$x$ の多項式を $x$ の2次式で割ったときの余りを求める問題について説明します。
通常よくある解法の説明以外に,2次式で割ったときの余りと直線の方程式の関係についても説明します。
この記事を読むことによって,2次式で割ったときの余りを直線の方程式を求める要領で求めることができるようになります。
新たな視点をもつことができるため,記事を読む前より柔軟な発想をすることができるようになる可能性があります。
それでは,次の問題を解いてみましょう。
2013年 法政大
$x^9-x^8-2x^7$ を $x^2-3x+2$ で割った余りは,$\myBox{ア}\,x-\myBox{イ}$ である。
プリントを次のリンクからダウンロードできます。
2013年 法政大の問題の考え方と解答
ヒロ
実際に割り算をすることで,余りを求めることができるけど,面倒なので工夫しよう。
ヒロ
まず,割り算の割られる式・割る式・商・余りの関係を復習しておこう。
多項式の割り算多項式 $f(x)$ を $g(x)$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $R(x)$ とすると
\begin{align*}
f(x)=g(x)Q(x)+R(x)
\end{align*}
が成り立つ。ただし,$R(x)$ の次数は $g(x)$ の次数より低い。f(x)=g(x)Q(x)+R(x)
\end{align*}
ヒロ
今回の問題では,2次式で割っているから,余りは1次式または定数となる。
ヒロ
つまり余りは $ax+b$ と表せるね。
【考え方と解答】
$x^9-x^8-2x^7$ を $x^2-3x+2$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $ax+b$ とすると
$x^9-x^8-2x^7$ を $x^2-3x+2$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $ax+b$ とすると
\begin{align*}
x^9-x^8-2x^7=(x^2-3x+2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
と表せる。x^9-x^8-2x^7=(x^2-3x+2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
ヒロ
$a,~b$ を求めるためには2つの方程式が必要だね。
ヒロ
でも $Q(x)=0$ となるような $x$ はすぐには分からないから,$x^2-3x+2=0$ となる $x$ を考えよう。
【解答の続き】
$x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$ より
$x^2-3x+2=(x-1)(x-2)$ より
\begin{align*}
x^9-x^8-2x^7=(x-1)(x-2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
$x=1,~2$ を代入するとx^9-x^8-2x^7=(x-1)(x-2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
\begin{align*}
\begin{cases}
a+b=-2 \\[4pt]
2a+b=(2-1-1)2^8=0
\end{cases}
\end{align*}
これを解いて,\begin{cases}
a+b=-2 \\[4pt]
2a+b=(2-1-1)2^8=0
\end{cases}
\end{align*}
\begin{align*}
a=2,~b=-4
\end{align*}
よって,求める余りは $2x-4$a=2,~b=-4
\end{align*}
多項式を2次式で割った余りを直線の方程式として捉える
$x^9-x^8-2x^7$ を $x^2-3x+2$ で割った余りを求めよ。
ヒロ
それでは次に,多項式を2次式で割った余りを直線の方程式と捉える考え方について説明していく。
【2次式で割った余りの意味】
多項式 $f(x)$ を $(x-p)(x-q)$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $ax+b$ とすると
\begin{align*}
f(x)=(x-p)(x-q)Q(x)+ax+b
\end{align*}
と表せる。これを変形するとf(x)=(x-p)(x-q)Q(x)+ax+b
\end{align*}
\begin{align*}
f(x)-(ax+b)=(x-p)(x-q)Q(x)
\end{align*}
となる。ここで $f(x)-(ax+b)=0$ の解は,$(x-p)(x-q)Q(x)=0$ の解と一致する。つまり,$f(x)-(ax+b)=0$ の解のうち,2つは $x=p,~q$ と分かっていることを意味する。f(x)-(ax+b)=(x-p)(x-q)Q(x)
\end{align*}
また $f(x)-(ax+b)=0$ の解は,曲線 $y=f(x)$ と直線 $y=ax+b$ の共有点の $x$ 座標を表すことを考えると,$y=ax+b$ は2点 $(p,~f(p))$, $(q,~f(q))$ を通る直線の方程式であると言える。
2次式で割った余り多項式 $f(x)$ を $(x-p)(x-q)$ で割った余りを $g(x)$ とすると,$y=g(x)$ のグラフは2点 $(p,~f(p))$, $(q,~f(q))$ を通る直線である。
ヒロ
今回の問題で答えを求めるだけなら,次のようにして解くことができる。
【問題1の別解】
求める余りは2点 $(1,~-2)$, $(2,~0)$ を通る直線の方程式を考えて,
求める余りは2点 $(1,~-2)$, $(2,~0)$ を通る直線の方程式を考えて,
\begin{align*}
\dfrac{0-(-2)}{2-1}(x-1)-2=2x-4
\end{align*}
\dfrac{0-(-2)}{2-1}(x-1)-2=2x-4
\end{align*}
$n$ 次式を2次式で割ったときの余りを求める問題
ヒロ
それでは,練習として次の問題を解いてみよう。
問題$x^n$ を $(x+1)(x-2)$ で割ったときの余りを求めよ。ただし,$n$ は自然数とする。
ヒロ
通常の解答は次のようになる。
【問題の解答】
$x^n$ を $(x+1)(x-2)$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $ax+b$ とおくと,
$x^n$ を $(x+1)(x-2)$ で割ったときの商を $Q(x)$,余りを $ax+b$ とおくと,
\begin{align*}
x^n=(x+1)(x-2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
と表せる。$x=-1,~2$ を代入するとx^n=(x+1)(x-2)Q(x)+ax+b
\end{align*}
\begin{align*}
&\begin{cases}
-a+b=(-1)^n \\[4pt]
2a+b=2^n
\end{cases} \\[4pt]
&a=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3},~b=\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}
よって,求める余りは&\begin{cases}
-a+b=(-1)^n \\[4pt]
2a+b=2^n
\end{cases} \\[4pt]
&a=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3},~b=\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}
\begin{align*}
\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}x+\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}
\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}x+\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}
ヒロ
直線の方程式とみて解くと次のようになる。
【別解】
求める余りは2点 $(-1,~(-1)^n)$, $(2,~2^n)$ を通る直線の方程式を考えて,
求める余りは2点 $(-1,~(-1)^n)$, $(2,~2^n)$ を通る直線の方程式を考えて,
\begin{align*}
&\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}(x+1)+(-1)^n \\[4pt]
&=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}x+\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}
&\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}(x+1)+(-1)^n \\[4pt]
&=\dfrac{2^n-(-1)^n}{3}x+\dfrac{2^n+2\Cdot(-1)^n}{3}
\end{align*}