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漸化式パターン5:$f(n)a_{n+1}a_n=pa_{n+1}+qa_n$$~(pq\neq0)$ 型の解法

漸化式パターン5 数学IAIIB

漸化式パターンの見分け方として,$a_{n+1}a_n$ の積の形をを見たらパターン5かな?と思って下さい。もしパターン5と考えて解けなければ別のパターンになります。

実はこの漸化式パターン5の形はパターン4と同じなのでパターン4に入れても良いと思うのですが,漸化式を見てすぐに同じ形だとは中々分からないため,パターン5として別に扱っています。

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パターン5はパターン4と同じ形

パターン4までと同様に,漸化式を「$a_{n+1}=\cdots$」の形に変形しましょう。

$f(n)a_{n+1}a_n=pa_{n+1}+qa_n$ より
\begin{align*}
&f(n)a_{n+1}a_n-pa_{n+1}=qa_n \\[4pt]
&\{f(n)a_n-p\}a_{n+1}=qa_n \\[4pt]
&a_{n+1}=\dfrac{qa_n}{f(n)a_n-p}
\end{align*}

これでパターン4の形になりました。したがって,パターン4の解法を適用すれば解くことができます。しかし,この形に変形してから解くのはちょっと遠回りなので,パターン4の形を経由しない変形方法を身に付けましょう。

例題

パターン4の一部ともいえるパターン5の出題率は約2%です。極端に出題率が低いため,練習問題も少ないのですが,出題されたときに備えて,しっかり解法を身に付けましょう。

それでは,問題を解いてみましょう。

2019年 福岡大・医数列 $\{a_n\}$ は $a_1=\dfrac{1}{3},~$$a_{n+1}=a_n-(8n+4)a_na_{n+1}$$~(n=1,2,3,\cdots)$ をみたすとする。このとき $\{a_n\}$ の一般項は $\myhako$ である。また,初項から第 100 項までの総和 $S_{100}$ は $\myhako$ である。

$a_n\neq0$ を示す

ヒロ
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漸化式パターン5の解法は「$a_{n+1}a_n$ で割る」の一言。しかし,ある自然数 $n$ に対して $a_n=0$ となると割れないため,常に $a_n\neq0$ であることを示しておこう。

ヒロ
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これは背理法によって簡単に示すことができる。

ある自然数 $n$ に対して $a_{n+1}=0$ となると仮定する。漸化式において $a_{n+1}=0$ を代入すると,$a_n=0$ となる。これを繰り返すことで,$a_1=0$ となるが,$a_1=\dfrac{1}{3}\neq0$ であるから矛盾する。
よって,常に $a_n\neq0$ である。
ヒロ
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ここで,漸化式の使い方に難しさを感じるだろう。通常は,第 $n$ 項から第 $n+1$ 項を求めるように,添字が増える方向に漸化式を使う。しかし,ここでは,「第 $n+1$ 項が 0 であるときに第 $n$ 項も 0 である」と,添字が1つ減る方向に漸化式を使っている

ヒロ
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漸化式にはこのような使い方もあることも覚えておこう。

$a_{n+1}a_n$ で割る

ヒロ
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これで $a_n\neq0$ であることが示せたので割ることができるね。解答を進めよう。

与えられた漸化式の両辺を $a_{n+1}a_n$ で割ると
\begin{align*}
&\dfrac{1}{a_n}=\dfrac{1}{a_{n+1}}-(8n+4) \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{1}{a_n}+(8n+4)
\end{align*}
$\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおくと,数列 $\{b_n\}$ の階差数列の一般項が $8n+4$ となるから,$n\geqq2$ のとき
\begin{align*}
b_n&=b_1+\Sum{k=1}{n-1}(8k+4) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{a_1}+\dfrac{12+(8n-4)}{2}\Cdota(n-1) \\[4pt]
&=3+(4n+4)(n-1) \\[4pt]
&=4n^2-1
\end{align*}
これは $n=1$ のときも成り立つ。$a_n=\dfrac{1}{b_n}$ より
\begin{align*}
a_n=\dfrac{1}{4n^2-1}
\end{align*}
ヒロ
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後半は数列の和を求める問題。分数式だから「差の形」を作って求めよう。

\begin{align*}
S_{100}&=\Sum{k=1}{100}\dfrac{1}{4k^2-1} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{100}\dfrac{1}{(2k-1)(2k+1)} \\[4pt]
&=\Sum{k=1}{100}\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{2k-1}-\dfrac{1}{2k+1}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{1}{2}\left(1-\dfrac{1}{201}\right) \\[4pt]
&=\dfrac{100}{201}
\end{align*}

