2020年センター試験 数学ⅠA 第3問 確率の解説をします。
まだ問題を解いていない人は解いてから解説を読んでください。
下の⓪~③のうちから一つずつ選べ。ただし,解答の順序は問わない。
正しい記述は $\myBox{ア}$ と $\myBox{イ}$ である。
⓪ 1枚のコインを投げる試行を5回繰り返すとき,少なくとも1回は表が出る確率を $p$ とすると,$p>0.95$ である。
① 袋の中に赤球と白球が合わせて8個入っている。球を1個取り出し,色を調ベてから袋に戻す試行を行う。この試行を5回繰り返したところ赤球が3回出た。したがって,1回の試行で赤球が出る確率は $\dfrac{3}{5}$ である。
② 箱の中に「い」と書かれたカードが1枚,「ろ」と書かれたカードが2枚,「は」と書かれたカードが2枚の合計5枚のカードが入つている。同時に2枚のカードを取り出すとき,書かれた文字が異なる確率は $\dfrac{4}{5}$ である。
③ コインの面を見て「オモテ(表)」または「ウラ(裏)」とだけ発言するロボットが2体ある。ただし,どちらのロボットも出た面に対して正しく発言する確率が0.9,正しく発言しない確率が0.1であり,これら2体は互いに影響されることなく発言するものとする。いま,ある人が1枚のコインを投げる。出た面を見た2体が,ともに「オモテ」と発言したときに,実際に表が出ている確率を $p$ とすると,$p\leqq0.9$ である。
〔2〕 1枚のコインを最大で5回投げるゲームを行う。このゲームでは,1回投げるごとに表が出たら持ち点に2点を加え,裏が出たら持ち点に $-1$ 点を加える。はじめの持ち点は0点とし,ゲーム終了のルールを次のように定める。
- 持ち点が再び0点にならない場合は,その時点で終了する。
- 持ち点が再び0点にならない場合は,コインを5回投げ終わった時点で終了する。
(1) コインを2回投げ終わって持ち点が $-2$ 点である確率は $\dfrac{\myBox{ウ}}{\myBox{エ}}$ である。また,コインを2回投げ終わって持ち点が1点である確率は $\dfrac{\myBox{オ}}{\myBox{カ}}$ である。
(2) 持ち点が再び0点になることが起こるのは,コインを $\myBox{キ}$ 回投げ終わったときである。コインを $\mybox{キ}$ 回投げ終わって持ち点が0点になる確率は $\dfrac{\myBox{ク}}{\myBox{ケ}}$ である。
(3) ゲームが終了した時点で持ち点が4点である確率は $\dfrac{\myBox{コ}}{\myBox{サシ}}$ である。
(4) ゲームが終了した時点で持ち点が4点であるとき,コインを2回投げ終わって持ち点が1点である条件付き確率は $\dfrac{\myBox{ス}}{\myBox{セ}}$ である。
Contents
〔1〕の考え方と解答
4つの記述から正しい記述を2つ選ぶ問題。1つずつ正誤判定をしていこう。
5回とも表が出ない,すなわち裏が出る確率は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^5=0.03125$ であるから
p=1-0.03125=0.96875
\end{align*}
【①の記述の正誤】
試行を5回繰り返して赤球が3回出たことを根拠に,1回の試行で赤球が出る確率が $\dfrac{3}{5}$ であるとはいえない。よって,①は正しくない。
【②の記述の正誤】
取り出す2枚のカードの組み合わせは全部で $\nCk{5}{2}=10$ 通り。書かれた文字が異なる組み合わせは全部で $2+2\Cdot2+2=8$ 通りだから,その確率は $\dfrac{8}{10}=\dfrac{4}{5}$ である。よって,②は正しい。
この時点でアとイは⓪と②と分かったけど,③も見ておこう。
2体のロボットがともに「オモテ」と発言する確率は
\dfrac{1}{2}\times0.9^2+\dfrac{1}{2}\times0.1^2
\end{align*}
p&=\dfrac{\dfrac{1}{2}\times0.9^2}{\dfrac{1}{2}\times0.9^2+\dfrac{1}{2}\times0.1^2} \\[4pt]
&=\dfrac{0.81}{0.81+0.01}=\dfrac{81}{82} \\[4pt]
&\fallingdotseq0.98\cdots
\end{align*}
〔2〕(1)の考え方と解答
(1) コインを2回投げ終わって持ち点が $-2$ 点である確率は $\dfrac{\myBox{ウ}}{\myBox{エ}}$ である。また,コインを2回投げ終わって持ち点が1点である確率は $\dfrac{\myBox{オ}}{\myBox{カ}}$ である。
問題文をしっかり読んで解いていこう。
