2次式の最大値や最小値を求める問題では,平方完成することが解法の基本となります。
変数の数が増えて2つになっても考え方は同じです。
3変数になると何をすれば良いか分からなくなる人がいますが,基本的な考え方は同じです。
2次式の最大値や最小値については,しっかり求めることができるようにしておきましょう。
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2019年 静岡文化芸術大
ヒロ
それでは次の問題を解いてみよう。
2019年 静岡文化芸術大実数 $x,~y,~z$ の関数 $F=x^2+2y^2+3z^2+2xy+2zx+2y$ の最小値と,そのときの $x,~y,~z$ の値を求めよ。
考え方と解答
ヒロ
2次式の最小値を求める問題では,平方完成して考えよう。
変数が複数ある場合は,どれか1つの文字に着目するんですか?
ヒロ
そうだね。
どの文字に着目すれば良いんですか?
ヒロ
2次の項の係数が1のものがあれば,その文字に着目するのが楽な場合が多いね。
今回の場合は $x$ に着目するってことですね。
【解答】
\begin{align*}
F&=x^2+2(y+z)x+2y^2+3z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2-(y+z)^2+2y^2+3z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y
\end{align*}
F&=x^2+2(y+z)x+2y^2+3z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2-(y+z)^2+2y^2+3z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y
\end{align*}
ヒロ
このあとの方針を考えよう。
【平方完成する意味】
今回の問題では,平方完成することによって,
\begin{align*}
F=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y
\end{align*}
と変形できた。ここで $(+y+z)^2\geqq0$ であることから,$F$ が最小になるのは,$y^2-2yz+2z^2+2y$ が最小になるときだと分かる。F=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y
\end{align*}
このように,1つの文字に着目して平方完成することで,問題が変化する。
考えている式からその文字を消去することができるため,始めは3変数の問題であっても,2変数の2次式の最小値を求める問題に変わる。もう一度,平方完成をすれば1つの変数になることが分かる。
ヒロ
解答の続きを進めよう。$y^2$ の係数が1だから $y$ に着目して平方完成しよう。
【解答の続き】
\begin{align*}
F&=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+y^2+2(-z+1)y+2z^2 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+2z^2-(-z+1)^2 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+z^2+2z-1 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+(z+1)^2-2
\end{align*}
F&=(x+y+z)^2+y^2-2yz+2z^2+2y \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+y^2+2(-z+1)y+2z^2 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+2z^2-(-z+1)^2 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+z^2+2z-1 \\[4pt]
&=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+(z+1)^2-2
\end{align*}
ヒロ
ここまで変形できたら,完答まであと一歩。
実数とは実数とは,2乗すると0以上になる数のことである。
$x$ が実数のとき,$x^2\geqq0$ が成り立つ。等号が成立するのは $x=0$ のときである。
また,$x,~y$ が実数のとき,$x^2+y^2\geqq0$ が成り立つ。等号が成立するのは $x=0$ かつ $y=0$ のときである。
$x$ が実数のとき,$x^2\geqq0$ が成り立つ。等号が成立するのは $x=0$ のときである。
また,$x,~y$ が実数のとき,$x^2+y^2\geqq0$ が成り立つ。等号が成立するのは $x=0$ かつ $y=0$ のときである。
【等号が成り立つときを考えよう】
$F=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+(z+1)^2-2$
$x,~y,~z$ は実数であるから,
\begin{align*}
&(x+y+z)^2\geqq0 \\[4pt]
&(y-z+1)^2\geqq0 \\[4pt]
&(z+1)^2\geqq0
\end{align*}
であるから,$F\geqq-2$ となる。&(x+y+z)^2\geqq0 \\[4pt]
&(y-z+1)^2\geqq0 \\[4pt]
&(z+1)^2\geqq0
\end{align*}
ここで $F$ の最小値が $-2$ だと断言するのは良くない。
$F=-2$ となるのは,$(x+y+z)^2$,$(y-z+1)^2$,$(z+1)^2$ がすべて同時に0になるときだから,そのような $x,~y,~z$ が存在しなければ $F$ の最小値が $-2$ だとは言えない。
ということは先に等号が成り立つような $x,~y,~z$ の値を求めてしまえば良いってことですね。
ヒロ
そういうことだね。解答を仕上げよう。
【解答の続き】
$F=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+(z+1)^2-2$
$F$ は
$F=(x+y+z)^2+(y-z+1)^2+(z+1)^2-2$
$F$ は
\begin{align*}
x+y+z=0~かつ~y-z+1=0~かつ~z+1=0
\end{align*}
すなわちx+y+z=0~かつ~y-z+1=0~かつ~z+1=0
\end{align*}
\begin{align*}
z=-1,~y=-2,~x=3
\end{align*}
のとき最小値 $-2$ をとる。z=-1,~y=-2,~x=3
\end{align*}