ここでは定点を通る直線の方程式と恒等式について説明します。
前に扱った定点を通る直線では,直線の方程式が基本形で表されていて,傾きが変化するだけだったため,比較的簡単でした。
今回扱う直線の方程式は一般形で表されているため,少し難しくなります。
直線が定点を通ることと恒等式の考え方を結び付けられるようにしましょう。
定点を通る直線と恒等式の関係
ヒロ
「定点を通る直線の方程式」の記事でも扱った直線 $y=ax$ を考える。
直線 $y=ax$ は $a$ の値にかかわらず,原点を通る直線である。ここで,別の捉え方を考える。この直線の方程式を一般形で表すと
\begin{align*}
ax-y=0~\cdots\cdots①
\end{align*}
となる。①を $a$ についての等式とみて,$a$ の値にかかわらず成り立つような $x,~y$ を考える。これは①を $a$ についての恒等式とみることになるからax-y=0~\cdots\cdots①
\end{align*}
\begin{align*}
x=0~~かつ~~-y=0
\end{align*}
すなわち,$(x,~y)=(0,~0)$ のときに$a$ の値にかかわらず①は成り立つ。x=0~~かつ~~-y=0
\end{align*}
ヒロ
このように恒等式の考え方を利用して,直線が通る定点の座標を求めることができる。
ヒロ
まとめると次のようになる。
定点を通る直線と恒等式 直線 $k(ax+by+c)+(px+qy+r)=0~\cdots\cdots①$ が $k$ の値にかかわらず定点Pを通るとする。$k$ の値にかかわらず①が成り立つのは
\begin{align*}
\begin{cases}
ax+by+c=0~\cdots\cdots② \\[4pt]
px+qy+r=0~\cdots\cdots③
\end{cases}
\end{align*}
が成り立つときである。ここで,定点Pは2直線②,③の交点であることが分かる。これは「2直線の交点を通る直線の方程式」を理解していれば簡単に理解できる。\begin{cases}
ax+by+c=0~\cdots\cdots② \\[4pt]
px+qy+r=0~\cdots\cdots③
\end{cases}
\end{align*}
2直線の交点を通る直線の方程式
2013年 京都薬科大直線
\begin{align*}
(1-k)x+(1+k)y-k-3=0
\end{align*}
は定数 $k$ の値によらず定点Aを通る。このとき,定点Aの座標は,$\left(\myhako,~\myhako\right)$ である。(1-k)x+(1+k)y-k-3=0
\end{align*}
【考え方と解答】
与えられた直線の方程式を $k$ について整理すると
よって,求める点Aの座標は $(1,~2)$
与えられた直線の方程式を $k$ について整理すると
\begin{align*}
(-x+y-1)k+(x+y-3)=0
\end{align*}
この等式が $k$ についての恒等式となるから(-x+y-1)k+(x+y-3)=0
\end{align*}
\begin{align*}
\begin{cases}
-x+y-1=0 \\[4pt]
x+y-3=0
\end{cases}
\end{align*}
これを解いて,$x=1,~y=2$\begin{cases}
-x+y-1=0 \\[4pt]
x+y-3=0
\end{cases}
\end{align*}
よって,求める点Aの座標は $(1,~2)$