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$(a+b+c)^3$ を楽に速く展開する方法
では,今回の問題の $(a+b+c)^3$ を展開する問題を考えてみよう。
まずはどんな項が出てくるか・・・そのためには文字の種類に着目するんだっけ・・・
まずは文字の種類に着目して,1種類から3種類の3パターンに分けて考えるってことで合ってますか?
うん,そうだね!展開を考えたとき,具体的にはどんな項が出てくる?
1種類の項は,$a^3,b^3,c^3$ の3つで,3種類の項は $abc$ だけです。2種類の項は,$a^2b$ や $b^2c$ とか色々あってちょっと難しいです。
1種類の項と3種類の項についてはOKだね!2種類の項については規則的に考えよう。
規則的ってどういうことですか?
最初に $a^2b$ と言ったよね?これは3つの文字 $a,b,c$ から左2つの $a,b$ を選んでいることになるんだ。そして,一旦2文字を選んだら,その選んだ2文字から出てくる項を全部考えよう。つまり,取る個数に着目すると $a$ を2つ取るときと1つ取るときがあるから,$a^2b$ 以外に $ab^2$ という項も出てくるよね?次は
あっ!言わないで下さい!次は,右2つの $b,~c$ を選んで,$b^2c$ と $bc^2$ が出てきます。最後に,両端の $c,~a$ を選んで,$c^2a$ と $ca^2$ が出てくるってことで合ってますか?
完璧だね!$a\to b\to c\to a$ のサイクルを意識した輪環の順についても知ってるんだね。じゃあ,その調子で係数も考えようか。
まず,1種類の $a^3,~b^3,~c^3$ の係数は全部1です。2種類の項は $a^2b$ を考えると,さっきと同じようにして,3つの括弧のうち1つだけ $b$ をとるから,$\nCk{3}{1}=3$ 通り。他の項も同じだから,2種類の項の係数は全部3になります。
うん,そうだね!
では,最後の3種類の項 $abc$ の係数はどうなる?
3種類の $abc$ の係数は・・・よく分かりません。
3つの括弧から選ぶ方法って考えると難しいかも。例えば,$abc$ の場合は左から順に $a,~b,~c$ と選んだことになるし,$bac$ の場合は左から順に $b,~a,~c$ と選んだことになるよね?でもこれは,視点を変えると,$a,~b,~c$ の3文字を並べる方法が何通りあるかってことを考えるのと一緒だね。
なるほど!異なる $n$ 個のものを1列に並べる方法は,$n!$ 通りだから,$a,~b,~c$ の3文字を並べる方法は全部で $3!=6$ 通りになります。つまり,$abc$ の係数は6ということですね!
そうだね!ってことで解答の式は長いけど次のようになるね。
(a+b+c)^3=a^3&+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2 \\
&+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc
\end{align*}
面倒な展開の問題だと思ったら,場合の数の知識を利用することで楽に速く展開できることもあるんですね!
複数の単元の知識を結びつけることはとても重要なことなんだ。
ありがとうございました!
いえいえ。この調子で頑張ってね!
まとめ
一見,面倒だと思う $(a+b+c)^2$ や $(a+b+c)^3$ の展開も,どのような項が現れるか,また,それぞれの項の係数がどうなるかを考えることによって,楽に速く展開できることを覚えておこう。
- 三項式の2乗の展開公式\begin{align*}
(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca
\end{align*} - 三項式の3乗の展開公式\begin{align*}
(a+b+c)^3=a^3&+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2 \\
&+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc
\end{align*}
1つ1つ掛けて展開するといった面倒な方法なら誰でもできるが,展開について「分かっている」とは言い難い。展開についてしっかり理解することが重要。
ただ,実際の入試で 「$(a+b+c)^3$ を展開せよ。」と出題されることは,今までに2回ほど見ただけでほとんどない。
$x^3+y^3+z^3$ の値を求めるときや,3乗に関連する対称式を見た場合に,$(x+y+z)^3$ の展開を考える人がいるが,ほとんどの場合 $(x+y+z)^3$ を自分から答案に持ち出す必要はない。もっとうまい方法があるから,その方法を使えるようにした方が良い。
それについては,また今度ということで,今回は終わりにしよう。