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定積分と不等式の証明の入試問題 第四弾【愛知教育大・有名問題・琉球大】

定積分を含む不等式の証明 part4 数学III
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2009年 琉球大の入試問題の考え方

2009年 琉球大$n$ を2以上の自然数とする。次の問に答えよ。
(1) 定積分 $\dint{1}{n}x\log x\;dx$ を求めよ。
(2) 次の不等式を証明せよ。
\begin{align*}
\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)<\Sum{k=1}{n}k\log k<\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)+n\log n
\end{align*}

(3) $\dlim{n\to\infty}\left\{(1^1\cdot2^2\cdot3^3\cdots n^n)^{\frac{1}{n^2\log n}}\right\}$ を求めよ。
ヒロ
ヒロ

まずは(1)から。

【(1)の解答】
\begin{align*}
\dint{1}{n}x\log x\;dx&=\Tint{\dfrac{1}{2}x^2\log x-\dfrac{1}{4}x^2}{1}{n} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

(2)は何を証明すれば良いか,明らかにしていこう。

与えられた不等式を変形していく。
\begin{align*}
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)<\Sum{k=1}{n}k\log k \\[4pt]
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\dint{1}{n}x\log x\;dx<\Sum{k=1}{n}k\log k \\[4pt]
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\Sum{k=1}{n-1}\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<\Sum{k=1}{n}k\log k
\end{align*}
ここで
\begin{align*}
\Sum{k=1}{n}k\log k&=\Sum{k=2}{n}k\log k \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{n-1}(k+1)\log(k+1)
\end{align*}
となるから
\begin{align*}
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\Sum{k=1}{n-1}\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<\Sum{k=1}{n-1}(k+1)\log(k+1) \\[4pt]
&k\log k<\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<(k+1)\log(k+1) \\[4pt]
&k\log k\leqq x\log x\leqq(k+1)\log(k+1)
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

ここまでの事前準備で証明を簡単にすることができるね。

【(2)の解答】
$y=x\log x$ は増加関数であるから,$k$ を自然数とするとき
\begin{align*}
k\log k\leqq x\log x\leqq(k+1)\log(k+1)
\end{align*}
が成り立つ。等号は常には成り立たないから
\begin{align*}
&\dint{k}{k+1}k\log k\;dx<\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<\dint{k}{k+1}(k+1)\log(k+1)\;dx \\[4pt]
&k\log k<\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<(k+1)\log(k+1)
\end{align*}
$k=1,~2,~\cdots,~n-1$ として,辺々を加えると次のようになる。
\begin{align*}
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\Sum{k=1}{n-1}\dint{k}{k+1}x\log x\;dx<\Sum{k=1}{n-1}(k+1)\log(k+1)
\end{align*}
ここで,(1)の結果より
\begin{align*}
\Sum{k=1}{n-1}\dint{k}{k+1}x\log x\;dx&=\dint{1}{n}x\log x\;dx \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)
\end{align*}
であるから
\begin{align*}
&\Sum{k=1}{n-1}k\log k<\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)<\Sum{k=1}{n}k\log k
\end{align*}
となる。よって,
\begin{align*}
&\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)<\Sum{k=1}{n}k\log k<\dfrac{1}{2}n^2\log n-\dfrac{1}{4}(n^2-1)+n\log n
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

段々慣れてきただろうか。グラフを描いて説明しなくて良いから,グラフを描くことが苦手な人でもスッキリした証明を書くことができるのがメリットだね。

ヒロ
ヒロ

不等式の証明のあとで極限を聞かれている場合,証明した不等式を利用して,最終的に,はさみうちの原理を用いて極限を求める問題だと思って間違いない。

ヒロ
ヒロ

(3)の式の見た目と(2)の不等式の見た目に差があるから,差がなくなるような変形・操作を考えないといけない。

ヒロ
ヒロ

(3)では掛け算になっているが,(2)の中央の辺は足し算になっているのに着目しよう。違和感がある言い方だけど,掛け算が足し算になるような操作を考えると,(2)の不等式にも含まれている「対数をとる」という操作が良さそうだね。

