漸化式パターン3の第三弾となります。パターン3は f(n) の形に応じて,次の4つのタイプに分けることができます。
- 1次式
- 2次式
- n+k 乗 (k は整数) ← この記事ではこのタイプを解説
- 分数式
ここでは,f(n) が qrn+k で表される漸化式の解法を説明します。
パターン3は,前回の2次式のタイプはほとんど出題されず,この n 乗系のタイプと1次式のタイプでほぼ二分されます。どのような形で出題されたとしても解けるようにしましょう。
それでは,次の問題を考えましょう。
2011年 摂南大数列
{an} を,
a1=1, an+1=3an+2∙3n+1 (n=1,2,3,⋯) で定義する。
bn=an3n とおくと,数列
{bn} は
b1= ア ア , bn+1= ア bn+ ア (n=1,2,3,⋯)
を満たすので,一般項は
ア と表される。
したがって数列
{an} の一般項は
ア と表される。
基本形に変形する
ヒロ
b1=a13=13
ヒロ
bn=an3n とおくと,
an=3nbn となるから,
an+1=3n+1bn+1 となる。したがって
3n+1bn+1=3∙3nbn+2∙3n+13n+1bn+1=3n+1bn+2∙3n+1bn+1=bn+2
ヒロ
これで,数列 bn が公差2の等差数列だと分かったね。
センター試験と違って,1が入るのはちょっと戸惑いますね。
ヒロ
私大入試にはよくあることなので,これくらいで動揺しないようにしよう。あと,もし bn の係数が1でなければ,パターン2になるのでもう少し難しくなるよ。さぁ,一般項を求めよう。
b1=13 だから,
bn=13+2(n−1)bn=2n−53
an=3nbn より,
an=3n(2n−53)an=3n−1(6n−5)
誘導がない場合
ヒロ
an+1=pan+qrn+k(k は整数) の形の漸化式は,両辺を pn+1 か rn+1 で割るとうまく処理できることを覚えておこう。今回の問題では,p=r なのでどちらの考えでも 3n+1 で割ることになる。
an+1=3an+2∙3n+1 の両辺を
3n+1 で割ると
an+13n+1=3an3n+1+2∙3n+13n+1an+13n+1=3an3∙3n+2∙3n+13n+1an+13n+1=an3n+2
ヒロ
3n+1=3∙3n と考えて,an3n と an+13n+1 をうまく作ろう。
ヒロ
分母と分子の両方の n が1つずれているからこそ,an3n=bn とおいたときに,an+13n+1=bn+1 となって,うまくいくんだ。
誘導がない場合 その2
ヒロ
もう1つの方法として,等比数列となるような置き換えをする方法がある。
与えられた漸化式が
an+1+α(n+1)∙3n+1=3(an+αn∙3n)
と変形できたとすると
an+1=3an+{αn−α(n+1)}∙3n+1=3an−α∙3n+1
元の漸化式と比較して,
α=−2よって,数列
{an−2n∙3n} は公比3の等比数列である。
a1−2∙3=−5 より
an−2n∙3n=−5∙3n−1an=2n∙3n−5∙3n−1an=(6n−5)∙3n−1
an+1=pan+qrn+k (p≠1,kは整数) 型の漸化式の解法
ヒロ
ヒロ
一般的に,漸化式パターン3の f(n) が n 乗系の漸化式の解法は次の手順に従おう。
解法1
- 両辺を rn+1 で割る。
- anrn=bn とおいて,bn+1 を bn で表す。
- 基本形かパターン2になるから,そのパターンを特定して解法を思い出す。
- bn を求めて,一般項 an=rnbn を求める。
解法2
- 両辺を pn+1 で割る。
- anpn=bn とおいて,bn+1 を bn で表す。
- 等差型か階差型になるから,その解法を思い出す。
- bn を求めて,一般項 an=pnbn を求める。
解法3(i)(p=r のとき)
- 数列 {an+αnrn} が等比数列となる α を求める。
- 等比型になることを利用して,一般項 an を求める。
解法3(ii)(p≠r のとき)
- 数列 {an+αrn} が等比数列となる α を求める。
- 等比型になることを利用して,一般項 an を求める。
漸化式パターン3の練習
ヒロ
2016年 大阪工業大数列 {an} が a1=2, an+1=3an+2n (n=1,2,3,⋯) を満たすとき,
a2= ア ,a3= ア である。また,漸化式を変形すると,an+1+2n+1=3(an+ ア ) となることから,数列 {an} の一般項は,an= ア である。
ヒロ
ヒロ
a2,a3 は漸化式の n に n=1,2 を代入して順番に求めていくだけだね。
a2=3a1+2=6+2=8
a3=3a2+22=24+4=28
ヒロ
次は,漸化式を等比型に変形しているけど,空欄を埋めるだけなら,すぐに答えが分かるね。
ヒロ
左辺が an+1+2n+1 となっていて,等比型に変形しているなら,右辺は 3(an+2n) になるはず。これが正しいかどうかは展開・整理して元の漸化式に戻ることを確認すれば良いね。
an+1+2n+1=3(an+2n) を変形すると
an+1=3an+3∙2n−2n+1=3an+3∙2n−2∙2n=3an+2n
確かに元の漸化式に戻るので,空欄は 2n で正しいことが分かりますね。
ヒロ
数列
{an+2n} は公比3の等比数列であるから
an+2n=(a1+2)∙3n−1an=4∙3n−1−2n
