ここでは,分数式の和の求め方を説明します。分数式の和を求める場合,教科書などに載っているシグマ公式を使えないため,その和を求めるには工夫が必要となります。初見では戸惑ってしまうようなものもあるため,色んなタイプに触れて慣れておきましょう。
計算方法を忘れている人は次のようにテキトウに計算してしまう人がいるけど,これは絶対にやってはいけない。
\sum_{k=1}^n\dfrac{1}{k(k+1)}=\dfrac{\Sum{k=1}n1}{\Sum{k=1}nk(k+1)}
\end{align*}
これを数字を書き並べる方法で表すとこうなる。
\dfrac{1}{1\Cdot2}+\dfrac{1}{2\Cdot3}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+1)}
=\dfrac{1+1+\cdots+1}{1\Cdot2+2\Cdot3+\cdots+n(n+1)}
\end{align*}
分母どうし,分子どうしを足してしまってるんですね。
そうだね。少し考えれば,こんな変形はできないことが分かるんだから,テキトウにやるのはやめよう。
分数を差で表す
こんな間違いをしないためにも,正しい計算方法を身に付けよう。シグマ公式を使えないため,和を求めるには工夫が必要となる。その工夫の仕方を覚えよう。
具体的にどうするんですか?
こんな風に考えよう。
\dfrac{1}{ab}=\dfrac{1}{b-a}\left(\dfrac{1}{a}-\dfrac{1}{b}\right)
\end{align*}
この考え方をすることで,分母が素数でなければ,どんな分数でも2つの分数の差で表すことができるよ。まずは簡単な分数でやってみよう。
\dfrac{1}{6}=\dfrac{1}{2\Cdot3}=\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{3}
\end{align*}
分母が2つの数の積になっているとき,分母が小さい方を前にもってきて差の形にして,2数の差で割るだけだね。
分母が小さい方が逆数は大きくなりますからね。あと,2数の差が1だと引くだけで良いんですね。
そうだね。次に $\dfrac{1}{12}$ を2つの分数の差で表してみよう。
$12=3\times4$ と考えた場合は次のようになる。
\dfrac{1}{12}=\dfrac{1}{3\Cdot4}=\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}
\end{align*}
$12=2\times6$ と考えた場合は次のようになる。
\dfrac{1}{12}&=\dfrac{1}{2\Cdot6} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{6}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{8}-\dfrac{1}{24}
\end{align*}
分数式を差で表す
じゃあ次は数式で同じように考えよう。
$\dfrac{1}{k(k+1)}$ を差の形で表してみて?
$\dfrac{1}{k(k+1)}$ の場合は,分母が $k$ と $k+1$ で差が1だから引くだけでできますね。
\dfrac{1}{k(k+1)}=\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}
\end{align*}
出来ました!
でも,なんで差の形にすれば和を求められるんですか?
実際に書き並べて和を求めよう
実際に書き並べれば分かるよ。
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k(k+1)} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}\right) \\[4pt]
&={\color[named]{Blue}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k}}-{\color[named]{Green}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k+1}} \\[4pt]
&={\color[named]{Blue}{1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\cdots+\dfrac{1}{n-1}
+\dfrac{1}{n}}} \\[4pt]
&\hspace{11pt}-\left({\color[named]{Green}\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\cdots+\dfrac{1}{n-1}+\dfrac{1}{n}+\dfrac{1}{n+1}}\right) \\[4pt]
&=1-\dfrac{1}{n+1} \\[4pt]
&=\dfrac{n}{n+1}
\end{align*}
横に並べて書く人が多いけど,縦に書く方法を勧めるよ。
どこが消えるか分かりやすいですね。青と緑はどちらも $n$ 個の数の和で,1つずれているだけだから最初と最後が残るんですね。
差が1ではない場合
では,次の問題をやってみよう。
やってみます!
