「King Property」と呼ばれる置換方法を利用した定積分の有名問題を解説します。
誘導がある入試問題では,与えられている誘導にしっかりと乗ることが重要です。
しかし,問題によっては,いつもは頼りにしている誘導が付いていないかもしれません。
そういう状態も想定して,普段から誘導がなくても解けるように練習しておくことが大切です。
有名な定積分の問題
ヒロ
それでは次の問題を解いてみよう。
定積分を求める有名問題
(1) $f(x)$ が $0\leqq x\leqq\pi$で連続な関数であるとき,
\begin{align*} \dint{0}{\pi}xf(\sin x)\;dx=\dfrac{\pi}{2}\dint{0}{\pi}f(\sin x)\;dx \end{align*}
が成り立つことを示せ。(2) (1)を利用して $\dint{0}{\pi}\dfrac{x\sin x}{1+\cos^2x}\;dx$ を求めよ。
(1)の考え方と解答
ヒロ
定積分に関する証明問題で,積分区間が変わってないのに被積分関数が変わっているね。
ヒロ
そのような場合は次のポイントを利用しよう。
積分区間を変えずに被積分関数を変える方法$\dint{a}{b}f(x)\;dx$ において,$t=a+b-x$ と置換すると
この置換方法は「King Property(キングプロパティ)」と呼ばれるテクニックである。
\begin{align*}
\dint{a}{b}f(x)\;dx&=\dint{b}{a}f(a+b-t)\Cdota(-1)\;dt \\[4pt]
&=\dint{a}{b}f(a+b-x)\;dx
\end{align*}
となり,積分区間を変えずに,被積分関数だけを変えることができる。\dint{a}{b}f(x)\;dx&=\dint{b}{a}f(a+b-t)\Cdota(-1)\;dt \\[4pt]
&=\dint{a}{b}f(a+b-x)\;dx
\end{align*}
この置換方法は「King Property(キングプロパティ)」と呼ばれるテクニックである。
ヒロ
今回の場合は $\pi-x=t$ と置くと良さそうだね。
【(1)の解答】
$\pi-x=t$ とおくと,
$\pi-x=t$ とおくと,
\begin{align*}
\dint{0}{\pi}xf(\sin x)\;dx
&=\dint{\pi}{0}(\pi-t)
f\left(\sin(\pi-t)\right)\Cdota(-1)\;dt \\[4pt]
&=\dint{0}{\pi}(\pi-t)f(\sin t)\;dt \\[4pt]
&=\pi\dint{0}{\pi}f(\sin t)\;dt-\dint{0}{\pi}tf(\sin t)\;dt \\
\dint{0}{\pi}xf(\sin x)\;dx&=\dfrac{\pi}{2}\dint{0}{\pi}f(\sin x)\;dx
\end{align*}
\dint{0}{\pi}xf(\sin x)\;dx
&=\dint{\pi}{0}(\pi-t)
f\left(\sin(\pi-t)\right)\Cdota(-1)\;dt \\[4pt]
&=\dint{0}{\pi}(\pi-t)f(\sin t)\;dt \\[4pt]
&=\pi\dint{0}{\pi}f(\sin t)\;dt-\dint{0}{\pi}tf(\sin t)\;dt \\
\dint{0}{\pi}xf(\sin x)\;dx&=\dfrac{\pi}{2}\dint{0}{\pi}f(\sin x)\;dx
\end{align*}
(2)の考え方と解答
(2) (1)を利用して $\dint{0}{\pi}\dfrac{x\sin x}{1+\cos^2x}\;dx$ を求めよ。
ヒロ
「(1)を利用して」という誘導があるから,それに従おう。
【(2)の解答】
$\cos^2x=1-\sin^2x$ であるから(1)を利用すると
$\cos^2x=1-\sin^2x$ であるから(1)を利用すると
\begin{align*} \dint{0}{\pi}\dfrac{x\sin x}{1+\cos^2x}\;dx =\dfrac{\pi}{2}\dint{0}{\pi}\dfrac{\sin x}{1+\cos^2x}\;dx \end{align*}
$\cos x=t$ とおくと,\begin{align*} \begin{array}{c|ccc} x & 0 & \to & \pi \\\hline t & 1 & \to & -1 \end{array},~~-\sin x\;dx=dt \end{align*}
となるから \begin{align*} \dint{0}{\pi}\dfrac{\sin x}{1+\cos^2x}\;dx &=\dint{1}{-1}\dfrac{-1}{1+t^2}\;dt \\[4pt] &=\dint{-1}{1}\dfrac{1}{1+t^2}\;dt \end{align*}
$t=\tan\theta$ とおくと,$dt=\dfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta$ だから, \begin{align*} \dint{-1}{1}\dfrac{1}{1+t^2}\;dt &=\dint{-\frac{\pi}{4}}{\frac{\pi}{4}} \dfrac{1}{1+\tan^2\theta}\Cdot\dfrac{1}{\cos^2\theta}\;d\theta \\[4pt] &=\dint{-\frac{\pi}{4}}{\frac{\pi}{4}}\;d\theta \\[4pt] &=\tint{\theta}{-\frac{\pi}{4}}{\frac{\pi}{4}} =\dfrac{\pi}{2} \end{align*}
よって, \begin{align*} \dint{0}{\pi}\dfrac{x\sin x}{1+\cos^2x}\;dx=\dfrac{\pi^2}{4} \end{align*}