1次式の和は等差数列の和

ヒロ
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ここで $\Sum{k=1}{n-1}(8k+4)$ を求めるときに,シグマ公式を利用せず,等差数列の和として計算しているよ。

ヒロ
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一般項が $n$ の1次式で表される数列は等差数列であるということを利用しよう。等差数列の和を求めるのに必要なものは,次の3つ。

等差数列の和を求めるのに必要なもの
  1. 初項
  2. 末項
  3. 項数
ヒロ
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まず,初項は $k=1$ のときで $8\Cdot1+4=12$

ヒロ
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次に,末項は $k=n-1$ のときだけど,$k=n-1$ を代入するのではない。$k=n$ のときは $8n+4$ になることは,すぐに分かる。さらに,$8n+4$ と表される数列は公差が 8 の等差数列であることを考えると,$k=n-1$ のときは,$8n+4$ から 8 を引くことで $8n-4$ と求めることができる。

ヒロ
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最後の項数は $k$ が 1 から $n-1$ まで変化させて加えるのだから $n-1$ ということも分かる。

等差数列の和は
\begin{align*}
(等差数列の和)=\dfrac{(初項)+(末項)}{2}\times(項数)
\end{align*}
と表すことができるから
\begin{align*}
\Sum{k=1}{n-1}(8k+4)=\dfrac{12+(8n-4)}{2}\Cdota(n-1)
\end{align*}
となる。
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もちろん,次のようにシグマ公式を利用して求めても構わない。

\begin{align*}
\Sum{k=1}{n-1}(8k+4)&=8\Cdota\dfrac{1}{2}(n-1)n+4(n-1)
\end{align*}

$f(n)a_{n+1}a_n=pa_{n+1}+qa_n$$~(pq\neq0)$ 型の漸化式の解法

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それでは解法をまとめておこう。パターン5の漸化式は次の手順で解こう。

漸化式パターン5の解法
  1. $a_n\neq0$ を示す。
  2. 両辺を $a_{n+1}a_n$ で割って,$f(n)=\dfrac{p}{a_n}+\dfrac{q}{a_{n+1}}$ とする。
  3. $\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおいて変形すると,$b_{n+1}=-\dfrac{p}{q}b_n+\dfrac{f(n)}{q}$ となる。
  4. $f(n)$ が定数の場合,$p=-q$ なら等差型,$p\neq-q$ ならパターン2になるから,対応する解法を思い出す。
    $f(n)$ が定数でない場合,$p=-q$ なら階差型,$p\neq-q$ ならパターン3になるから,対応する解法を思い出す。
  5. $b_n$ を求めて,一般項 $a_n=\dfrac{1}{b_n}$ を求める。

漸化式パターン5の練習

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以上の解法を踏まえて練習しておこう。

2010年 慶應義塾大・理工数列 $\{a_n\}$ が
\begin{align*}
a_1=\dfrac{1}{4},~2a_n-a_{n+1}-3a_na_{n+1}=0~(n=1,2,3,\cdots)
\end{align*}
を満たしている。この数列の一般項は,$a_n=\myhako$ で与えられる。また,$\dlim{n\to\infty}a_n=\myhako$ である。
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解答を下に書いておくよ。解いたら答え合わせをしよう。

漸化式において,ある $n$ に対して $a_{n+1}=0$ と仮定すると,$a_n=0$ なる。これを繰り返すと,$a_1=0$ となるが,$a_1=\dfrac{1}{4}\neq0$ に矛盾する。よって,常に $a_n\neq0$ である。
漸化式の両辺を $a_na_{n+1}$ で割ると
\begin{align*}
&\dfrac{2}{a_{n+1}}-\dfrac{1}{a_n}-3=0 \\[4pt]
&\dfrac{1}{a_{n+1}}=\dfrac{1}{2}\Cdota\dfrac{1}{a_n}+\dfrac{3}{2}
\end{align*}
$\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおくと,
\begin{align*}
b_1=4,~b_{n+1}=\dfrac{1}{2}b_n+\dfrac{3}{2}
\end{align*}
特性方程式 $x=\dfrac{1}{2}x+\dfrac{3}{2}$ を解いて,$x=3$ だから
\begin{align*}
&b_{n+1}-3=\dfrac{1}{2}(b_n-3)
\end{align*}
数列 $\{b_n-3\}$ は公比 $\dfrac{1}{2}$ の等比数列だから
\begin{align*}
&b_n-3=(b_1-3)\Cdota\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1} \\[4pt]
&b_n=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}+3
\end{align*}
$a_n=\dfrac{1}{b_n}$ より
\begin{align*}
&a_n=\dfrac{1}{\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}+3} \\[4pt]
&a_n=\dfrac{2^{n-1}}{3\Cdot2^{n-1}+1}
\end{align*}