コインを2回投げ終わって持ち点が $-2$ 点であるのは,2回続けて裏がでるときだから,その確率は
\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=\dfrac{1}{4}
\end{align*}
次は持ち点が1点である確率を求める問題。
コインを2回投げ終わって持ち点が1点であるのは,表と裏が1回ずつ出るときだから,その確率は
\dfrac{1}{2}\Cdota\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2}\Cdota\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{2}
\end{align*}
〔2〕(2)の考え方と解答
(2) 持ち点が再び0点になることが起こるのは,コインを $\myBox{キ}$ 回投げ終わったときである。コインを $\mybox{キ}$ 回投げ終わって持ち点が0点になる確率は $\dfrac{\myBox{ク}}{\myBox{ケ}}$ である。
次は持ち点が再び0点になることが起こるときを求める問題。
表が1回出て,裏が2回出れば再び0点になるから,コインを3回投げるときだと分かる。
記述式では,3回投げるとき以外には持ち点が0点になることがないことを言う必要があるため,
次のように書けばよいだろう。
表が $m$ 回出て,裏が $n$ 回出たとき持ち点が再び0点になるとすると
&2m-n=0 \\[4pt]
&n=2m
\end{align*}
よって
&m+2m\leqq5 \\[4pt]
&m\leqq\dfrac{5}{3}
\end{align*}
$m=0$ のときは $n=0$ となり,不適。
よって,$m=1$ であり,このとき $n=2$ であるから,持ち点が再び0点になることが起こるのは,コインを3回投げ終わったときである。
持ち点が再び0点になるときの確率を求めよう。
求める確率は表が1回,裏が2回出る確率だから
3\Cdota\dfrac{1}{2}\Cdota\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=\dfrac{3}{8}
\end{align*}
〔2〕(3)の考え方と解答
(3) ゲームが終了した時点で持ち点が4点である確率は $\dfrac{\myBox{コ}}{\myBox{サシ}}$ である。
次は持ち点が4点になる確率を求める問題。
試行が5回に達せず途中で終わるのは持ち点が再び0点になるときだけだから,コインを5回投げるときを考える。表が $m$ 回出て,裏が $5-m$ 回出たとき持ち点が4点になるとすると
ただし,3回投げ終わった時点で裏が2回出ている(3通り)と,持ち点が0点になるためゲームが終了してしまうから除かなければならない。したがって,求める確率は次のようになる。
&(\nCk{5}{2}-3)\left(\dfrac{1}{2}\right)^2\left(\dfrac{1}{2}\right)^3 \\[4pt]
&=\dfrac{7}{32}
\end{align*}
〔2〕(4)の考え方と解答
(4) ゲームが終了した時点で持ち点が4点であるとき,コインを2回投げ終わって持ち点が1点である条件付き確率は $\dfrac{\myBox{ス}}{\myBox{セ}}$ である。
最後は条件付き確率を求める問題。
ゲームが終了した時点で持ち点が4点である事象を $A$,コインを2回投げ終わって持ち点が1点である事象を $B$ とする。(3)の結果より,
P(A)=\dfrac{7}{32}
\end{align*}
&2\Cdota\left(\dfrac{1}{2}\right)^2\times\dfrac{1}{2}\times2\Cdota\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=\dfrac{1}{8}
\end{align*}
P_B(A)&=\dfrac{P(B\cap A)}{P(B)} \\[4pt]
&=\dfrac{\dfrac{1}{8}}{\dfrac{7}{32}} \\[4pt]
&=\dfrac{4}{7}
\end{align*}
2020年 センター数学ⅠA 確率を解いた感想
これまでとは異なり,大きく2つに分かれた問題構成になっている。
1つ目の問題は4つの記述から正しい記述を2つ選ぶ新傾向の問題になっている。
それほど難しくはないが,すべての選択肢を読んで検証するのは,意外と時間がかかる。
2つ目の問題は今までと同じような分量なので,1つ目の問題がある分だけ余計に時間がかかり,時間に余裕のない人は焦るかもしれない。
また適当に考えると正解できないように問題がうまく作られている。