漸化式パターン7の第二弾です。前回は階比型と呼ばれる形の漸化式の解法について説明しました。今回は前回よりさらに複雑なタイプの問題を説明します。
多くの問題を扱って丁寧に解説しているので,自分の知識にして,複雑な問題も解けるようにしましょう。
それでは最初の問題はこちら。$g(n)=0$ のタイプですが,少し難しいです。
a_1=1,~a_{n+1}=na_n~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
足りないものを補う
式変形することで同じ形を作ることを考えよう。まず $a_n$ の係数に着目しよう。
$a_n$ の係数 $n$ を $\dfrac{n}{1}$ とみると,$n$ が大きいもので1が小さいものになるから,両辺を $n$ で割ってみよう。
\dfrac{a_{n+1}}{n}=a_n
\end{align*}
$a_{n+1}$ の分母が添字の $n+1$ より1小さい $n$ になっているから,$a_n$ の分母にも添字の $n$ より1小さい $n-1$ が欲しくなるね。ということで,さらに $n-1$ で割ろう。
\dfrac{a_{n+1}}{n(n-1)}=\dfrac{a_n}{n-1}
\end{align*}
何も解決しているように見えないが,これを繰り返していく。
&\dfrac{a_{n+1}}{n(n-1)}=\dfrac{a_n}{n-1} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{n(n-1)(n-2)}=\dfrac{a_n}{(n-1)(n-2)} \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{n(n-1)(n-2)(n-3)}=\dfrac{a_n}{(n-1)(n-2)(n-3)} \\[4pt]
&\qquad\qquad\vdots \\[4pt]
&\dfrac{a_{n+1}}{n(n-1)(n-2)\cdots2\Cdot1}=\dfrac{a_n}{(n-1)(n-2)\cdots2\Cdot1}
\end{align*}
最終的にはこうなる。つまり,解答ではこれを一気にすれば良い。
$a_{n+1}=na_n$ の両辺を $n!$ で割ると
\dfrac{a_{n+1}}{n!}=\dfrac{a_n}{(n-1)!}
\end{align*}
&\dfrac{a_n}{(n-1)!}=\dfrac{a_1}{0\,!} \\[4pt]
&a_n=(n-1)!
\end{align*}
足りないものを補う その2
次はこの問題をやってみよう。
まずは誘導に乗れるように,$(n+1)a_{n+1}-a_n$ の形が出てくるように変形していこう。
$n\geqq2$ のとき $a_{n-1}=(n+1)(a_n-a_{n+1})$ が成り立つから
&a_{n-1}=(n+1)a_n-(n+1)a_{n+1} \\[4pt]
&(n+1)a_{n+1}-a_n=na_n-a_{n-1}
\end{align*}
したがって,$n\geqq1$ のとき $b_{n+1}=b_n$ が成り立つ。
これはかなり簡単な漸化式になったね。$b_n$ を求めよう。
$a_1=1,~a_2=\dfrac{1}{2}$ より
b_1&=2a_2-a_1 \\[4pt]
&=2\Cdota\dfrac{1}{2}-1 \\[4pt]
&=0
\end{align*}
$b_n$ が求まったから $a_n$ を求めよう。
$b_n=0$ より
&(n+1)a_{n+1}-a_n=0 \\[4pt]
&(n+1)a_{n+1}=a_n
\end{align*}
さっきと同じように考えればいけるね。
&(n+1)!\,a_{n+1}=n!\,a_n
\end{align*}
&n!\,a_n=a_1 \\[4pt]
&a_n=\dfrac{1}{n!}
\end{align*}
他の単元の知識も必要
では次の問題をやってみよう。
数列が最大値や最小値をとる項を調べるときは,次のポイントに注意して調べよう。
数列 $\{a_n\}$ において
$a_n<a_{n+1}$ が成り立つ $n$ の値の範囲において,数列 $\{a_n\}$ は増加する。
$a_n>a_{n+1}$ が成り立つ $n$ の値の範囲において,数列 $\{a_n\}$ は減少する。
差をとってもいいけど,一般的には $\dfrac{a_{n+1}}{a_n}$ と1の大小を比較することが多い。
$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}<1$ とすると
&2^{2n-61}<1 \\[4pt]
&2n-61<0 \\[4pt]
&n<\dfrac{61}{2}
\end{align*}
a_1>a_2>\cdots>a_{30}>a_{31}<a_{32}<\cdots
\end{align*}
誘導に乗って $\{b_n\}$ の漸化式を立てて,それを解くことで一般項を求めよう。
$a_1>0$ で $2^{2n-61}>0$ だから,常に $a_n>0$ である。
$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}=2^{2n-61}$ において,底が2の対数をとると
&\log_2\dfrac{a_{n+1}}{a_n}=\log_22^{2n-61} \\[4pt]
&\log_2a_{n+1}-\log_2a_n=2n-61
\end{align*}
&b_{n+1}-b_n=2n-61
\end{align*}
b_n&=b_1+\Sum{k=1}{n-1}(2k-61) \\[4pt]
&=\log_2a_1+\dfrac{-59+(2n-63)}{2}\Cdota(n-1) \\[4pt]
&=\log_21+(n-61)(n-1) \\[4pt]
&=(n-1)(n-61)
\end{align*}
今回は2の指数部分に $n$ の式があったから,それを係数として下ろしたかったから対数をとったということを,しっかり理解しよう。
対数をとるときの底は何故2なんですか?