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k(k+2)} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+2}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left({\color[named]{Blue}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k}}-{\color[named]{Green}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k+2}}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left\{{\color[named]{Blue}{1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4}+\cdots+\dfrac{1}{n-1}+\dfrac{1}{n}}}\right. \\[4pt]
&\hspace{49pt}-\left.\left({\color[named]{Green}\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{4}+\cdots+\dfrac{1}{n-1}+\dfrac{1}{n}+\dfrac{1}{n+1}+\dfrac{1}{n+2}}\right)\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left(1+\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{n+1}-\dfrac{1}{n+2}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{3(n+1)(n+2)-2(n+2)-2(n+1)}{4(n+1)(n+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{3n^2+5n}{4(n+1)(n+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{n(3n+5)}{4(n+1)(n+2)}
\end{align*}
分母の2数の差が2だから2つずれて,青と緑はどちらも $n$ 個だから,最初と最後が2個ずつ残るんですね。
じゃあ次いってみよう。
とりあえず分母が小さい方から引いてみるか・・・
\dfrac{1}{4k-3}-\dfrac{1}{4k+1}&=\dfrac{(4k+1)-(4k-3)}{(4k-3)(4k+1)} \\[4pt]
&=\dfrac{4}{(4k-3)(4k+1)}
\end{align*}
そういうことか~
いいね!ちょっとした確認の計算をするのは重要だね。
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{(4k-3)(4k+1)} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{1}{4k-3}-\dfrac{1}{4k+1}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{4}\left({\color[named]{Blue}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{4k-3}}-{\color[named]{Green}\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{4k+1}}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{4}\left\{{\color[named]{Blue}{1+\dfrac{1}{5}+\dfrac{1}{9}+\cdots+\dfrac{1}{4n-3}}}\right. \\[4pt]
&\hspace{26.5pt}-\left.\left({\color[named]{Green}\dfrac{1}{5}+\dfrac{1}{9}+\cdots+\dfrac{1}{4n-3}+\dfrac{1}{4n+1}}\right)\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{4}\left(1-\dfrac{1}{4n+1}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{(4n+1)-1}{4(4n+1)} \\[4pt]
&=\dfrac{n}{4n+1}
\end{align*}
最初は分母の2数が4も離れてるので,4つずつ残るのかと思ってしまいました。
$k$ の係数が4だから,4離れてても,$k$ としては1しか違わないんですね。
そうだね。$4k-3$ の $k$ を $k+1$ にすると,$4k+1$ になるからね。だから最初と最後の1つずつが残るってこと。
段々慣れてきました。
分母の因数が3つのとき
じゃあもう少し難しくするよ。
これは・・・差の形にと言われても・・・
じゃあヒントとして,まずは次の式を計算してみよう。
これって通分するだけですよね。
&\dfrac{1}{k(k+1)}-\dfrac{1}{(k+1)(k+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{(k+2)-k}{k(k+1)(k+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{2}{k(k+1)(k+2)}
\end{align*}
なるほど。そういうことですか!
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k(k+1)(k+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\Sum{k=1}{n}\left\{\dfrac{1}{k(k+1)}-\dfrac{1}{(k+1)(k+2)}\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left({\color[named]{Blue}{\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k(k+1)}}}-{\color[named]{Green}{\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{(k+1)(k+2)}}}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left({\color[named]{Blue}{\dfrac{1}{1\Cdota2}+\dfrac{1}{2\Cdota3}+\dfrac{1}{3\Cdota4}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+1)}}}\right. \\[4pt]
&\hspace{46pt}\left.-\left\{{\color[named]{Green}{\dfrac{1}{2\Cdota3}+\dfrac{1}{3\Cdota4}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+1)}+\dfrac{1}{(n+1)(n+2)}}}\right\}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left\{\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{(n+1)(n+2)}\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{(n+1)(n+2)-2}{4(n+1)(n+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{n^2+3n}{4(n+1)(n+2)} \\[4pt]
&=\dfrac{n(n+3)}{4(n+1)(n+2)}
\end{align*}
$\Sum{k=1}{n}f(k)=\Sum{k=1}{n}\bigl(g(k+1)-g(k)\bigr)$ と差の形で表すことができれば,$f(k)$ がどんな式であっても,その和を求めることができるっていうことだね。
色々な変形に慣れよう
次はちょっとあまり見ない問題。
え・・・これも差の形にするんですよね・・・?
