前回は多項式の係数の和の求め方について説明しました。$x$ の多項式ならば,$x$ に1を代入すればの係数の和を求めることができました。今回は二項係数の和について説明します。結局は「係数の和」ですから,何らかの多項式を考えることになります。
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二項係数と二項定理
${}_n\!\mathrm{C}_k$ は二項係数と呼ばれるものだったね。
はい!
「係数」とあるからには,何か多項式の係数なんだろうね?
二項定理は関係ありますか?
関係あるっていうか,それだよ!
(a+b)^n&={}_n\!\mathrm{C}_0a^nb^0+{}_n\!\mathrm{C}_1a^{n-1}b^1+{}_n\!\mathrm{C}_2a^{n-2}b^2+\cdots \\
&\quad +{}_n\!\mathrm{C}_ka^{n-k}b^k+\cdots+{}_n\!\mathrm{C}_{n-1}a^1b^{n-1}+{}_n\!\mathrm{C}_na^0b^n \\
&=\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_ka^{n-k}b^k
\end{align*}
二項係数 ${}_n\!\mathrm{C}_k$ は $(1+x)^n$ の展開式における $x^k$ の項の係数である。
$(a+b)^n$ は $a+b$ を $n$ 個掛け合わせたものである。
(a+b)^n=\underbrace{(a+b)(a+b)\cdots(a+b)}_{n\text{個}}
\end{align*}
二項定理って,前にやった $(a+b+c)^3$ の展開が分かってたら簡単ですね!
そうだね!
ちなみに,二項係数を三角形状に並べたものはパスカルの三角形と呼ばれているよ。
二項係数を三角形状に並べたものをパスカルの三角形という。
二項展開を利用して二項係数の和を求める
二項定理において,$a=1,~b=x$ とした式はよく利用するから,いつでも使えるようにしておこう!
(1+x)^n&={}_n\!\mathrm{C}_0+{}_n\!\mathrm{C}_1x+{}_n\!\mathrm{C}_2x^2+\cdots \\
&\quad +{}_n\!\mathrm{C}_kx^k+\cdots+{}_n\!\mathrm{C}_{n-1}x^{n-1}+{}_n\!\mathrm{C}_nx^n \\
&=\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_kx^k
\end{align*}
問題の式は,この式の係数の和だから,$x$ に1を代入すれば良いってことですね!
そういうことだね!
&(1+1)^n=\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_k \\
&\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_k=2^n
\end{align*}
簡単ですね!
有名な問題だから,大学入試で出題されたら確実に得点できるようにしよう!
場合の数を利用して二項係数の和を求める
ここで,もう1問やってみよう!
それぞれの人について,A か B の2通りの選び方があって,$n$ 人いるから,全部で $2^n$ 通り $\cdots$ ①ですね!
そうだね!別の考え方として次のような考え方をしても良いよね?
(\mathrm{A},\mathrm{B})=(0,n),(1,n-1),\cdots,(k,n-k),\cdots,(n,0)
\end{align*}
よって,それらをすべて加えて,求める場合の数は $\,\displaystyle\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_k~\cdots$ ② となる。
確かにそうですね!
どちらの考え方でも,結局全体としての場合の数は等しいから,①と②は等しくなるね。つまり $\,\displaystyle\sum_{k=0}^n{}_n\!\mathrm{C}_k=2^n\,$ が成り立つってこと。
なるほど!意味を持たせると分かりやすいですね。
そうだね。
まとめ
二項係数の和については,結果も覚えておこう!その際には,場合の数を用いる考え方を利用すると覚えやすいよ。
- $(1+x)^n$ の展開式に $x=1$ を代入する。
- $n$ 人を2つの部屋に分ける場合の数を考える。
また,二項係数には様々な性質があるため,有名な公式についても知っておこう。