分数関数のグラフを描く問題や,最大最小問題などでは,分数関数の極値を求める必要があります。
極値をとる $x$ が複雑な値のときは,代入して極値を求めるのがとても面倒になります。
そこで「安田の定理」を利用することで,極値を楽に求めることができるようになります。
名前の通り「安田の定理」は安田亨先生が発見し,そう名付けたものです。しかし,現在ではいろいろな本に掲載され,良く知られた計算テクニックになっています。
それでは次の問題を考えましょう。
f(x)=\dfrac{6x^2-8x+3}{4(3x^2-3x+1)}
\end{align*}
Contents
安田の定理とは
安田の定理とは次のようなものである。
f'(x)=\dfrac{g'(x)h(x)-g(x)h'(x)}{\{h(x)\}^2}
\end{align*}
g'(\alpha)h(\alpha)-g(\alpha)h'(\alpha)=0
\end{align*}
f(\alpha)=\dfrac{g(\alpha)}{h(\alpha)}=\dfrac{g'(\alpha)}{h'(\alpha)}
\end{align*}
分数関数の極値を求める際に,分母・分子をそれぞれ微分して,極値をとる $x$ の値を代入するという,ロピタルの定理のような計算で極値を求めることができてしまう。
極値をとる $x$ が複雑な値のときには,そのまま代入するよりかなり速く極値を求めることができる。
考え方と解答
微分して増減を調べよう。
$f(x)$ を微分すると
f'(x)&=\dfrac{1}{4}\Cdota\dfrac{(12x-8)(3x^2-3x+1)-(6x^2-8x+3)(6x-3)}{(3x^2-3x+1)^2} \\[4pt]
&=\dfrac{6x^{2}-6x+1}{4(3x^{2}-3x+1)^{2}}
\end{align*}
&6x^2-6x+1=0 \\[4pt]
&x=\dfrac{3\pm\sqrt{3}}{6}
\end{align*}
ここまできたら $f(0)$ と $f(\beta)$ の大小関係を比べれば良いことがわかる。
ただ,$f(\beta)$ を求めるときに,そのまま代入するのでは面倒なので工夫をしよう。
工夫の仕方には「次数下げ」と「安田の定理」の2種類の方法があるが,ここでは安田の定理を利用した工夫で説明する。
安田の定理を利用して $f(\beta)$ を求めると次のようになる。
$(6x^2-8x+3)’=12x-8$, $(3x^2-3x+1)’=6x-3$ より
f(\beta)&=\dfrac{12\beta-8}{4(6\beta-3)} \\[4pt]
&=\dfrac{(3+\sqrt{3})-4}{2(3+\sqrt{3}-3)} \\[4pt]
&=\dfrac{-1+\sqrt{3}}{2\sqrt{3}} \\[4pt]
&=\dfrac{3-\sqrt{3}}{6}
\end{align*}
それでは解答の続き。
よって,$f(x)$ を最小にする $x$ の値は $x=\dfrac{3+\sqrt{3}}{6}$
安田の定理についてのまとめ
分数関数の極値を求めるときに,極値をとる $x$ が複雑な値の場合に役立つものが「安田の定理」である。
非常に便利なものであるが,安田の定理が三平方の定理のようにごく一般的なものではないため,何故そのような計算が成り立つのかを書いた方が良いだろう。
今回扱った福島大の問題では,安田の定理を使わない場合は,次数下げをして極値を求めるのが一般的な方法だろう。
知識はないよりあった方が良いと考えるため,一つの考え方として知っておいても損はない。