とりあえず,分母を決めて $k$ をずらして引いてみよう。
分母に階乗をもってこないと話にならないから・・・
\dfrac{1}{k!}-\dfrac{1}{(k+1)!}&=\dfrac{(k+1)-1}{(k+1)!} \\[4pt]
&=\dfrac{k}{(k+1)!}
\end{align*}
うまくいくように作られてるんですね。
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{k}{(k+1)!} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\left(\dfrac{1}{k!}-\dfrac{1}{(k+1)!}\right) \\[4pt]
&={\color[named]{Blue}{\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{k!}}}-{\color[named]{Green}{\Sum{k=1}{n}\dfrac{1}{(k+1)!}}} \\[4pt]
&={\color[named]{Blue}{1+\dfrac{1}{2!}+\dfrac{1}{3!}+\cdots+\dfrac{1}{(n-1)!}
+\dfrac{1}{n!}}} \\[4pt]
&\hspace{11pt}-\left({\color[named]{Green}\dfrac{1}{2!}+\dfrac{1}{3!}+\cdots+\dfrac{1}{(n-1)!}+\dfrac{1}{n!}+\dfrac{1}{(n+1)!}}\right) \\[4pt]
&=1-\dfrac{1}{(n+1)!}
\end{align*}
出来ました!
どんどん練習しよう。
この分数式は分母と分子がともに2次式だから,次数下げから・・・?
\dfrac{(3k+1)(3k+2)}{3k(k+1)}&=\dfrac{9k^2+9x+2}{3k^2+3k} \\[4pt]
&=3+\dfrac{2}{3k^2+3k} \\[4pt]
&=3+\dfrac{2}{3k(k+1)}
\end{align*}
次数下げで正解でしたね。あとは最初の問題と同じです。
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{(3k+1)(3k+2)}{3k(k+1)} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\left\{3+\dfrac{2}{3k(k+1)}\right\} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\left\{3+\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}\right)\right\} \\[4pt]
&=3n+\dfrac{2}{3}\left(1-\dfrac{1}{n+1}\right) \\[4pt]
&=3n+\dfrac{2n}{3(n+1)}
\end{align*}
これは,$\sqrt{a}=\bigl(\sqrt[4]{a}\bigr)^2$ がヒントだよ。
やってみます。
&\Sum{k=1}{n}\dfrac{\sqrt{k+1}-\sqrt{k}}{\sqrt[4]{k+1}+\sqrt[4]{k}} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\dfrac{\bigr(\sqrt[4]{k+1}\bigr)^2-\bigl(\sqrt[4]{k}\bigr)^2}{\sqrt[4]{k+1}+\sqrt[4]{k}} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\dfrac{\bigl(\sqrt[4]{k+1}+\sqrt[4]{k}\bigr)\bigl(\sqrt[4]{k+1}-\sqrt[4]{k}\bigr)}{\sqrt[4]{k+1}+\sqrt[4]{k}} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n}\bigl(\sqrt[4]{k+1}-\sqrt[4]{k}\bigr) \\[4pt]
&={\color[named]{Blue}{\Sum{k=1}{n}\sqrt[4]{k+1}}}-{\color[named]{Green}{\Sum{k=1}{n}\sqrt[4]{k}}} \\[4pt]
&=\hspace{41pt}{\color[named]{Blue}{\sqrt[4]{2}+\sqrt[4]{3}+\cdots+\sqrt[4]{n}+\sqrt[4]{n+1}}} \\[4pt]
&\hspace{10pt}-\left({\color[named]{Green}\sqrt[4]{1}+\sqrt[4]{2}+\sqrt[4]{3}+\cdots+\sqrt[4]{n}}\right) \\[4pt]
&=\sqrt[4]{n+1}-\sqrt[4]{1} \\[4pt]
&=\sqrt[4]{n+1}-1
\end{align*}
累乗根の計算にも慣れておかないとダメですね。
まとめ
$\Sum{}{}(分数式)$ を求めるときは,分数式を差の形で表そう。