2016年センター試験 数学ⅠA 第2問 三角比の解説をします。
まだ問題を解いていない人は解いてから解説を読んでください。
外接円Oの,点Cを含む弧AB上で点Pを動かす。
(1) $2\mathrm{PA}=3\mathrm{PB}$ となるのは $\mathrm{PA}=\myBox{イ}\sqrt{\myBox{ウエ}}$ のときである。
(2) $\sankaku{PAB}$ の面積が最大となるのは $\mathrm{PA}=\myBox{オ}\sqrt{\myBox{カ}}$ のときである。
(3) $\sin\kaku{PBA}$ の値が最大となるのは $\mathrm{PA}=\myBox{キク}$ のときであり,このとき $\sankaku{PAB}$ の面積は $\dfrac{\myBox{ケコ}\sqrt{\myBox{サ}}}{\myBox{シ}}$ である。
ウォーミングアップ問題の解答
小問に入る前の問題ということで,最も基本的な外接円の半径を求める問題だね。
$\sankaku{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とすると,正弦定理より
R&=\dfrac{\mathrm{AB}}{2\sin\kaku{ACB}} \\[4pt]
&=\dfrac{7\sqrt{3}}{2\Cdota\dfrac{\sqrt{3}}{2}} \\[4pt]
&=7
\end{align*}
(1)の解答
まずは状況を把握するために図を描いてみよう。
外接円が絡む図では,円から描くと綺麗に描くことができる。また,三角形の内角の1つが $60\Deg$ だから,円さえ綺麗に描ければかなり正確な図を描くことができる。
円に内接する三角形の内角の1つが $60\Deg$ のときに正確な図を描く方法については,次の記事を参考にして欲しい。
いまは外接円Oの点Cを含む弧AB上で点Pを動かすから,$\kaku{APB}=60\Deg$ であることが分かる。
また,$2\mathrm{PA}=3\mathrm{PB}$ より,$\mathrm{PA}:\mathrm{PB}=3:2$ となるから次の図のようになる。
PAとPBの比が分かっているから,PAとPBの長さを1つの文字を使って表せるから,通常は余弦定理で処理するだろう。
ただ,このブログの読者であれば,2と3と $60\Deg$ を見て反応するかもしれない。これって「ルナ三角形だろ!」と。
「ルナ三角形って何?」ってなる人は,次の記事で知識を補っておこう。
$\sankaku{PAB}$ は3辺の長さの比が $2:3:\sqrt{7}$ のルナ三角形の1つであることが分かる。比の $\sqrt{7}$ に相当するABの長さが $\mathrm{AB}=7\sqrt{3}$ であるから,比から辺の長さに変換するには $\sqrt{21}$ を掛ければよいことが分かる。よって,
\mathrm{PA}=3\sqrt{21}
\end{align*}
真面目に余弦定理で求めると,次のようになる。
$2\mathrm{PA}=3\mathrm{PB}$ より,正の数 $x$ を用いて
\mathrm{PA}=3x,~\mathrm{PB}=2x
\end{align*}
&\mathrm{PA}^2+\mathrm{PB}^2-2\mathrm{PA}\Cdota\mathrm{PB}\cos\kaku{APB}=\mathrm{AB}^2 \\[4pt]
&9x^2+4x^2-2\Cdota3x\Cdota2x\Cdota\dfrac{1}{2}=(7\sqrt{3})^2 \\[4pt]
&7x^2=49\Cdota3 \\[4pt]
&x^2=21
\end{align*}
よって,$\mathrm{PA}=3\sqrt{21}$
ルナ三角形を使える知識になっている人にとっては,とても面倒な計算になる。
こういう浅い知識で解くのは良くないと目くじらを立てる人もいるが,そういう人は次のような直角三角形の一辺の長さ $x$ を求める問題でも,わざわざ三平方の定理を使って辺の長さを求めるのだろうか?
「これは $5:12:13$ の有名直角三角形だから,即座に $x=13$ として良い」と反論するのなら,ルナ三角形だって同じである。
そもそも有名かどうかなんて人によって違うのである。ルナ三角形という名前は置いといて,辺の長さの比が $2:3:\sqrt{7}$ で,$\sqrt{7}$ の対角が $60\Deg$ である三角形を,有名三角形として覚えている人なんていっぱいいるだろう。
あとは,こういうのを許さないというのなら,すべての数学の試験を記述式にしてしまえば良いのである。マーク式試験では,知識がある者が有利になるのは当然の結果である。しかし,使えるレベルの知識になるには,それ相応の努力が必要なのは言うまでもない。それが簡単な $5:12:13$ の直角三角形であったとしても,知らない人からすれば「計算せずに求められるのはずるい」となってしまう。
知識が簡単かどうかは人によって異なるため,使える知識になるならどんどん使えば良いと思う。
(2)の解答
(2) $\sankaku{PAB}$ の面積が最大となるのは $\mathrm{PA}=\myBox{オ}\sqrt{\myBox{カ}}$ のときである。
次は三角形の面積が最大になるときのPAの長さを求める問題。
点Pが弧AB上を動いて,$\sankaku{PAB}$ の面積が最大になるのは,点Pと辺ABの距離が最大になるときである。つまり,円の中心を通り,辺ABと垂直な直線と円の交点をPとすればよい。
このとき,$\mathrm{PA}=\mathrm{PB}$ となるから,$\sankaku{PAB}$ は正三角形になる。よって,$\mathrm{PA}=7\sqrt{3}$ である。
(3)の解答
(3) $\sin\kaku{PBA}$ の値が最大となるのは $\mathrm{PA}=\myBox{キク}$ のときであり,このとき $\sankaku{PAB}$ の面積は $\dfrac{\myBox{ケコ}\sqrt{\myBox{サ}}}{\myBox{シ}}$ である。
次は $\sin$ の値が最大になるときのPAの長さを求める問題。
一般に,$0\Deg\leqq\theta\leqq180\Deg$ のとき,$0\leqq\sin\theta\leqq1$ であるから,$\kaku{PBA}=90\Deg$ となることがあるのなら,そのときのPAの長さを求めれば良いことになる。
実際,次の図のように,APが直径となるように点Pをとれば,$\kaku{PBA}=90\Deg$ になる。
このとき,$\mathrm{PA}=2R=14$ である。
最後の三角形の面積はボーナス問題。
$\sankaku{PAB}$ は $1:2:\sqrt{3}$ の有名直角三角形であるから,$\mathrm{PB}=7$ である。よって,
\sankaku{PAB}&=\dfrac{1}{2}\Cdota\mathrm{AB}\Cdota\mathrm{PB} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\Cdota7\sqrt{3}\Cdota7 \\[4pt]
&=\dfrac{49\sqrt{3}}{2}
\end{align*}
2016年 センター数学ⅠA 三角比を解いた感想
(1)はルナ三角形を知っていれば,簡単にPAの長さを求めることができる。
(2),(3)についても,与えられた条件の意味を考えることで,簡単に求めることができるだろう。
今回の「ルナ三角形」などが使える知識だなと思った人は,次の記事を読むことをオススメする。