中学校では平方根を表す記号である根号の意味を理解することが重要でした。
そのため,中学校の定期テストでは,意味を理解しているかどうかを問う問題や正しく計算できるかどうかを試される問題が出題されたと思います。
高校では根号の中に無理数が入ったややこしい式も扱います。
根号の中に根号がある入れ子構造になっているものを二重根号と呼びます。
二重根号で書かれた式は,外側の根号を使わずに表すことができるものもあり,この操作のことを「二重根号を外す」と言います。
入試では「式は最も簡単な形にせよ」という注意書きがある場合は,二重根号を外すことができるものについては二重根号を外していないと減点されます。
そのため二重根号を外せる式については,しっかり二重根号を外すことができるようにするため,高校の定期テストで必ず出題される問題の1つになっています。
ここでは二重根号の外し方の説明をして,実際に高校の定期テストで出題された二重根号に関する問題の解説をします。
Contents
平方根を含む数の2乗の計算
二重根号の説明の前に,平方根を含む数の2乗の計算方法について説明しておこう。
簡単ですね!
(\sqrt{2}+\sqrt{3})^2&=2+2\sqrt{6}+3 \\[4pt]
&=5+2\sqrt{6}
\end{align*}
確かに合っているけど,改善して欲しい部分がある。
平方公式を正しく使っているけど,$a\sqrt{b}$ の形の無理数を2乗すると有理数になることは分かっているから,有理数になる部分と無理数になる部分のそれぞれをまとめて計算できるようにしよう。
(\sqrt{2}+\sqrt{3})^2&=\color{red}{((\sqrt{2})^2+(\sqrt{3})^2)+2\Cdota\sqrt{2}\Cdota\sqrt{3}} \\[4pt]
&=5+2\sqrt{6}
\end{align*}
赤色で書いた部分は実際には頭の中でやって欲しい計算。つまり,有理数になる部分を計算して2と3を足して5と書けるようになろうという話。
このことを意識すると,根号の中身が文字になっても,次のように有理数が前にくるように一発で書けるようになる。
そしてこの意識が二重根号を外し方を理解するのに役立つ。
なるほど。今まで平方公式を使って何も考えずに展開してたことに気付きました。
二重根号の外し方
それでは具体的な数,例えば $\sqrt{8+2\sqrt{15}}$ を考えてみよう。
$\sqrt{8+2\sqrt{15}}=\sqrt{a}+\sqrt{b}$ と変形できたとする。両辺を2乗すると
8+2\sqrt{15}=a+b+2\sqrt{ab}
\end{align*}
\begin{cases}
a+b=8 \\[4pt]
ab=15
\end{cases}
\end{align*}
足して8,掛けて15になる2つの数を考えるのだから,これは中学校で散々やってきてるはずだか
ら,3と5が条件を満たす2数だと分かるだろう。
つまり,$\sqrt{8+2\sqrt{15}}$ は
\sqrt{8+2\sqrt{15}}=\sqrt{3}+\sqrt{5}
\end{align*}
二重根号を外す式を公式として書けば次のようになる。
これは丸暗記するものではなく理解するものだということを理解しよう。
ちなみに符号が負の方は注意が必要だよ。
$\sqrt{a+b-2\sqrt{ab}}$ は正の数であることに注意しよう。
$a$ と $b$ は異なる2数だから,$\sqrt{a}-\sqrt{b}$ と $\sqrt{b}-\sqrt{a}$ では符号が異なる。
一方が正でもう一方が負になっているはず。しかし $\sqrt{a+b-2\sqrt{ab}}$ は正の数
だから,$a$ と $b$ のうち大きい方を $a$ とすると
\sqrt{a+b-2\sqrt{ab}}=\sqrt{a}-\sqrt{b}
\end{align*}
定期テストで実際に出題された二重根号を外す問題
高校1年の1学期中間テストに実際に出題された二重根号を外す問題を解いていこう。
二重根号を外す問題1
(3) $\sqrt{10-2\sqrt{21}}$ (4) $\sqrt{6-2\sqrt{5}}$
プリントを次のリンクからダウンロードできます。
基本通りの問題だね。
最初に説明したように,足して4,掛けて3になる2数を考えよう。
1と3だと分かるから
\sqrt{4+2\sqrt{3}}=1+\sqrt{3}
\end{align*}
$\sqrt{1}+\sqrt{3}$ と書いたまま答えにする人がいるけど,公式丸暗記で当てはめるだけで解いている可能性が高い。理解せずに丸暗記で乗り越えることはできないよ。
間違った勉強法になっていないかチェックしておこう。
問題に戻ろう。
(2) $\sqrt{6+2\sqrt{5}}$
足して5,掛けて6になる2つの数を考えると2と3が条件を満たすから
\sqrt{5+2\sqrt{6}}=\sqrt{2}+\sqrt{3}
\end{align*}
(3) $\sqrt{10-2\sqrt{21}}$
(3)は符号に注意しよう。
足して10,掛けて21になる2つの数を考えると3と7が条件を満たす。元の数が正であることに注意して
\sqrt{10-2\sqrt{21}}=\sqrt{7}-\sqrt{3}
\end{align*}
(4) $\sqrt{6-2\sqrt{5}}$
(4)も同じようにして解こう。
足して6,掛けて5になる2つの数を考えると1と5が条件を満たす。元の数が正であることに注意して
\sqrt{6-2\sqrt{5}}=\sqrt{5}-1
\end{align*}
二重根号を外す問題2
(3) $\sqrt{11-\sqrt{72}}$
ここに挙げた問題は根号の前に2がないタイプだね。
ということは,根号の前に2をもってくれば良いんですね!
