ここでは2018年富山大で出題されたガウス記号を含む方程式に関する入試問題を解説します。
「ガウス記号」と聞くだけで「嫌だなぁ~」と思う人もいるのではないでしょうか?
嫌いだからと言って避けてばかりでは,解けるようになりません。
あなただけが苦手ということはあり得ないのですから,ガウス記号を含む問題を解けるようになることで,入試においてアドバンテージを得ることができるはずです。
2018年 富山大・文系
それでは次の問題を解いてみよう。
(1) すべての実数$x$に対して
\gauss{x}+\left[x+\dfrac12\right]=\gauss{2x}
\end{align*}
(2) すべての自然数$n$に対して,$2^n>n$が成り立つことを示せ。
(3) $n$を自然数とするとき
\Sum{k=1}{n}\gauss{\dfrac{n}{2^k}+\dfrac12}
\end{align*}
(1)の考え方と解答
まず,ガウス記号の性質について復習しておこう。次の3つの性質を覚えておくと良いだろう。
- $\gauss{x+n}=\gauss{x}+n$
- $\gauss{x+y}\geqq\gauss{x}+\gauss{y}$
- $\gauss{x}+\left[x+\dfrac12\right]=\gauss{2x}$
$x,~y$ は実数,$n$ は整数とする。
今回扱う問題では,3つ目の性質を証明する問題になっているね。
ただ覚えて知っているというだけでは,知っているけど証明できなくて悔しい思いをすることになるので,証明までできるようにしておこう。
$x+\dfrac12$ において,$x$ の小数部分が0.5以上になるかどうかで,
$x+\dfrac{1}{2}$ の整数部分が変わってくるから,$x$ の小数部分に着目して場合分けしよう。
$n$ を整数とする。
(i) $n\leqq x<n+\dfrac12$のとき $\gauss{x}=n$ である。
$n+\dfrac12\leqq x+\dfrac12<n+1$ だから,$\gauss{x+\dfrac12}=n$ である。
$2n\leqq2x<2n+1$ だから,$\gauss{2x}=2n$ である。
よって,$\gauss{x}+\gauss{x+\dfrac12}=\gauss{2x}$ が成り立つ。
(ii) $n+\dfrac12\leqq x<n+1$ のとき $\gauss{x}=n$ である。
$n+1\leqq x+\dfrac12<n+\dfrac32$ だから,$\gauss{x+\dfrac12}=n+1$ である。
$2n+1\leqq2x<2n+2$ だから,$\gauss{2x}=2n+1$ である。
よって,$\gauss{x}+\gauss{x+\dfrac12}=\gauss{2x}$ が成り立つ。
(i), (ii)より,すべての実数 $x$ に対して,$\gauss{x}+\gauss{x+\dfrac12}=\gauss{2x}$ が成り立つ。
(2)の考え方と解答
(2)は二項定理を利用して証明する有名な証明問題だね。
$n\geqq2$ のとき,
$n\geqq2$ のとき,
$2^1>1$ より,$n=1$ のときも成り立つ。
よって,すべての自然数 $n$ に対して,$2^n>n$ が成り立つ。
(3)の考え方と解答
(1)と(2)が証明問題で,(2)を証明するときに(1)を使っていないから,(3)では(1)と(2)の両方を使う可能性が高いと思うようにしよう。
(3)のガウス記号の中身の $\dfrac{1}{2}$ が邪魔だから和を求められない。
(1)で証明した等式にも $\dfrac{1}{2}$ が含まれることに着目して,(1)を利用することを考えよう。
$x$ を $\dfrac{n}{2^k}$ とおくとガウス記号の中身が一致するから,これでうまくいくか試してみよう。
(1)において,$x=\dfrac{n}{2^k}$ とおくと
&\gauss{\dfrac{n}{2^k}}+\gauss{\dfrac{n}{2^k}+\dfrac12}=\gauss{\dfrac{n}{2^{k-1}}} \\[4pt]
&\gauss{\dfrac{n}{2^k}+\dfrac12}=\gauss{\dfrac{n}{2^{k-1}}}-\gauss{\dfrac{n}{2^k}}
\end{align*}
\Sum{k=1}{n}\gauss{\dfrac{n}{2^k}+\dfrac12}
&=\Sum{k=1}{n}\left\{\gauss{\dfrac{n}{2^{k-1}}}-\gauss{\dfrac{n}{2^k}}\right\} \\
&=\gauss{n}-\gauss{\dfrac{n}{2^n}} \\
&=n-\gauss{\dfrac{n}{2^n}}
\end{align*}
(2)の結果より
0<\dfrac{n}{2^n}<1 \end{align*}
まとめ
ガウス記号の性質に限ったことではないが,様々な性質について単に知っているというだけでなく,証明できるようにしておくことが非常に重要である。
文系生の場合,ガウス記号自体を知らないということもあり得るため,知っておくべきことをしっかり知ることが大切である。