今回は $2^{2n-61}$ があったから底を2にして $2n-61$ となるようにしたけど,2が嫌なら3でも5でも10でもなんでもいいよ。こういうのを説明するのが面倒だからか知らないけど,全部「底が10の対数をとろう」と教えている人もいるから。
また,今回は $b_n$ を求めるだけで終わったけど,$a_n$ を求める場合は,次のようにしよう。
$b_n=\log_2a_n$ より
&a_n=2^{b_n} \\[4pt]
&a_n=2^{(n-1)(n-61)}
\end{align*}
漸化式パターン7の解法
パターン7は次のように解こう。
- うまく置き換えて $b_{n+1}=rb_n+h(n)$ となるようにする。
- パターン1~3になるから解法を思い出して $b_n$ を求める。
- 最初に置き換えた式から $a_n$ を求める。
練習問題
では次の問題をやってみよう。
a_1=1,~a_{n+1}=na_n+n-1~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
最初の問題と同じように考えれば出来るはず。
$a_{n+1}=na_n+n-1$ の両辺を $n!$ で割ると
\dfrac{a_{n+1}}{n!}=\dfrac{a_n}{(n-1)!}+\dfrac{n-1}{n!}
\end{align*}
b_{n+1}=b_n+\dfrac{n-1}{n!}
\end{align*}
数列 $\{b_n\}$ の階差数列の一般項が $\dfrac{n-1}{n!}$ と分かったね。通常ならシグマ計算をするけど,今回は別の方法で解いておくよ。
&b_{n+1}=b_n+\dfrac{n}{n!}-\dfrac{1}{n!} \\[4pt]
&b_{n+1}+\dfrac{1}{n!}=b_n+\dfrac{1}{(n-1)!}
\end{align*}
&b_n+\dfrac{1}{(n-1)!}=b_1+\dfrac{1}{0\,!} \\[4pt]
&b_n=2-\dfrac{1}{(n-1)!}
\end{align*}
a_n=2\Cdota(n-1)!-1
\end{align*}
練習問題2
もう1問やっておこう。
a_1=1,~a_{n+1}=27^{n^2-3n-9}a_n~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
(1) 数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。
(2) $a_n$ の値が最小となるときの $n$ の値を求めよ。
(1)は誘導はないけど,どうすれば良いか分かるようになろう。
$a_1=1>0$ で $27^{n^2-3n-9}>0$ だから,常に $a_n>0$ である。
$a_{n+1}=27^{n^2-3n-9}a_n$ の両辺において,底が3の対数をとると
&\log_3a_{n+1}=\log_327^{n^2-3n-9}a_n \\[4pt]
&\log_3a_{n+1}=\log_33^{3(n^2-3n-9)}+\log_3a_n \\[4pt]
&\log_3a_{n+1}=3(n^2-3n-9)+\log_3a_n
\end{align*}
\log_3a_n&=\log_3a_1+\Sum{k=1}{n-1}3(k^2-3k-9) \\[4pt]
&=\log_31+3\Cdota\dfrac{1}{6}(n-1)n(2n-1)-9\Cdota\dfrac{1}{2}(n-1)n-27(n-1) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}(n-1)\{n(2n-1)-9n-54\} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}(n-1)(2n^2-10n-54) \\[4pt]
&=(n-1)(n^2-5n-27)
\end{align*}
よって,$a_n=3^{(n-1)(n^2-5n-27)}$
(2)は数列の増減を調べれば解ける。
$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}<1$ とすると
&27^{n^2-3n-9}<1 \\[4pt]
&n^2-3n-9<0
\end{align*}
$f(4)=-5<0$$,~f(5)=1>0$ であり,$n\geqq5$ において $f(n)$ は単調に増加するから,$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}<1$ となるのは $1\leqq n\leqq4$ のときである。よって
a_1>a_2>a_3>a_4>a_5<a_6<a_7<\cdots
\end{align*}
まとめ
パターン7の漸化式を変形するときには,同じ形で表すことを意識しよう。また,数列の増減を調べる方法についてもマスターしよう。