そういうこと。
\sqrt{5+\sqrt{24}}&=\sqrt{5+2\sqrt{6}} \\[4pt]
&=\sqrt{2}+\sqrt{3}
\end{align*}
どんどん練習しよう。
(2) $\sqrt{3-\sqrt{8}}$
引く順番に注意しよう。
\sqrt{3-\sqrt{8}}&=\sqrt{3-2\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\sqrt{2}-1
\end{align*}
(3) $\sqrt{11-\sqrt{72}}$
$\sqrt{72}=6\sqrt{2}$ と変形できるが,ここでは根号の前には2があると都合が良いため,$\sqrt{72}=2\sqrt{18}$ と変形しよう。
\sqrt{11-\sqrt{72}}&=\sqrt{11-2\sqrt{18}} \\[4pt]
&=\sqrt{9}-\sqrt{2} \\[4pt]
&=3-\sqrt{2}
\end{align*}
二重根号を外す問題3
(3) $\sqrt{12-8\sqrt{2}}$ (4) $\sqrt{9-4\sqrt{5}}$
(5) $\sqrt{9-6\sqrt{2}}$
ここで挙げた問題は根号の前にある数が2でないものだね。
2だけ残して根号の中に入れるんですか?
いいね!
\sqrt{9+4\sqrt{5}}&=\sqrt{9+2\sqrt{20}} \\[4pt]
&=\sqrt{4}+\sqrt{5} \\[4pt]
&=2+\sqrt{5}
\end{align*}
$\sqrt{4}$ を2に変形するのを忘れないようにしよう。
(2) $\sqrt{7+4\sqrt{3}}$
\sqrt{7+4\sqrt{3}}&=\sqrt{7+2\sqrt{12}} \\[4pt]
&=\sqrt{3}+\sqrt{4} \\[4pt]
&=\sqrt{3}+2
\end{align*}
根号の中身が引き算になっているから,符号に注意しよう。
(3) $\sqrt{12-8\sqrt{2}}$
\sqrt{12-8\sqrt{2}}&=\sqrt{12-2\sqrt{32}} \\[4pt]
&=\sqrt{8}-\sqrt{4} \\[4pt]
&=2\sqrt{2}-2
\end{align*}
(4) $\sqrt{9-4\sqrt{5}}$
続いて(4)を解こう。
\sqrt{9-4\sqrt{5}}&=\sqrt{9-2\sqrt{20}} \\[4pt]
&=\sqrt{5}-\sqrt{4} \\[4pt]
&=\sqrt{5}-2
\end{align*}
(5) $\sqrt{9-6\sqrt{2}}$
\sqrt{9-6\sqrt{2}}&=\sqrt{9-2\sqrt{18}} \\[4pt]
&=\sqrt{6}-\sqrt{3}
\end{align*}
二重根号を外す問題4
(3) $\sqrt{4+\sqrt{15}}$ (4) $\sqrt{8-\sqrt{15}}$
これも根号の前に2がない問題だね。
根号の前に2を出そうと思っても出せないですね。
このような問題では無理やり2を作ろう。
根号の中身を2倍して2で割ろう。
\sqrt{5-\sqrt{21}}&=\sqrt{\dfrac{10-2\sqrt{21}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{10-2\sqrt{21}}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{7}-\sqrt{3}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{14}-\sqrt{6}}{2}
\end{align*}
「こういう変形を思い付かないからセンスがない」などと凹まないようにしよう。
ほとんどの人は変形方法を習ってからできるようになってるだけだからね。
(2)以降も同じようにして二重根号を外そう。
(2) $\sqrt{2+\sqrt{3}}$
\sqrt{2+\sqrt{3}}&=\sqrt{\dfrac{4+2\sqrt{3}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{3}+1}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{6}+\sqrt{2}}{2}
\end{align*}
(3) $\sqrt{4+\sqrt{15}}$
\sqrt{4+\sqrt{15}}&=\sqrt{\dfrac{8+2\sqrt{15}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{5}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{6}+\sqrt{10}}{2}
\end{align*}
(4) $\sqrt{8-\sqrt{15}}$
\sqrt{8-\sqrt{15}}&=\sqrt{\dfrac{16-2\sqrt{15}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{15}-1}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{30}-\sqrt{2}}{2}
\end{align*}
二重根号を外す問題5
最後の2問を頑張ろう。
根号の前の数が2ではないため,無理やり2を作る。
\sqrt{7+3\sqrt{5}}&=\sqrt{7+\sqrt{45}} \\[4pt]
&=\sqrt{\dfrac{14+2\sqrt{45}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{9}+\sqrt{5}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{3+\sqrt{5}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{3\sqrt{2}+\sqrt{10}}{2}
\end{align*}
(2)は(1)と符号が違うだけだから引く順番に注意するだけだね。
\sqrt{7-3\sqrt{5}}&=\sqrt{7-\sqrt{45}} \\[4pt]
&=\sqrt{\dfrac{14-2\sqrt{45}}{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{9}-\sqrt{5}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{3-\sqrt{5}}{\sqrt{2}} \\[4pt]
&=\dfrac{3\sqrt{2}-\sqrt{10}}{2}
\end{align*}