大学入試で出題される場合の数・確率の問題では,漸化式を利用するものがあります。
問題文からどのように考えて漸化式を立てるのか分からない人も多いのではないでしょうか。
この記事では,問題文から漸化式を立てるときの考え方について説明します。
漸化式を立てることができなければ,そもそも解く漸化式がない状態になるため解答用紙は白紙になります。
そうならないためにも,漸化式を立てることができるようになりましょう。
1983年 京都大
ヒロ
それでは次の入試問題を解いてみよう。
1983年 京都大 数直線上を原点から右(正の向き)に硬貨を投げて進む。表が出れば1進み,裏が出れば2進むものとする。このようにして,ちょうど点 $n$ に到達する確率を $p_n$ で表す。ただし,$n$ は自然数とする。
(1) 3以上の $n$ について,$p_n$ と $p_{n-1}$, $p_{n-2}$ との関係式を求めよ。
(2) $p_n~(n\geqq3)$ を求めよ。
(1) 3以上の $n$ について,$p_n$ と $p_{n-1}$, $p_{n-2}$ との関係式を求めよ。
(2) $p_n~(n\geqq3)$ を求めよ。
(1)の考え方と解答
ヒロ
問題で隣接三項間漸化式を立てるよう誘導されている。
ヒロ
今回は最後に表が出るか裏が出るかで場合分けしよう。
【最後に着目】
ちょうど点 $n$ に到達する最後に着目すると,次の(i),(ii)のいずれかになる。
(i) 点 $n-1$ から最後に1進んで点 $n$ に到達する。
(ii) 点 $n-2$ から最後に2進んで点 $n$ に到達する。
ここで,確率 $p_n$ の定義を確認すると,点 $n$ に到達する確率が $p_n$ だから,例えば点 $n-1$ に到達する確率は $p_{n-1}$ であり,点 $n-2$ に到達する確率は $p_{n-2}$ である。
よって,(i)の場合は,まず点 $n-1$ に到達し(この時点での確率が $p_{n-1}$),その後,表が出て(この確率が $\dfrac{1}{2}$)点 $n$ に到達する。
また(ii)の場合は,まず点 $n-2$ に到達し(この時点での確率が $p_{n-2}$),その後,裏が出て(この確率が $\dfrac{1}{2}$)点 $n$ に到達する。
(ii)の状態から,次に表が2回出て点 $n$ に到達するときは考えないのですか?
ヒロ
(ii)の状態で次に表が出た時点で点 $n-1$ に到達するから,それは(i)のときを考えていることになるね。
なるほど。分かりました。
ヒロ
点 $n$ に到達する直前の状態がどうなっているかで場合分けするようにしよう。
ヒロ
このように考えることができれば解答を書くことができるね。
【(1)の解答】
ちょうど点 $n$ に到達するのは,
(i) 点 $n-1$ に到達した後,表が出る
(ii) 点 $n-2$ に到達した後,裏が出る
の2つの場合があるから,求める関係式は次のようになる。
ちょうど点 $n$ に到達するのは,
(i) 点 $n-1$ に到達した後,表が出る
(ii) 点 $n-2$ に到達した後,裏が出る
の2つの場合があるから,求める関係式は次のようになる。
\begin{align*}
p_n=\dfrac{1}{2}p_{n-1}+\dfrac{1}{2}p_{n-2}
\end{align*}
p_n=\dfrac{1}{2}p_{n-1}+\dfrac{1}{2}p_{n-2}
\end{align*}
(2)の考え方と解答
ヒロ
(1)で求めた隣接三項間漸化式を解くだけだね。
【(2)の解答】
$p_n=\dfrac12p_{n-1}+\dfrac12p_{n-2}$ より,
①より,
$p_n=\dfrac12p_{n-1}+\dfrac12p_{n-2}$ より,
\begin{align*}
\begin{cases}
p_n-p_{n-1}=-\dfrac12(p_{n-1}-p_{n-2})~\cdots\cdots① \\[2mm]
p_n+\dfrac12p_{n-1}=p_{n-1}+\dfrac12p_{n-2}~\cdots\cdots②
\end{cases}
\end{align*}
$p_1=\dfrac12,~p_2=\left(\dfrac12\right)^2+\dfrac12=\dfrac34$ だから,\begin{cases}
p_n-p_{n-1}=-\dfrac12(p_{n-1}-p_{n-2})~\cdots\cdots① \\[2mm]
p_n+\dfrac12p_{n-1}=p_{n-1}+\dfrac12p_{n-2}~\cdots\cdots②
\end{cases}
\end{align*}
①より,
\begin{align*}
&p_n-p_{n-1}=(p_2-p_1)\left(-\dfrac12\right)^{n-2} \\[4pt]
&p_n-p_{n-1}=\left(-\dfrac12\right)^{n}~\cdots\cdots③
\end{align*}
②より,&p_n-p_{n-1}=(p_2-p_1)\left(-\dfrac12\right)^{n-2} \\[4pt]
&p_n-p_{n-1}=\left(-\dfrac12\right)^{n}~\cdots\cdots③
\end{align*}
\begin{align*}
&p_n+\dfrac12p_{n-1}=p_2+\dfrac12p_1 \\
&p_n+\dfrac12p_{n-1}=1~\cdots\cdots④
\end{align*}
③,④より,&p_n+\dfrac12p_{n-1}=p_2+\dfrac12p_1 \\
&p_n+\dfrac12p_{n-1}=1~\cdots\cdots④
\end{align*}
\begin{align*}
p_n=\dfrac23+\dfrac13\left(-\dfrac12\right)^{n}~(n\geqq3)
\end{align*}
p_n=\dfrac23+\dfrac13\left(-\dfrac12\right)^{n}~(n\geqq3)
\end{align*}
ヒロ
隣接三項間漸化式の解法自体を忘れてしまっている人は次の記事で復習しておこう。
まとめ
ヒロ
場合の数・確率を求める問題で漸化式を立てる場合は,最初か最後に着目しよう。
ヒロ
今回の問題では最後に着目したが,考えやすい方で考えれば良い。
ヒロ
一部の大学では確率漸化式は毎年のように出題されるため,名古屋大学のように出題頻度が高い大学を受験するなら,しっかり対策をしておくことが重要である。