面積公式である6分の1公式や12分の1公式については,もう使えるようになっているだろうか?定積分で表された式を見て,結論の式がすぐに出てくるだろうか?
どうなるんだっけ?となる人は,ベータ関数について学習することで,6分の1公式や12分の1公式などの面積公式を簡単なものに感じるだろう。ただし,数学IIIを必要としない文系の人にとっては,少しオーバーワークになるような気がする。
ベータ関数とは
wikipediaによると,ベータ関数は次のように定義されている。
ベータ関数とは,ルジャンドルの定義に従って第一種オイラー積分とも呼ばれる特殊関数である。
wikipediaより引用
B(x,~y)=\dint{0}{1}t^{x-1}(1-t)^{y-1}\;dt
\end{align*}
ベータ関数に関する入試問題【2019年 兵庫県立大】
A(m,~n)=\dint{a}{b}(x-a)^m(x-b)^n\;dx
\end{align*}
(1) 関数 $f(x),~g(x)$ は微分可能で,$f(a)=0$ および $g(b)=0$ を満たすとする。このとき,次の等式が成り立つことを示せ。
\dint{a}{b}f'(x)g(x)\;dx+\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx=0
\end{align*}
(m+1)A(m,~n+1)+(n+1)A(m+1,~n)
\end{align*}
A(m,~n)=(-1)^n\dfrac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(b-a)^{m+n+1}
\end{align*}
$f'(x)$ が $f(x)$ に,$g(x)$ が $g'(x)$ になっているから部分積分でやってみよう。
\dint{a}{b}f'(x)g(x)\;dx&=\tint{f(x)g(x)}{a}{b}-\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx \\[4pt]
&=f(b)g(b)-f(a)g(a)-\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx
\end{align*}
&\dint{a}{b}f'(x)g(x)\;dx=-\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx \\[4pt]
&\dint{a}{b}f'(x)g(x)\;dx+\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx=0
\end{align*}
式の形から(1)を利用するんだろうなって思えるようにしよう。$f(x)$ と $g(x)$ をどう設定するのかが重要になるね。
$f(x)=(x-a)^{m+1}$, $g(x)=(x-b)^{n+1}$ とすると,$f(x),~g(x)$ は微分可能で,$f(a)=0,~g(b)=0$ を満たすから(1)の等式が成り立つ。ここで
\dint{a}{b}f'(x)g(x)\;dx&=\dint{a}{b}(m+1)(x-a)^m(x-b)^{n+1}\;dx \\[4pt]
&=(m+1)A(m,~n+1) \\[4pt]
\dint{a}{b}f(x)g'(x)\;dx&=\dint{a}{b}(n+1)(x-a)^{m+1}(x-b)^n\;dx \\[4pt]
&=(n+1)A(m+1,~n)
\end{align*}
(m+1)A(m,~n+1)+(n+1)A(m+1,~n)=0
\end{align*}
誘導がなければ次のようにすれば良い。
A(m,~n+1)&=\dint{a}{b}(x-a)^m(x-b)^{n+1}\;dx \\[4pt]
&=\Tint{\dfrac{(x-a)^{m+1}}{m+1}(x-b)^{n+1}}{a}{b}-\dint{a}{b}\dfrac{(x-a)^{m+1}}{m+1}\Cdota(n+1)(x-b)^n\;dx \\[4pt]
&=-\dfrac{n+1}{m+1}\dint{a}{b}(x-a)^{m+1}(x-b)^n\;dx \\[4pt]
&=-\dfrac{n+1}{m+1}A(m+1,~n)
\end{align*}
(m+1)A(m,~n+1)+(n+1)A(m+1,~n)=0
\end{align*}
(3)は(2)の式を利用しよう。
(2)の結果より
A(m,~n+1)=-\dfrac{n+1}{m+1}A(m+1,~n)
\end{align*}
A(m,~n)=-\dfrac{n}{m+1}A(m+1,~n-1)
\end{align*}
あとはこれを繰り返して使っていこう。
$A(m,~n)$ の左側は1増加し,右側は1減少するから,和は常に $m+n$ である。
つまり,最後は $A(m+n,~0)$ となることが分かるから,そのときの係数を考える。
A(m,~n)&=-\dfrac{n}{m+1}A(m+1,~n-1) \\[4pt]
&=(-1)^2\dfrac{n(n-1)}{(m+2)(m+1)}A(m+2,~n-2) \\[4pt]
&=(-1)^3\dfrac{n(n-1)(n-2)}{(m+3)(m+2)(m+1)}A(m+3,~n-3) \\[4pt]
&=\cdots\cdots \\[4pt]
&=(-1)^{n+1}\dfrac{n(n-1)\cdots1}{(m+n)(m+n-1)\cdots(m+1)}A(m+n,~0) \\[4pt]
&=(-1)^{n+1}\dfrac{m!\,n!}{(m+n)!}A(m+n+1,~0)
\end{align*}
A(m+n,~0)&=\dint{a}{b}(x-a)^{m+n}\;dx \\[4pt]
&=\Tint{\dfrac{(x-a)^{m+n+1}}{m+n+1}}{a}{b} \\[4pt]
&=\dfrac{(b-a)^{m+n+1}}{m+n+1}
\end{align*}
A(m,~n)=(-1)^n\dfrac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(b-a)^{m+n+1}
\end{align*}
ベータ関数を利用して面積公式(1/6公式・1/12公式など)を導出する
面積を求める公式として,6分の1公式・12分の1公式があるが,個人的には次のようにベータ関数の公式を覚えてしまっている。
\dint{\alpha}{\beta}(x-\alpha)^m(\beta-x)^n\;dx=\dfrac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(\beta-\alpha)^{m+n+1}
\end{align*}
まずは6分の1公式から導出しよう。
$m=1,~n=1$ とすると
\dint{\alpha}{\beta}(x-\alpha)(\beta-x)\;dx&=\dfrac{1!\,1!}{3!}(\beta-\alpha)^3 \\[4pt]
&=\dfrac{1}{6}(\beta-\alpha)^3
\end{align*}
次は12分の1公式を導出しよう。
$m=1,~n=2$ とすると
\dint{\alpha}{\beta}(x-\alpha)(\beta-x)^2\;dx&=\dfrac{1!\,2!}{4!}(\beta-\alpha)^4 \\[4pt]
&=\dfrac{1}{12}(\beta-\alpha)^4
\end{align*}
また,4次関数のグラフと二重接線(複接線)で囲まれる図形の面積は,$m=2,~n=2$ とすれば求めることができる。これは30分の1公式と呼ばれる。
$m=2,~n=2$ とすると
\dint{\alpha}{\beta}(x-\alpha)^2(\beta-x)^2\;dx&=\dfrac{2!\,2!}{5!}(\beta-\alpha)^5 \\[4pt]
&=\dfrac{1}{30}(\beta-\alpha)^5
\end{align*}
f(x)-g(x)=a(x-\alpha)^2(x-\beta)^2
\end{align*}
まとめ
$\dint{\alpha}{\beta}(x-\alpha)^m(\beta-x)^n\;dx$ を部分積分することで,$\dfrac{m!\,n!}{(m+n+1)!}(\beta-\alpha)^{m+n+1}$ となる計算を定期的に何度もすることで,入試に出題されたとしても困ることはなくなるだろう。
また,6分の1公式や12分の1公式もより強固なものになるだろう。