ここでは三角比を利用して様々な問題を解いてみましょう。
今回は正弦定理・余弦定理を使わずに解きます。
サイン・コサイン・タンジェントの意味を考えて解きましょう。
辺の長さを三角比を利用して表す

ヒロ
辺の長さを三角比を用いて表すことができるようになろう。
【辺の長さを三角比を用いて表す方法】
次のような直角三角形ABCを考える。

サイン・コサイン・タンジェントの値は
次のような直角三角形ABCを考える。

サイン・コサイン・タンジェントの値は
sinθ=bccosθ=actanθ=ba
であり,これらの式よりa=ccosθb=csinθ=atanθ
を導くことができる。
ヒロ
元々の三角比の式から変形して a, b を θ を用いて表したが,直接書けるようにしよう。

ヒロ
個人的には,毎回「sinθ=bc の両辺に c をかけることで,b=csinθ」と変形するのでは「比」を正しく理解できていないように感じる。

ヒロ
次の問題の解き方によって,三角比を利用する考え方がスムーズに吸収できるかどうかが分かるかもしれない。
問題
問題次の直角三角形ABCを考える。丸囲み数字は辺の比を表すものとする。

(1) AB=15 のとき,AC, BCの長さを求めよ。
(2) BC=5 のとき,AC, ABの長さを求めよ。

(1) AB=15 のとき,AC, BCの長さを求めよ。
(2) BC=5 のとき,AC, ABの長さを求めよ。
【(1)の考え方と解答】
真面目(?)に比が等しいことを考えて式を立てて,ACを求めると次のようになる。
この問題の場合は,AB:AC=5:3 から「ACの長さはABの 35 である」とスムーズに読み替えることができるようにしよう。この考え方ができるようになると,
ここで 35 は AC:AB の比の値を表すが,これは sinθ であるから,
BCの長さもABの長さの 45 になることがすぐに分かる。この 45 は角 θ を用いて cosθ と表すことができるから,次のように,BCの長さを求めることができる。
真面目(?)に比が等しいことを考えて式を立てて,ACを求めると次のようになる。
AB:AC=5:3
であるから5AC=3ABAC=35AB=35×15=9
この方法でもACの長さを求めることができるため,この方法でも良いのだが,小学校で学んだはずの「比」や「割合」を利用するべきである。この問題の場合は,AB:AC=5:3 から「ACの長さはABの 35 である」とスムーズに読み替えることができるようにしよう。この考え方ができるようになると,
AC=AB×35=15×35=12
となり,比の式を立てることなくACの長さを直接求めることができるようになる。ここで 35 は AC:AB の比の値を表すが,これは sinθ であるから,
AC=ABsinθ
となる。「比」や「割合」をしっかりと理解・活用している人は,三角比を学ぶ上でスタート時点で既に有利になっている。BCの長さもABの長さの 45 になることがすぐに分かる。この 45 は角 θ を用いて cosθ と表すことができるから,次のように,BCの長さを求めることができる。
BC=ABcosθ=15×45=12
(2) BC=5 のとき,AC, ABの長さを求めよ。
【(2)の考え方と解答】
BCの長さからACの長さを求めるから,高さ底辺 を掛ければよい。

これは tanθ であるから,
また,ABの長さを求める場合は,斜辺底辺 を掛ければよい。あえて三角比を用いて表すと,次のようにABの長さを求めることができる。
BCの長さからACの長さを求めるから,高さ底辺 を掛ければよい。

これは tanθ であるから,
AC=BCtanθ=5×34=154
となる。また,ABの長さを求める場合は,斜辺底辺 を掛ければよい。あえて三角比を用いて表すと,次のようにABの長さを求めることができる。
AB=BC×1cosθ=5×54=254

ヒロ
斜辺から高さを求めたり,斜辺から底辺を求める計算は頻出なので,比の式を経由せずに,三角比を用いて表せるようにしておこう。
辺の長さを求める問題
問題次の三角形において a を求めよ。
(1)

(2)

(1)

(2)

【(1)の考え方と解答】
60°が1つの角になるように,補助線を引いて直角三角形を作ろう。そのために点Cから辺ABに垂線CHを下ろすと,∠ACH=30°, ∠BCH=45° となる。

△ACH に着目すると

△BCH に着目して
60°が1つの角になるように,補助線を引いて直角三角形を作ろう。そのために点Cから辺ABに垂線CHを下ろすと,∠ACH=30°, ∠BCH=45° となる。

△ACH に着目すると
AH=ACcos60°=2×12=1CH=ACsin60°=2×√32=√3

△BCH に着目して
BC=CH×1cos45°=√3×√2=√6
よって,a=√6【(2)の考え方と解答】
∠ACB が90°かどうかは分からない。推測して a を求める方法もあるが,今回は推測せずに考える。
点Cから辺ABに垂線CHを下ろす。

△ACH に着目して
∠ACB が90°かどうかは分からない。推測して a を求める方法もあるが,今回は推測せずに考える。
点Cから辺ABに垂線CHを下ろす。

△ACH に着目して
CH=ACsin30°=3√3×12=3√32AH=ACcos30°=3√3×√32=92
これよりBH=AB−AH=6−92=32
△BCH に着目すると三平方の定理よりBC=√BH2+CH2=√(32)2+(3√32)2=√94+274=√9=3

ヒロ
この結果から,三角形ABCは実は三角定規の直角三角形だったことが分かる。
辺の長さを求める問題2
問題図のような三角形ABCにおいて,AB=4, BC=3, ∠ADC=60°, ∠ABC=θ であるとき,以下の問いに答えよ。

(1) sinθ, tanθ の値を求めよ。
(2) 線分AD,CDの長さを求めよ。

(1) sinθ, tanθ の値を求めよ。
(2) 線分AD,CDの長さを求めよ。
【(1)の考え方と解答】
△ABC において三平方の定理を適用して
△ABC において三平方の定理を適用して
AC=√42−32=√7
となるからsinθ=√74cosθ=34tanθ=√73
(2) 線分AD,CDの長さを求めよ。
【(2)の考え方と解答】
△ACD に着目して考える。

AC=ADsin60° であるから
△ACD に着目して考える。

AC=ADsin60° であるから
AD=ACsin60°=√7×2√3=2√213
また,AC=CDtan60° よりCD=ACtan60°=√7√3=√213
辺の長さを求める問題3
問題長方形ABCDにおいて,AB=a, ∠ADB=θ とする。Aから対角線BDに下ろした垂線をAHとするとき,次の線分の長さを,θ の三角比と a を用いて表せ。

(1) AD
(2) BD
(3) AH

(1) AD
(2) BD
(3) AH
【(1)の考え方と解答】
いま求めたいのはADの長さだから,ADを含む三角形を考える。その中で,既に長さが分かっているABと θ を含む三角形を探すと △ABD が見つかる。したがって
いま求めたいのはADの長さだから,ADを含む三角形を考える。その中で,既に長さが分かっているABと θ を含む三角形を探すと △ABD が見つかる。したがって
ADtanθ=ABAD=ABtanθAD=atanθ
【(2)の考え方と解答】
△ABD に着目して
△ABD に着目して
BDsinθ=ABBD=ABsinθBD=asinθ
【(3)の考え方と解答】
△ABH に着目すると,∠BAH=θ である。

△ABH に着目すると,∠BAH=θ である。

AH=ABcosθ=acosθ

ヒロ
∠BAH=θ であることがすぐに分かるようにしよう。