$\dlim{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}=0$ より,
\begin{align*}
\dlim{n\to\infty}a_n=\dfrac{1}{3}
\end{align*}
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もう1問やっておこう。

2015年 名古屋市立大数列 $\{a_n\}$ が $\dfrac{a_n-3a_{n+1}}{4(n+1)}=a_na_{n+1}$$~(n=1,2,3,\cdots)$ で定義されている。ただし,初項 $a_1=1$ とする。次の問いに答えよ。
(1) $a_n\neq0$ を示せ。
(2) $b_n=\dfrac{1}{a_n}+2n$$~(n=1,2,3,\cdots)$ とおくとき,数列 $\{b_n\}$ のみたす漸化式を求めよ。
(3) 数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。
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誘導付きの問題にも対応できるようにしておこう。解いた後で解説を読もう。

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(1)についてはサクッと書けるようにしよう。

【(1)の解答】
ある $n$ に対して,$a_{n+1}=0$ とすると,与えられた漸化式より,
\begin{align*}
&\dfrac{a_n}{4(n+1)}=0 \\[4pt]
&a_n=0
\end{align*}
これを繰り返すことによって,$a_1=0$ となるが,これは $a_1=1\neq0$ に矛盾する。
したがって,すべての自然数 $n$ に対して,$a_n\neq0$ である。
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元の数列 $\{a_n\}$ がみたすのが二項間漸化式だから,数列 $\{b_n\}$ の漸化式を求めるときにも二項間漸化式を考えよう。

ヒロ
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つまり $b_{n+1}$ と $b_n$ の関係式を導くことを考えるから,$b_{n+1}$ を計算していって $b_n$ で表すのが解答の基本的な方針となる。

【(2)の解答】
与えられた漸化式より
\begin{align*}
&a_n-3a_{n+1}=4(n+1)a_na_{n+1} \\[4pt]
&\{4(n+1)a_n+3\}a_{n+1}=a_n \\[4pt]
&a_{n+1}=\dfrac{a_n}{4(n+1)a_n+3}
\end{align*}
となるから,
\begin{align*}
b_{n+1}&=\dfrac{1}{a_{n+1}}+2(n+1) \\[4pt]
&=\dfrac{4(n+1)a_n+3}{a_n}+2(n+1) \\[4pt]
&=4(n+1)+\dfrac{3}{a_n}+2(n+1) \\[4pt]
&=3\left(\dfrac{1}{a_n}+2n\right)+6 \\[4pt]
&=3b_n+6
\end{align*}
ヒロ
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これでパターン2になったから,特性方程式を解いて等比型に変形することで一般項を求めよう。

特性方程式 $x=3x+6$ を解いて,$x=-3$
【(3)の解答】
(2)の結果より
\begin{align*}
&b_{n+1}+3=3(b_n+3)
\end{align*}
数列 $\{b_n+3\}$ は公比3の等比数列である。
ここで,$b_1=\dfrac{1}{a_1}+2=3$ であるから
\begin{align*}
&b_n+3=(b_1+3)\Cdota3^{n-1} \\[4pt]
&b_n=6\Cdota3^{n-1}-3 \\[4pt]
&b_n=2\Cdota3^n-3
\end{align*}
$a_n=\dfrac{1}{b_n-2n}$ より
\begin{align*}
a_n=\dfrac{1}{2\Cdot3^n-2n-3}
\end{align*}

まとめ

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漸化式パターン5も元はパターン4なので,$\dfrac{1}{a_n}=b_n$ とおくことで,より簡単なパターンに帰着することができる。そのように誘導されることもあるが,誘導を頼りにするのではなく,誘導がなくても解けるようにしておこう。

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