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定積分を含む不等式の証明 問題4
問題4次の不等式を証明せよ。
\begin{align*}
\dfrac{\pi}{6}<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
\dfrac{\pi}{6}<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
ヒロ
この問題では $\dfrac{\pi}{2}$ を意識しよう。
最左辺の $\dfrac{\pi}{6}$ は
\begin{align*}
\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{3}\Cdota\dfrac{\pi}{2}
\end{align*}
と表すことができる。中央の式の形から,\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{3}\Cdota\dfrac{\pi}{2}
\end{align*}
\begin{align*}
\dfrac{\pi}{6}&=\Tint{\dfrac{1}{3}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx
\end{align*}
となれば都合が良い。\dfrac{\pi}{6}&=\Tint{\dfrac{1}{3}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx
\end{align*}
これを実現するためには,分母の $2+\cos x$ を3にして,分子の $x+1$ を1にすればよく,実際,分母を大きくして分子を小さくしていて,全体が小さくなるから不等式の証明ができる見通しが立つ。
ヒロ
次は最右辺を考えよう。
最右辺の $\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}$ は
\begin{align*}
\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}&=\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{\pi}{2}\right)^2+\dfrac{1}{2}\Cdota\dfrac{\pi}{2} \\[4pt]
&=\Tint{\dfrac{1}{4}x^2+\dfrac{1}{2}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx
\end{align*}
となれば都合が良い。\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}&=\dfrac{1}{4}\left(\dfrac{\pi}{2}\right)^2+\dfrac{1}{2}\Cdota\dfrac{\pi}{2} \\[4pt]
&=\Tint{\dfrac{1}{4}x^2+\dfrac{1}{2}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx
\end{align*}
これを実現するためには,分母の $2+\cos x$ を2にすればよく,実際,分母を小さくしているから,全体としては大きくなるから,この時点で,上の考えと合わせて「解けた」という感覚になる。
ヒロ
あとは答案になるように仕上げるだけ。
【証明】
$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$ において $0\leqq\cos x\leqq1$ であるから
$0\leqq x\leqq\dfrac{\pi}{2}$ において $0\leqq\cos x\leqq1$ であるから
\begin{align*}
\dfrac{1}{3}\leqq\dfrac{x+1}{2+\cos x}\leqq\dfrac{x+1}{2}
\end{align*}
が成り立つ。よって\dfrac{1}{3}\leqq\dfrac{x+1}{2+\cos x}\leqq\dfrac{x+1}{2}
\end{align*}
\begin{align*}
\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx
\end{align*}
が成り立つ。ここで\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx
\end{align*}
\begin{align*}
\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx&=\Tint{\dfrac{1}{3}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\pi}{6} \\[4pt]
\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx&=\Tint{\dfrac{1}{4}x^2+\dfrac{1}{2}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
であるから\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{1}{3}\;dx&=\Tint{\dfrac{1}{3}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\pi}{6} \\[4pt]
\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2}\;dx&=\Tint{\dfrac{1}{4}x^2+\dfrac{1}{2}x}{0}{\frac{\pi}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
\begin{align*}
\dfrac{\pi}{6}<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
が成り立つ。\dfrac{\pi}{6}<\dint{0}{\frac{\pi}{2}}\dfrac{x+1}{2+\cos x}\;dx<\dfrac{\pi^2+4\pi}{16}
\end{align*}
不等式の証明をするときの考え方
ヒロ
不等式の証明では,成り立つこと自体は既に分かっているため,解答には,成り立つことの理由を書けば良いだけ。
ヒロ
そのためには,不等式を見て何がどうなれば良いのかを考えることは非常に有効である。
ヒロ
優秀な講師ほど,上で説明した見通しの立て方を授業でうまく説明しているはず。
ヒロ
そうでない講師は予め解答を見た上で説明し,「こうすればうまくいくよ」とか「うまくいくように作られている」などと答えありきの後付けの解説をしている。そんな説明を聞いても,自分で解けるようにならないのは当たり前。ただ答えを聞いて納得してるだけだから。
ヒロ
自分で解けるようになるためには,解けるようになるための考え方を身に付けることが重要。