(3)の極限を考える式の自然対数をとると
\begin{align*}
&\log\left\{(1^1\cdot2^2\cdot3^3\cdots n^n)^{\frac{1}{n^2\log n}}\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{1}{n^2\log n}\log(1^1\cdot2^2\cdot3^3\cdots n^n) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{n^2\log n}\Sum{k=1}{n}k\log k
\end{align*}
となるから,(2)の不等式の辺々を $n^2\log n$ で割るのが第一手となる。
【(3)の解答】
(2)の不等式の辺々を $n^2\log n~(>0)$ で割ると
\begin{align*}
\dfrac{1}{2}-\dfrac{n^2-1}{4n^2\log n}<\dfrac{1}{n^2\log n}\Sum{k=1}{n}k\log k<\dfrac{1}{2}-\dfrac{n^2-1}{4n^2\log n}+\dfrac{1}{n}
\end{align*}
ここで
\begin{align*}
\dlim{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{n^2-1}{4n^2\log n}\right)&=\dlim{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1-\dfrac{1}{n^2}}{4\log n}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}
\end{align*}
であり,また,
\begin{align*}
\dlim{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{n^2-1}{4n^2\log n}+\dfrac{1}{n}\right)=\dfrac{1}{2} \\[4pt]
\end{align*}
であるから,はさみうちの原理より
\begin{align*}
\dlim{n\to\infty}\dfrac{1}{n^2\log n}\Sum{k=1}{n}k\log k=\dfrac{1}{2}
\end{align*}

$a_n=(1^1\cdot2^2\cdot3^3\cdots n^n)^{\frac{1}{n^2\log n}}$ とおくと,
\begin{align*}
\log a_n=\dfrac{1}{n^2\log n}\Sum{k=1}{n}k\log k
\end{align*}
であるから,
\begin{align*}
&\dlim{n\to\infty}\log a_n=\dfrac{1}{2} \\[4pt]
&\dlim{n\to\infty}a_n=\sqrt{e}
\end{align*}
ヒロ
ヒロ

「不等式 → 極限」の流れでは,ほとんど「はさみうちの原理」を利用するので,そのつもりで考えるようにしよう。

定積分を含む不等式の証明問題の解法のまとめ

ヒロ
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定積分を含む不等式の証明において,グラフを描いて面積の大小関係を考えることが苦手な人は,式変形による解法を身に付けよう。

ヒロ
ヒロ

次のまとめの手順に従って,解答を進めていくことで,ほとんどの問題を解くことができる。

$\Sum{k=a}{b}f(k)>g(n)$ の証明
  1. $g'(x)\fallingdotseq f(x)$ であることを確認する。
  2. $g(n)=\dint{p}{q}f(x)\;dx$ となる $p,~q$ を見つける。ほとんどの問題は,$\dint{0}{n}$, $\dint{0}{n+1}$, $\dint{1}{n}$, $\dint{1}{n+1}$ のいずれかである。
  3. 定積分を $\Sigma$ を用いて表す。代表例は次の通り。
    \begin{align*}
    &\dint{0}{n}=\Sum{k=1}{n}\dint{k-1}{k}=\Sum{k=0}{n-1}\dint{k}{k+1} \\[4pt]
    &\dint{0}{n+1}=\Sum{k=1}{n+1}\dint{k-1}{k}=\Sum{k=0}{n}\dint{k}{k+1} \\[4pt]
    &\dint{1}{n}=\Sum{k=2}{n}\dint{k-1}{k}=\Sum{k=1}{n-1}\dint{k}{k+1} \\[4pt]
    &\dint{1}{n+1}=\Sum{k=2}{n+1}\dint{k-1}{k}=\Sum{k=1}{n}\dint{k}{k+1}
    \end{align*}
  4. 証明するべき不等式が
    \begin{align*}
    \Sum{k=1}{n}f(k)>\Sum{k=1}{n}\dint{k}{k+1}g(x)\;dx
    \end{align*}
    と変形できた場合は
    \begin{align*}
    f(k)>\dint{k}{k+1}g(x)\;dx
    \end{align*}
    を証明することを考える。この不等式は
    \begin{align*}
    \dint{k}{k+1}f(k)\;dx>\dint{k}{k+1}g(x)\;dx
    \end{align*}
    と変形できるため,$k\leqq x\leqq k+1$ において,$f(k)\geqq g(x)$ であることを証明すれば良い。
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