1998年センター試験 数学ⅡB 第1問 複素数平面の解説をします。
まだ問題を解いていない人は解いてから解説を読んでください。
1998年 センターⅡB 第1問 複素数平面 この問題では,複素数の偏角はすべて $0\Deg$ 以上 $360\Deg$ 未満とする。
$\alpha=2\sqrt2(1+i)$ とし,等式
(1) $z$ の中で絶対値が最大となるものは
(2) $z$ の中で偏角が最大となるものを $\beta$ とおくと,$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値は $\dfrac{\sqrt{\myBox{エ}}}{\myBox{オ}}$ で,偏角は $\myBox{カキ}\Deg$ である。また
$1\leqq n\leqq100$ の範囲で,$\beta^n$ が実数になる整数 $n$ は $\myBox{ツ}$ 個ある。
$\alpha=2\sqrt2(1+i)$ とし,等式
\begin{align*}
\abs{z-\alpha}=2
\end{align*}
を満たす複素数 $z$ を考える。\abs{z-\alpha}=2
\end{align*}
(1) $z$ の中で絶対値が最大となるものは
\begin{align*}
\myBox{ア}\sqrt{\myBox{イ}}\left(\myBox{ウ}+i\right)
\end{align*}
である。\myBox{ア}\sqrt{\myBox{イ}}\left(\myBox{ウ}+i\right)
\end{align*}
(2) $z$ の中で偏角が最大となるものを $\beta$ とおくと,$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値は $\dfrac{\sqrt{\myBox{エ}}}{\myBox{オ}}$ で,偏角は $\myBox{カキ}\Deg$ である。また
\begin{align*}
\beta=\dfrac{\myBox{ク}\sqrt{\myBox{ケ}}-\sqrt{\myBox{コ}}}{\myBox{サ}}
+\dfrac{\myBox{シ}\sqrt{\myBox{ス}}+\sqrt{\myBox{セ}}}{\myBox{ソ}}\,i
\end{align*}
である。さらに,$\beta$ の偏角は $\myBox{タチ}\Deg$ である。\beta=\dfrac{\myBox{ク}\sqrt{\myBox{ケ}}-\sqrt{\myBox{コ}}}{\myBox{サ}}
+\dfrac{\myBox{シ}\sqrt{\myBox{ス}}+\sqrt{\myBox{セ}}}{\myBox{ソ}}\,i
\end{align*}
$1\leqq n\leqq100$ の範囲で,$\beta^n$ が実数になる整数 $n$ は $\myBox{ツ}$ 個ある。
(1)の解答
ヒロ
絶対値が最大となる $z$ を求める問題。
【「絶対値が最大」の意味を考える】
$z,~\alpha$ が表す点をそれぞれ,Aとすると,
$\abs{z-\alpha}=2$ より,APの長さは2で一定であることが分かる。
$z$ の絶対値 $\abs{z}$ はOPの長さを表すから,3点O,A,Pがこの順に一直線上に並ぶとき,$\abs{z}$ が最大になることが分かる。
【ア~ウの解答】
$\abs{z}$ が最大になるのは,3点 $\mathrm{O}(0)$, $\mathrm{A}(\alpha)$, $\mathrm{P}(z)$ がこの順に一直線上に並ぶときである。したがって,$k$ を実数として $z=k\alpha$ と表せる。ここで
$\abs{z}$ が最大になるのは,3点 $\mathrm{O}(0)$, $\mathrm{A}(\alpha)$, $\mathrm{P}(z)$ がこの順に一直線上に並ぶときである。したがって,$k$ を実数として $z=k\alpha$ と表せる。ここで
\begin{align*}
\mathrm{OA}&=\abs{\alpha} \\[4pt]
&=2\sqrt{2}\abs{1+i}=4
\end{align*}
であることを考えると,\mathrm{OA}&=\abs{\alpha} \\[4pt]
&=2\sqrt{2}\abs{1+i}=4
\end{align*}
\begin{align*}
&k\abs{\alpha}=\mathrm{OA}+\mathrm{AP} \\[4pt]
&4k=4+2 \\[4pt]
&k=\dfrac{3}{2}
\end{align*}
よって,求める複素数 $z$ は&k\abs{\alpha}=\mathrm{OA}+\mathrm{AP} \\[4pt]
&4k=4+2 \\[4pt]
&k=\dfrac{3}{2}
\end{align*}
\begin{align*}
z&=\dfrac{3}{2}\Cdota2\sqrt{2}(1+i) \\[4pt]
&=3\sqrt{2}(1+i)
\end{align*}
z&=\dfrac{3}{2}\Cdota2\sqrt{2}(1+i) \\[4pt]
&=3\sqrt{2}(1+i)
\end{align*}
(2)の解答