ヒロ
これは空欄を埋める問題で,左辺が既に書かれていたから,かなり簡単に解けてしまう。
ヒロ
穴埋め形式でなく,この解法を選択した場合は,次のように,数列 {an+α∙2n} が等比数列となるように α を求めることになる。
与えられた漸化式が
an+1+α∙2n+1=3(an+α∙2n)
変形できたとすると,
an+1=3an+3α∙2n−2α∙2nan+1=3an+α∙2n
元の漸化式と比較して,
\alpha=1
ヒロ
このようにして,数列 \{a_n+2^n\} が等比数列になることを導くことができる。
練習問題の別解
ヒロ
この問題が誘導なしで出題された場合,多くの人が選択する解法で解いておくよ。
与えられた漸化式の両辺を
2^{n+1} で割ると
\begin{align*} &\dfrac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{2^{n+1}}+\dfrac{2^n}{2^{n+1}} \\[4pt] &\dfrac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\dfrac{3}{2}\Cdota\dfrac{a_n}{2^n}+\dfrac{1}{2} \end{align*}
ここで
\dfrac{a_n}{2^n}=b_n とおくと
\begin{align*} &b_{n+1}=\dfrac{3}{2}b_n+\dfrac{1}{2} \end{align*}
特性方程式 {\color{blue}x=\dfrac{3}{2}x+\dfrac{1}{2}} を解くと\begin{align*} &{\color{blue}2x=3x+1} \\[4pt] &{\color{blue}x=-1} \end{align*}
よって\begin{align*} b_{n+1}+1=\dfrac{3}{2}(b_n+1) \end{align*}
数列
\{b_n+1\} は公比
\dfrac{3}{2} の等比数列で,
b_1=\dfrac{a_1}{2}=1 だから
\begin{align*} &b_n+1=(b_1+1)\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1} \\[4pt] &b_n=2\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1}-1 \end{align*}
a_n=2^nb_n より
\begin{align*} &a_n=2^n\left\{2\Cdota\left(\dfrac{3}{2}\right)^{n-1}-1\right\} \\[4pt] &a_n=4\Cdota3^{n-1}-2^n \end{align*}
※青字の部分は,実際の解答用紙には書かなくて良い。
練習問題の別解
ヒロ
与えられた漸化式の両辺を
3^{n+1} で割ると
\begin{align*} &\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{3a_n}{3^{n+1}}+\dfrac{2^n}{3^{n+1}} \\[4pt] &\dfrac{a_{n+1}}{3^{n+1}}=\dfrac{a_n}{3^n}+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^n \end{align*}
ここで
\dfrac{a_n}{3^n}=b_n とおくと
\begin{align*} &b_{n+1}=b_n+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^n \end{align*}
n\geqq2 のとき
\begin{align*} b_n&=b_1+\Sum{k=1}{n-1}\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^k \\[4pt] &=\dfrac{a_1}{3}+\dfrac{1}{3}\Cdota\dfrac{\dfrac{2}{3}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}\right\}}{1-\dfrac{2}{3}} \\[4pt] &=\dfrac{2}{3}+\dfrac{2}{3}\left\{1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-1}\right\} \\[4pt] &=\dfrac{4}{3}-\left(\dfrac{2}{3}\right)^n \end{align*}
これは
n=1 のときも成り立つ。
a_n=3^nb_n より
\begin{align*} &a_n=3^n\left\{\dfrac{4}{3}-\left(\dfrac{2}{3}\right)^n\right\} \\[4pt] &a_n=4\Cdota3^{n-1}-2^n \end{align*}
まとめ
ヒロ
漸化式パターン3の f(n) が定数の n 乗などで表される漸化式は,誘導があるものと誘導がないものが出題されるため,どのような形で出題されても大丈夫なように,しっかり練習しておこう。