前回は相加平均と相乗平均の不等式の証明をすることで,不等式の証明における考え方を伝えました。今日はもう少し慣れてもらいましょう!

今日扱う問題はこちら。
&(1)\ ab+1>a+b \\[4pt]
&(2)\ abc+2>a+b+c
\end{align*}

色々な問題集に載っているから見たことある人も多いと思う。とりあえず解いてみよう!
正であることの証明方法

(1)は $(左辺)-(右辺)>0$ を証明すれば良いんですよね!
~(左辺)-(右辺)&=(ab+1)-(a+b) \\[4pt]
&=ab-a-b+1 \\[4pt]
&=(a-1)(b-1)
\end{align*}
a-1<0~~かつ~~b-1<0
\end{align*}
よって,$(左辺)-(右辺)>0$ すなわち,$ab+1>a+b$ が成り立つ。

完璧だね。

これは簡単でした!
- 正の数の和や積で表す
- 正の数と負の数の積で,負の個数を偶数にする
- $(実数)^2+(正の数)$ の形を作る
式の形が似ていると感じるかどうかが重要

次は(2)だ。(2)の不等式を見て,なんとなく(1)と似ているなぁって感じるかどうかが重要だよ。

もし何も感じなかったらどうなるんですか?

今のは聞かなかったことにしよう・・・

さて,式が似ていると感じた場合は,左辺と右辺のどちらでも良いから,文字を置き換えたり,不等式の性質を利用することでどちらかの式を作ろう。
- $\,a<b\,$ ならば $\,a+c<b+c,~a-c<b-c$
- $\,a<b,~c>0\,$ ならば $\,\displaystyle ac<bc,~\frac{a}{c}<\frac{b}{c}$
- $\,a<b,~c<0\,$ ならば $\,\displaystyle ac>bc,~\frac{a}{c}>\frac{b}{c}$

じゃあ右辺を作りますね。(1)の不等式の両辺に $c$ を加えれば作れます!

そうだね。その方針で証明していこう!
&ab+1+c>a+b+c\ \cdots\cdots ①
\end{align*}

あとは $abc+2>ab+1+c$ を証明すれば終わりですね!

そうだね。その不等式をもう少し整理しておこう。
$abc+2>ab+1+c$ より,$abc+1>ab+c$

(1)の不等式と見比べると,$a$ が $ab$ に,$b$ が $c$ になってますね。

ただし,文字を置き換えるときは,不等式が成り立つ条件に注意しておこう。

はい,分かりました!
&ab\cdot c+1>ab+c \\[4pt]
&abc+2>ab+c+1\ \cdots\cdots ②
\end{align*}
abc+2>a+b+c
\end{align*}

完璧だね!次は左辺を作って証明することに挑戦しよう!

文字を置き換えても,左辺と同じ式になりません・・・

文字の置き換えなどの1回の操作で同じ式を作れない場合は,数回に分けて同じ式を作ることを考えよう!

とりあえず $b$ を $bc$ にすれば $ab$ を $abc$ にできますね。
よって,(1)の結果より,
&abc+1>a+bc
\end{align*}

この両辺に1を加えれば良いんですね!

そういうこと!

あとは $a+bc+1>a+b+c$ つまり $bc+1>b+c$ を証明すれば終わりですね!

そうだね。
&bc+1>b+c \\[4pt]
&a+bc+1>a+b+c\ \cdots\cdots ④
\end{align*}
abc+2>a+b+c
\end{align*}

意外と簡単ですね!

この調子でどんどん解ける問題を増やそう!
まとめ

不等式の証明問題で設問がいくつかあって,前の設問の不等式と似ているなぁと感じたら,うまく利用することを考えよう!