(2) $z$ の中で偏角が最大となるものを $\beta$ とおくと,$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値は $\dfrac{\sqrt{\myBox{エ}}}{\myBox{オ}}$ で,偏角は $\myBox{カキ}\Deg$ である。また
\begin{align*}である。さらに,$\beta$ の偏角は $\myBox{タチ}\Deg$ である。
\beta=\dfrac{\myBox{ク}\sqrt{\myBox{ケ}}-\sqrt{\myBox{コ}}}{\myBox{サ}}
+\dfrac{\myBox{シ}\sqrt{\myBox{ス}}+\sqrt{\myBox{セ}}}{\myBox{ソ}}\,i
\end{align*}
$1\leqq n\leqq100$ の範囲で,$\beta^n$ が実数になる整数 $n$ は $\myBox{ツ}$ 個ある。
ヒロ
次は偏角が最大になるときの $z$ を求める問題。
【「偏角が最大」の意味を考える】
$\mathrm{P}(z)$ の偏角とは,実軸とOPのなす角のことである。
したがって,偏角が最大のとき,OPは点Aを中心とする半径2の円 $C$ に接する。
いま求めたいものは $\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値と偏角である。絶対値については $\abs{\beta}$ を求めればよい。つまりOPの長さを求めればよい。偏角は $\kaku{AOP}$ を表しているから,$\sankaku{OAP}$ に着目すればよいことが分かる。
【エ~キの解答】
$z$ の偏角が最大になるのは,OPが円 $C$ に接するときである。
$\sankaku{OAP}$ において,$\mathrm{OA}=4$, $\mathrm{AP}=2$ より,$\sankaku{OAP}$ は $1:2:\sqrt{3}$ の三角定規の三角形であることが分かるから,
$z$ の偏角が最大になるのは,OPが円 $C$ に接するときである。
$\sankaku{OAP}$ において,$\mathrm{OA}=4$, $\mathrm{AP}=2$ より,$\sankaku{OAP}$ は $1:2:\sqrt{3}$ の三角定規の三角形であることが分かるから,
\begin{align*}
\abs{\beta}=\mathrm{OP}=2\sqrt{3}
\end{align*}
よって,\abs{\beta}=\mathrm{OP}=2\sqrt{3}
\end{align*}
\begin{align*}
\dfrac{\beta}{\alpha}=\dfrac{2\sqrt{3}}{4}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}
\end{align*}
また,偏角は\dfrac{\beta}{\alpha}=\dfrac{2\sqrt{3}}{4}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}
\end{align*}
\begin{align*}
\arg\left(\dfrac{\beta}{\alpha}\right)&=\kaku{AOP} \\[4pt]
&=30\Deg
\end{align*}
\arg\left(\dfrac{\beta}{\alpha}\right)&=\kaku{AOP} \\[4pt]
&=30\Deg
\end{align*}
ヒロ
次は $\beta$ を求める問題。
ヒロ
$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値と偏角が分かっているから極形式を利用すれば良いね。
複素数の極形式複素数 $z$ の絶対値が $r~(>0)$ で,偏角が $\theta$ のとき
\begin{align*}
z=r(\cos\theta+i\sin\theta)
\end{align*}
と表される。z=r(\cos\theta+i\sin\theta)
\end{align*}
【ク~ソの解答】
$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値が$\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ で,偏角が $30\Deg$ であるから
$\dfrac{\beta}{\alpha}$ の絶対値が$\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ で,偏角が $30\Deg$ であるから
\begin{align*}
\dfrac{\beta}{\alpha}&=\dfrac{\sqrt{3}}{2}(\cos30\Deg+i\sin30\Deg) \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}+\dfrac{1}{2}i\right) \\[4pt]
&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}
\end{align*}
