot4^{n-1}-2}
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

(3)はシグマ計算するだけだね。

【(3)の解答】
\begin{align*}
S_n&=\Sum{k=1}{n}b_k \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}(6\Cdota4^{k-1}-2) \\[4pt]
&=\dfrac{6(4^n-1)}{4-1}-2n \\[4pt]
&=2(4^n-1)-2n \\[4pt]
&=2(4^n-n-1)
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

もう1問やっておこう。

2019年 横浜市大漸化式
\begin{align*}
a_{n+1}=\dfrac{a_n}{2na_n+3},~a_1=1
\end{align*}
で定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を $n$ の式で表しなさい。ただし,$n$ は1以上の自然数とします。
ヒロ
ヒロ

解いた後で答え合わせをしよう。

漸化式より $a_n>0$ のとき,$a_{n+1}>0$ であり,$a_1>0$ だから,すべての自然数 $n$ に対して,$a_n>0$ が成り立つ。
漸化式の両辺の逆数をとると
\begin{align*}
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{2na_n+3}{a_n} \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=3\Cdota\dfrac{1}{a_n}+2n
\end{align*}
$\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおくと
\begin{align*}
b_{n+1}=3b_n+2n,~b_1=\dfrac{1}{a_1}=1
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

ここから解法が2つに分かれるよ。どちらの解法でも解けるようにしておこう。まずは等比型に変形する解法から。

【等比型に変形する解法】
この漸化式が
\begin{align*}
b_{n+1}+\alpha(n+1)+\beta=3(b_n+\alpha n+\beta)
\end{align*}
と変形できたとする。これを整理すると
\begin{align*}
b_{n+1}=3b_n+2\alpha n-\alpha+2\beta
\end{align*}
となるから,元の漸化式と比較して
\begin{align*}
&\begin{cases}
2\alpha=2 \\[4pt]
-\alpha+2\beta=0
\end{cases} \\[4pt]
&\alpha=1,~\beta=\dfrac{1}{2}
\end{align*}
よって,
\begin{align*}
b_{n+1}=(n+1)+\dfrac{1}{2}=3\left(b_n+n+\dfrac{1}{2}\right)
\end{align*}
数列 $\left\{b_n+n+\dfrac{1}{2}\right\}$ は公比3の等比数列であるから
\begin{align*}
&b_n+n+\dfrac{1}{2}=\left(b_1+1+\dfrac{1}{2}\right)\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&b_n=\dfrac{5}{2}\Cdota3^{n-1}-n-\dfrac{1}{2} \\[4pt]
&b_n=\dfrac{5\Cdot3^{n-1}-2n-1}{2}
\end{align*}
$a_n=\dfrac{1}{b_n}$ より
\begin{align*}
a_n=\dfrac{2}{5\Cdot3^{n-1}-2n-1}
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

次は階差型に変形する解法。

【階差型に変形する解法】
$b_{n+2}=3b_{n+1}+2(n+1)$ が成り立つから,辺々を引いて
\begin{align*}
&b_{n+2}-b_{n+1}=3(b_{n+1}-b_n)+2
\end{align*}
$b_{n+1}-b_n=c_n$ とおくと,
\begin{align*}
&c_{n+1}=3c_n+2
\end{align*}
特性方程式 ${\color{blue}x=3x+2}$ を解いて,${\color{blue}x=-1}$
これを変形して
\begin{align*}
&c_{n+1}+1=3(c_n+1)
\end{align*}
ここで,
\begin{align*}
a_2=\dfrac{a_1}{2a_1+3}=\dfrac{1}{2+3}=\dfrac{1}{5}
\end{align*}
であるから,$b_2=\dfrac{1}{a_2}=5$
よって,$c_1=b_2-b_1=5-1=4$ であり,数列 $\{c_n+1\}$ は公比3の等比数列であるから
\begin{align*}
&c_n+1=(c_1+1)\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&c_n=5\Cdota3^{n-1}-1
\end{align*}
数列 $\{b_n\}$ の階差数列の一般項が $c_n$ であるから,$n\geqq2$ のとき
\begin{align*}
b_n&=b_1+\Sum{k=1}{n-1}c_k \\[4pt]
&=1+\Sum{k=1}{n-1}(5\Cdota3^{k-1}-1) \\[4pt]
&=1+\dfrac{5(3^{n-1}-1)}{3-1}-(n-1) \\[4pt]
&=\dfrac{5\Cdot3^{n-1}-2n-1}{2}
\end{align*}
これは $n=1$ のときも成り立つ。$a_n=\dfrac{1}{b_n}$ より
\begin{align*}
a_n=\dfrac{2}{5\Cdot3^{n-1}-2n-1}
\end{align*}
青字の部分は解答に書かなくても良い。

まとめ

ヒロ
ヒロ

$a_{n+1}$ が $a_n$ の分数式で表されるパターン4の漸化式の解法は「逆数をとる」だけなので楽に覚えることができる。誘導がなくても解けるように,処理の仕方を覚えておこう。

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