ここではブラーマグプタの公式について説明します。
大学入試問題では,「ブラーマグプタの公式」という公式の名前が出ることは少ないですが,その公式の証明が出題されることがあります。
そのため,ブラーマグプタの公式を知っているかどうかではなく,証明できるかどうかがポイントとなります。
一度は経験しておく方が良いでしょう。
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ブラーマグプタの公式

ヒロ
ブラーマグプタの公式とは次のようなものである。
ブラーマグプタの公式円周上に4点A, B, C, Dがあり,AB=a, BC=b, CD=c, DA=d とする。s=a+b+c+d2とすると,四角形ABCDの面積 S は,

S=√(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)
と表される。

ヒロ
ちなみに,三角形を四角形の特別な場合と見て d=0 とするとヘロンの公式が得られる。
2019年 京都府立大

ヒロ
2019年の京都府立大でブラーマグプタの公式の証明が出題されている。
2019年 京都府立大以下の問いに答えよ。
(1) a4−2a2b2−2a2c2+b4−2b2c2+c4 を因数分解せよ。
(2) 円に内接する四角形ABCDにおいて,AB=a, BC=b, CD=c, DA=d とする。四角形ABCDの面積は,
(1) a4−2a2b2−2a2c2+b4−2b2c2+c4 を因数分解せよ。
(2) 円に内接する四角形ABCDにおいて,AB=a, BC=b, CD=c, DA=d とする。四角形ABCDの面積は,
14√(−a+b+c+d)(a−b+c+d)(a+b−c+d)(a+b+c−d)
であることを示せ。【(1)の考え方と解答】
a, b, c の3文字あり,どれについても最高次数が等しいから a に着目して因数分解しよう。
a, b, c の3文字あり,どれについても最高次数が等しいから a に着目して因数分解しよう。
(与式)=a4−2(b2+c2)a2+b4−2b2c2+c4=a4−2(b2+c2)a2+(b2−c2)2={a2−(b+c)2}{a2−(b−c)2}=(a+b+c)(a−b−c)(a+b−c)(a−b+c)
(2) 円に内接する四角形ABCDにおいて,AB=a, BC=b, CD=c, DA=d とする。四角形ABCDの面積は,
14√(−a+b+c+d)(a−b+c+d)(a+b−c+d)(a+b+c−d)であることを示せ。
【(2)の考え方と解答】
対角線を引いて2つの三角形に分割して面積を求めよう。
∠BAD=θ とし,四角形ABCDの面積を S とする。

対角線を引いて2つの三角形に分割して面積を求めよう。
∠BAD=θ とし,四角形ABCDの面積を S とする。

S=△ABD+△BCD=12adsinθ+12bcsin(180°−θ)=12(ad+bc)sinθ ⋯⋯①
△ABD と △BCD において,余弦定理を用いるとBD2=a2+d2−2adcosθBD2=b2+c2−2bccos(180°−θ)=b2+c2+2bccosθ
2式から BD2 を消去してa2+d2−2adcosθ=b2+c2+2bccosθcosθ=a2+d2−b2−c22(ad+bc)cos2θ=(a2+d2−b2−c2)24(ad+bc)2
sinθ>0 であるからsinθ=√1−cos2θ=√1−(a2+d2−b2−c2)24(ad+bc)2=√4(ad+bc)2−(a2+d2−b2−c2)22(ad+bc)=√{2(ad+bc)+(a2+d2−b2−c2)}{2(ad+bc)−(a2+d2−b2−c2)}2(ad+bc)=√{(a+d)2−(b−c)2}{(b+c)2−(a−d)2}2(ad+bc)=√(a+d+b−c)(a+d−b+c)(b+c+a−d)(b+c−a+d)2(ad+bc) ⋯⋯②
②を①に代入するとS=14√(a+d+b−c)(a+d−b+c)(b+c+a−d)(b+c−a+d)=14√(−a+b+c+d)(a−b+c+d)(a+b−c+d)(a+b+c−d)
よって,示された。
ヒロ
最初に書いた公式と形を揃えておこう。
【ブラーマグプタの公式】
s=a+b+c+d2 とすると
s=a+b+c+d2 とすると
−a+b+c+d=2(s−a)a−b+c+d=2(s−b)a+b−c+d=2(s−c)a+b+c−d=2(s−d)
となるからS=14√2(s−a)∙2(s−b)∙2(s−c)∙2(s−d)=√(s−a)(s−b)(s−c)(s−d)
となり,最初に書いた形と一致する。2019年 産業医科大

ヒロ
実際に2019年に産業医科大学で出題された問題を解いてみよう。
2019年 産業医科大円に内接する四角形ABCDにおいて
AB=3, BC=4, CD=5, DA=6
であるとき,四角形ABCDの面積は ア である。【考え方と解答】
余弦定理を利用した解法については,別の記事「円に内接する四角形の面積」を参考にして各自で解いて欲しい。ここではブラーマグプタの公式を利用して解いておく。
s=3+4+5+62=9 であるから,四角形ABCDの面積 S は
余弦定理を利用した解法については,別の記事「円に内接する四角形の面積」を参考にして各自で解いて欲しい。ここではブラーマグプタの公式を利用して解いておく。
s=3+4+5+62=9 であるから,四角形ABCDの面積 S は
S=√(9−3)(9−4)(9−5)(9−6)=√6∙5∙4∙3=6√10

ヒロ
このような答えだけを求めれば良い入試においては,短時間で解くことが重要であるから,ブラーマグプタの公式を知っているだけで有利になると思われる。