よって\dfrac{\beta}{\alpha}&=\dfrac{\sqrt{3}}{2}(\cos30\Deg+i\sin30\Deg) \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{3}}{2}\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}+\dfrac{1}{2}i\right) \\[4pt]
&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}
\end{align*}
\begin{align*}
\beta&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}\alpha \\[4pt]
&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}\Cdota2\sqrt{2}(1+i) \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\left\{3-\sqrt{3}+(3+\sqrt{3})i\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{3\sqrt{2}-\sqrt{6}}{2}+\dfrac{3\sqrt{2}+\sqrt{6}}{2}i
\end{align*}
\beta&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}\alpha \\[4pt]
&=\dfrac{3+\sqrt{3}i}{4}\Cdota2\sqrt{2}(1+i) \\[4pt]
&=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\left\{3-\sqrt{3}+(3+\sqrt{3})i\right\} \\[4pt]
&=\dfrac{3\sqrt{2}-\sqrt{6}}{2}+\dfrac{3\sqrt{2}+\sqrt{6}}{2}i
\end{align*}
ヒロ
次は $\beta$ の偏角を求めるボーナス問題。
【タチの解答】
$\arg(\alpha)=45\Deg$ であるから,
$\arg(\alpha)=45\Deg$ であるから,
\begin{align*}
\arg(\beta)&=45\Deg+\kaku{AOP} \\[4pt]
&=45\Deg+30\Deg=75\Deg
\end{align*}
\arg(\beta)&=45\Deg+\kaku{AOP} \\[4pt]
&=45\Deg+30\Deg=75\Deg
\end{align*}
ヒロ
最後は $\beta^n$ が実数になる整数 $n$ の個数を求める問題。
ヒロ
複素数の累乗が出てきてるので,ド・モアブルの定理を復習しておこう。
ド・モアブルの定理複素数 $z$ を極形式で表したとき,$z=r(\cos\theta+i\sin\theta)$ となるとすると,
\begin{align*}
z^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta)
\end{align*}
となる。z^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta)
\end{align*}
【複素数が実数になる条件を考える】
複素数 $z=r(\cos\theta+i\sin\theta)$ の $n$ 乗は,ド・モアブルの定理より,絶対値は $n$ 乗になり,偏角は $n$ 倍になる。
また,複素数が実数になるのは,偏角が $180\Deg$ の整数倍のときだから,$75n$ が180の倍数になる $n$ の個数を求めれば良いことが分かる。
【ツの解答】
$\arg(\beta)=75\Deg$ であるから,$\beta^n$ が実数になるのは,$75n$ が180の倍数になるときである。
$75=3\times5^2$, $180=2^2\times3^2\times5$ より,$n=2^2\times3\times(整数)$ のとき,条件を満たす。$1\leqq n\leqq100$ の範囲の12の倍数は8個であるから,求める整数 $n$ は8個ある。
$\arg(\beta)=75\Deg$ であるから,$\beta^n$ が実数になるのは,$75n$ が180の倍数になるときである。
$75=3\times5^2$, $180=2^2\times3^2\times5$ より,$n=2^2\times3\times(整数)$ のとき,条件を満たす。$1\leqq n\leqq100$ の範囲の12の倍数は8個であるから,求める整数 $n$ は8個ある。
1998年 センター数学ⅡB 複素数平面を解いた感想
ヒロ
「原点と円周上を動く点との距離が最大になるとき」と言われれば,中学生でも答えられるが,これが複素数平面の問題となると答えられなくなる人もいるのだろう。
ヒロ
分数で表された複素数の偏角が何を意味するのかをしっかり理解しておきたい。
ヒロ
複素数の累乗が問題に出てきたら,ド・モアブルの定理の利用を考えるようにしよう。